日本中に、って、大げさか。でも北日本全域
あちこちと住宅取材にカメラマンと行っています。
新築や、リフォームして立派になった家を取材することが多い。
当然ですね。
ところが、そんなツアーの中で、ときどき道ばたの建物に
妙に惹かれることがあります。
写真は、北海道十勝地方を取材していたときに、
ふと道端に発見した廃屋。
わたしのような年代の人間は、
北海道開拓期に入植した、自分たちの直接のルーツに、
父や、おじいさんたちの世代の生き様に、興味を深く抱くようになります。
彼らの日々の暮らしよう、息づかい
苦しみ、悩み、絶望、希望、よろこび
そんな感情を伴った、生活が立ちのぼって感じられるような契機として
こんな廃屋に、強く惹かれる部分があるのです。
外観は、平屋と2階建てが組み合わさっています。
しかも右側は洋風、左手の平屋は和風と、仕分けられていて
デザインのまとまりはとてもステキ。
内部も、和風の部分に残された建具など、たいへん立派で
もったいないと思えたほどの、渋く重厚なしつらい。
生活を感じる洋風部分は、開放的な窓面積の大きさが特徴的。
そして、台所に入って、
ここでの暮らしに別れを告げた様子が手に取るように感じられました。
耐えられないほどに寒かった、のだと。
デザインもほどよく、きっと愛着もあったのだろうけれど
やむなく家をうち捨てざるを得なかったのか。 単に壊すのも面倒だったのか、
あるいは離農の結果なのか。
さまざまな想像が沸き起こってきます。
まだ、こうした、時間を追体験できるような建物が残っているうちに
先人たちのくらしように思いを巡らせるのも、
けっして、無駄ばかりではないと、思います。