岸本葉子さんの「幸せな朝寝坊」というエッセイ集を読んでいたら、もうそろそろ終わりという頃にワインの話題が出てきた。
岸本さんはもともとお酒が飲めない人なのに、32歳のお誕生日に仕事上お付き合いのある人から、なぜかワインをプレゼントされた。
それは、スペインのサングレ・デ・トロというワイン。
岸本さんは、飲みかけのワインを、ボトルの口にラップを巻いて輪ゴでとめるという荒業で保存しながら、数週間かけて飲んだ。
すると、あるとき、思いがけないことに気がついた。
目覚めがいい、朝が寒くない、手足に冷えを感じない、どうもそんな気がする。
それを読んで、私の目がキラランと光った。
私は長年冷え性に悩んでいる。
最近はいろいろ努力の甲斐あって、だいぶ改善されてきてはいるけれど、夏でも素足でいられない。
飛行機嫌いの理由の一つは、足の冷えが辛いからだ。
そこで、そのワインに俄然興味がわいたというわけ。
サングレ・デ・トロとはスペイン語で「牡牛の血」という意味だとか。
スペイン牛追い祭りだったろうか、男達を振り切りながら町中を奔り回る牡牛の群れが目に浮かぶ。
一口飲んだら、活力が漲り、血が身体の中をぎゅんぎゅん駆け巡りそうではないか。
とはいっても、そのワインを飲んだからと言って、冷え症が治るはずがないのはわかっている。
でも、一日グラス1杯のワインが健康によいということはよく言われているし、どうせ飲むなら、誰かが何か良かったよ~というのものを飲んでみたいというものだ。
そういうわけで、翌日早速近くの大型スーパーで探してみた。
あったあった、スペインワインのコーナーにほんとうにあった。
案外一般的なワインらしい。
ポリフェノールを期待して、迷わず赤を買う。
マグロのお刺身も忘れない。
その夜、夫のお気に入りチリワイン、カベルネ・ソーヴィニヨンではなくて、このサングレ・デ・トロを飲んでみた。
お味は、夫によると、「よく言えばまろやか、悪く言えばピリッとしないけど、まあまあかな」というから、女性に向いているのかも知れない。
私はといえば、実はワインの味はわからない。
ただただ渋い。
だから、ワインは夫の好みで選ぶ。
ということは、このワイン、飲み終わったら次はなさそうだ。
でも、いいの、こういう些細なことが結構楽しいのよ。