私は、本を読むのが遅い。
読むスピードも遅いし、何度読んでも内容が理解できないことも多い。
本が結構好きな割に、学生時代「国語」の成績が悪かったトラウマからか、未だ「国語力」に対するコンプレックスから抜けきれず、自分の読解力に自信がない。すんなり理解できないから、同じ文章を何度も読み返すし、少しでも読みやすくするために気になる文章には黄色のマーカーでハイライトするのが癖だ。
平野啓一郎著「本の読み方~スローリーディングの実践」。
「私の本を読むペースはかなり遅い。」
ほんと?作家先生でも?
「知り合いの作家達に尋ねてみると、意外にも『自分も本を読むのは遅い』と言う人がほとんどだった。高橋源一郎さんなどは、今でも本を読むときには、きちんと机について、赤線を引きながら読むとのことである。」
へ~ そうなんですか?
本をナリワイとする方々でも、そんなもんなんですね。少し安心しました。
「魅力的な『誤読』のすすめ」
え~?誤読でいいんですか??
「文化というのは、伝播過程の『誤読力』によって豊かになる」
なるほど。『誤読』という理解の幅の部分が本の可能性を広げるってわけですね。
「速読家の知識は、単なる脂肪である。それは何の役にも立たず無駄に頭の回転を鈍くしているだけの贅肉である。」
うまいこと言いますね~
「言葉というものは、地球規模の非常に大きな知の球体であり、そのほんの小さな一点に光を当てたものが一冊の本という存在ではないかと思う。一つの作品を支えているのは、それまでの文学や哲学、宗教、歴史などの膨大な言葉の積み重ねである。」
さすが!芥川賞作家!
本の後半では、古今の名作を題材に実践的な読書のテクニックを紹介している。
こころ |
①夏目漱石『こころ』、②森 鴎外『高瀬舟』、③カフカ『橋』、④三島由紀夫『金閣寺』、⑤川端康成『伊豆の踊り子』、⑥金原ひとみ『蛇にピアス』、⑦平野啓一郎『葬送』、⑧フーコー『性の歴史Ⅰ 知への意志』。全8作品。
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「本の読み方」の指南本ではあるけれど、8人の作家への愛すら感じる、実は、作家による究極の読書感想文だと思いました。