さて、昨日の続きだけれど、 ウイーン郊外のホイリゲでウエートレスのおねえさんに勧められるまま、ホイリゲを注文してみた。
赤ワインよりはやや色目の薄いホイリゲワインが、持ち手のついたビールジョッキのような大きなグラスで運ばれてきた。
グラスのふちまで惜しげもなくなみなみと注がれていて、木のテーブルに置かれるとき、ちゃぷちゃぷと溢れてこぼれた。
おおお~と思わず歓声を上げてしまった私達。
何と気前の良いこと、さすが本場だ。
それを、ぶどう棚に囲まれた中庭のテーブルでいただいた。
甘くて美味しい
夫は瞬く間に飲み干し、2杯目は普通のワインを注文していた。
酒好きには甘みが邪魔だったのかもしれない。
気持ちよく晴れた日の午後の3時頃、観光客は私達しかいない。
見廻すと、現地の人らしき初老の男たちが数人、若いカップルが一組。
ウエートレスのおねえさんも手持ち無沙汰だ。
そこへ、買い物袋を提げた白髪の老婦人が現れた。
おばあさんと呼んでも良いだろう。
おねえさんとも男たちとも顔見知りらしく、二言三言会話をしている。
そして、ゆっくりと一人で木陰の席に着いた。
おばあさんの両足にはサポーター、リユウマチか神経痛を患っているのだろうか。
その足で歩いてくるのだから、きっと住まいは近くなのだろう。
気持ちの良い昼下がり、一杯のワインをぶどう棚の下で楽しむおばあさん。
花柄のワンピースにカーディガン、手には買い物袋、頑丈な踵の低い古びた靴。
ああ、ヨーロッパだなーと思う。
やがて、ワインを飲み干したおばあさんは、おねえさんや男達に声をかけ、ゆっくりとした足取りで帰っていった。
家に着いたら、きっとお昼寝タイムだろう。
私が唯一美味しいと思ったワイン、ホイリゲ。
その味を、今もうはっきり思い出すことはできない。
だから、私のぶどうジュース割りワインが、同じような味かどうかは自信がないけれど、少しは思い出させる味なのではないかしら。
ああ、もう一度行きたくなってしまったなぁ。