最近、まったくのデザインで打ちのめされていた場であります。
竹中大工道具館という博物館の存在は、よく訪れる関西圏、中国地方訪問で
いつもトップランクで見たい存在だったのですが、
なにせ、神戸のど真ん中に位置していて、
「今度時間にゆとりがあるときに・・・」にずっとなってしまっていて、
こういう存在とはなかなか邂逅することがないのですね。
でも今回は、海の京町家、伊根の舟屋群ですっかり時間を食ってしまって、
大急ぎで神戸空港付近に帰ってきたら、少し1時間くらいは時間があった。
こういう「ちょっとした時間」というのが、便利な場所にある施設には重要。
で、落ち合ったスタッフといっしょに見学して来た次第。
ま、いろいろな気付きが得られて勉強になった。
竹中工務店さんは、初期の設計主幹のような存在の藤井厚二氏の私邸
「聴竹居」が有名ですが、東大の研究者と古木造建築の構造研究にあたるなど、
木造の研究では屈指のパトロン企業のようです。
この展示施設でも法隆寺宮大工の棟梁・西岡常一さんや小川三夫さんなどの
事跡の展示がメインで展示されるなどしていました。
会場には多くの建築工学部系の学生さんたちとおぼしき団体来場者も多かった。
という展示の一角に、茶室の展示があったのですが、
それがなんと、骨組み素地。構造がそのまま仕上がりという展示があったのです。
「う〜む」。一本、完全に取られた感。
なんとか受け身は取ったつもりでしたが、こういうツボをわきまえている、
伝統木造構法の世界の奥行きを完膚なきまでに知らされた。
たしかに「竹小舞」などを見ていたら、それですでに仕上げだと
そう感覚させられる世界がありますね。
それを拡大させていけば、たしかに骨組みだけの美観は、圧倒的な迫力。
よく木造住宅の建て主でとくに男性は、構造が出来上がった段階で
極上の満足感に浸ってしまって、「もうこれでいいから・・・」と
口走る人もいるとされます(笑)。
それを奥さんが必死に押さえて「あんたなに言ってるのよ」と諭す(笑)。
こういう「良くあるパターン」のそのまんま、なのであります。
この茶室構造は当然,室内に展示されているので、
「雨露をしのぐ」必要が無いことで、このような美観が実現した。
わたしはブロックで家を建てた人間ですが、
さりとてこういう美観がきらいでは全くないし、またブロック素地の壁を
そのまま愛している人間でもあるので、こういうのには親近感がハンパない。
しかしこの空間にしばしたむろしながら、
高断熱高気密で進化した北海道の住宅建築は、このような展示をするとして、
いったいどんな「デザイン的仕掛け」が可能なのか、
竹中に対抗して、たとえば清水建設さんあたりをターゲットにして
「高断熱高気密技術館」というようなものを構想したいと、
個人的な妄想世界に浸っておりました・・・。