大阪弁に「いちびる」と言う言葉があります。
「いちびり」とは、ふざけまわる人、お調子者、出しゃばりといった意味の大阪弁で、使用例としては、調子にのって、わいわい騒いでいる人に対して、「あいつ、えらいいちびりやな」と、ちょっとヒンシュク気味に言うときなどによく使う言葉です。
先日、東京女子大学の篠崎教授が解説した「いちびる」についての記事が某新聞に載っていました。
それによると、
『大阪を中心に関西で広く、調子に乗ってはしゃぐことを「いちびる」と言い、そのように図に乗る輩は「いちびり」と呼ばれます。
語源説はいくつかありますが、「いち+ぶる」の変形と考えるのが妥当と思われる。
「ぶる」は共通語では、「学者ぶる、偉ぶる」のように接尾語として使われるが、江戸時代後期の新撰大阪詞大全(しんせんおおさかことばたいぜん)に「ぶるとは、かしこぶること」とあるように、大阪では、「ぶる」単独の用法があった。
「いち早く」などと同じ強調の「いち」を添えた「いちびる」も、大阪生まれの上田秋成が使っている。
と篠崎教授は解説されていました。
一方で、地元で言われている「いちびる」の語源説は、「一振(いちぶ)る」の転訛で、語源は浪速の魚市場だった雑喉場(ざこば)で行われていたセリ市からと言われ、次のように説明しています。
『守貞漫稿(もりさだまんこう:江戸時代後期の一種の百科事典)』に、「大坂の雑喉場(ざこば)問屋へ漁村より贈る。問屋にては、一夫台上に立ち、魚籃(ぎょらん:魚を入れるかご)一つ宛を捧げ、さあなんぼなんぼと云ふ。(中略)此時、大坂市中魚賈(うおがい)群集し、欲するところの価を云ひ、其中貴価なる者に売与す。これを、市を振ると云ふ」とあり、セリ市でやかましく騒ぎ立てることから「いちびる」という言葉が生まれたことがわかる。
と解説しています。
この「いちびる」は、元来は、お調子もんを揶揄する時などに使う、ネガティブな意味合いの言葉ですが、逆に、味がある、面白い人間をさして、「あの人は、なかなかのいちびりや」といった一種の称賛として使うこともあるようです。
例えば、金儲けにもならないのに、何か奇特なことをしている人とか、趣味が高じてその道の達人になった人とか、人の目なんか気にしない、ある種の高みに達している人たちに対して、尊称みたいな意味合いで使われることもあるということです。
今日は大阪言葉をご紹介しました。