藤袴の花
今日は秋の七草の一つ「フジバカマ(藤袴)」をご紹介します。
「フジバカマ(藤袴)」はキク科ヒヨドリバナ属の多年生植物で、原産地は中国といわれています。
日本には、奈良時代に香料として唐から渡来し、その後、野生化したようです。
・畑に咲いている藤袴の花です。
藤袴は10月~11月にかけて小さなピンク色の花をたくさん咲かせます。
名前の由来は、花の色が藤色で、花弁の形が袴に似ているところからつけられたといわれています。
・蕾は濃い赤紫で、花が開くと薄いピンクになります。
藤袴は、生木には香りはありませんが、刈り取った茎葉を半乾きの状態にすると、桜餅のような甘い香りがします。
これはクマリン、クマリン酸、チモハイドキノンによるもので、中国では花の一枝を女の子の簪(かんざし)にしたり、香り袋として身につけていたようです。
日本でも、平安時代の女性はこれを干した茎や葉っぱを洗髪に利用したり、香り袋に入れて十二単にしのばせたりしたそうです。
・フジバカマの葉は3分裂するのが特徴となっていますが、全ての葉がそうとは限りません。
「薬草としての藤袴」
蕾をつけた藤袴を採取し、2~3日干して乾燥させたものが生薬名の蘭草(らんそう)と言われています。
それを煎じたものを、1日数回お茶代わりに飲むと糖尿病の予防に有効といわれています。
また、適量の蘭草(らんそう)を布袋に入れて、鍋などで煮出してから風呂に入れて入浴すれば、入浴剤として保温、肩こり、神経痛に有効といわれ、皮膚のかゆみがあれば布袋でこすると効果があるそうです。
「藤袴」を詠った歌を3種ご紹介します。
・ 「萩の花 尾花 葛花 なでしこの花 女郎花 また藤袴 朝貌の花」 山上憶良 (万葉集・巻八 1538)
この歌は、「秋の七草」の由来になったといわれている有名な 歌です。
・「やどりせし 人のかたみか 藤袴 わすられがたき 香ににほひつつ」 紀貫之 (古今集)
(家に泊まって行った人の残した形見か、藤袴。忘れがたいと香りを残して)
・「なに人か きてぬぎかけし 藤袴 くる秋ごとに 野べをにほはす」 藤原敏行 (古今集)
(着ていた服を脱いで掛けたのは誰? 秋が来るたびに野辺に良い香りを漂わせて)