三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

【海外旅客「民泊」ビジネスを掘り起こす黒船企業】

2017年05月31日 07時39分23秒 | Weblog
日経ビジネス2017年5月29日号のWEBでのアナウンスで、
「「黒船」の融和路線で普及加速か〜最大手・米エクスペディアが民泊に参入」
という記事が目に飛び込んできた。
最近、不確かな情報だけれど、東京ー大阪間で古民家が物色されているとのこと。
そういう古民家改修の仕事がビジネスになり得るのではないか、
といった情報がまことしやかにささやかれはじめていた。
そんな折からの記事だったので注目してみた。

「旅行サイトの世界最大手エクスペディアが日本の民泊市場に本格参入する。
米エアビーアンドビーなどの浸透で市場は拡大するが、
既存業界とのあつれきも大きい。「民泊新法」の今国会での成立も見据え、
地方活性化などで新たな需要開拓を目指す。」というリード文。
「オーナーが自宅や別荘を使用しない期間、第三者へ貸し出す
「バケーションレンタル」の専門サイトを運営。物件は一軒丸ごと
貸し出すのが特徴で、観光地・リゾート地の別荘などを多く抱える。」
というようなビジネス形態とされている。
「米国では平均予約単価・利用日数はA社は584ドル(約6万4800円)・4日間
ほかの対抗企業B社では1032ドル(約11万4500円)・6日間。」
いま話題の「岩盤規制打破」の政治主導の一環として、
政府は3月、民泊の透明性を高めるため、営業日数など一定の規制を
導入したうえで全国で民泊を解禁する「民泊新法」を閣議決定、
今国会で成立を目指す、とされている。
岩盤規制されている宿泊業界に対して、融和的な姿勢で迫りたいと
海外企業は浸透を図っていく考えだと、記事では触れられている。
岩盤的に規制してきたことには一定の意味合いはあってのことでしょうが、
それを頑迷に守り通して日本経済の将来性を担保できるわけもない。

いま札幌市内では旺盛な海外旅客需要で
日本人旅客の宿泊がままならない現実も発生している。
政府は、つい1−2年前には2000万人がどうこうと言っていた海外旅客を
4000万人まで倍増させる計画を推進してきている。
東京オリンピックという機会も呼び込んできた経緯に踏まえて、
さらに経済振興策として、この「民泊」ビジネスも視野にして動いてきている。
単純に4,000万人の旅客がどれだけのお金を落とすのか、
そしてそれがどんなビジネスに対して受益していくのか、
国内需要としては確実な縮小の未来しか描けない住宅事業者にとって
こういった民泊需要はどんなビジネスとして生み出されていくのか、
注意深くウォッチして行く必要があると思っています。
当社の住宅事業顧客先でも、パンフレット英語版を作るところが散見されてきた。
「まだ」はもう、という格言もあります。対応は不可欠でしょう。
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【美しいつがいのカモさんたち in 札幌】

2017年05月30日 05時59分28秒 | Weblog
毎朝の散歩路、北海道札幌でも夏が近づいてきて
いろいろな小動物たちとの遭遇が増えてきます。
エゾリスたちは毎日必ず顔を見せてくれるのですが、
きのうは、池の近くを歩いているわたしと平行して、この2羽の雌雄が
いっしょに散歩してくれました(笑)。

自然界ではいまが繁殖期と言うことなのか、
右奥のオスの羽毛の色合いは、驚かされるほどの鮮やかさ。
また、手前のメスの羽毛もすばらしく魅力的な深い色合い。
まことにその美しさは神々しいばかりであります。
で、ちょっと気になった。かれらカモたちはいったいどんな世界を「見て」いるのか?
インターネットで検索すると、こんな情報。
〜網膜の視細胞は人間で10,000個/m2ですがキセキレイでは120,000個/m2と
大きな差があり、脳に視覚情報を送る神経節細胞数で見ても
人間で1,000,000個、カラスで3,600,000個、カエルで約5,000個と
鳥類の視覚情報の多さは際だっています。
 一方、鳥類は、昆虫を除くと、通常は種子や木の実、穀物等を餌にしており、
植物の葉や芽などはあまり餌にしていません。つまり綠の森の中で多く生息している
にも関わらず、綠色の餌で生きているのでは無いのです
(哺乳類と異なり、通常は草食性ではない)。従って、綠色と他の色の区別ができる
多彩な色彩能力を持たないと餌を見つけられない事になります。〜
http://www2.tbb.t-com.ne.jp/mark/torime.html

っていうことなので、こうした鮮やかな色彩情報について
多様で奥行きの深い視認情報を得ているということなのでしょう。
繁殖期におけるこうした色彩変化は、かれらカモたちが現代まで生き延びてきた
根源に関わっているような、相当の情報発信なのだろうと思います。
カモの雌たちにとって、オスのこうした羽毛の色彩は
いのちの根源に深く根ざした刺激的情報に違いないのでしょうね。
でも人間ではメスの方が色彩的であり、
オスの方は、どっちかというと抑え気味の色彩感覚になっている。
自然が見せてくれるなにげない情報に、いのちの不可思議を感じていました。
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【首都圏探訪 竹原義二/プラネットジャパン社屋-1】

2017年05月29日 08時23分10秒 | Weblog


先般の長野出張の時に、
「プラネットジャパンは、あなたの健康と地球環境を守る
自然素材でつくった塗料・壁材をお届けします。」というキャッチフレーズの
プラネットジャパンさんの関東支社のお披露目に行ってきました。
一度訪問しているスタッフから事前に仕入れていた情報で、
どうも密集住宅街のなかで、事務所併設で社員さんの社宅的なスペースもある、
ちょっと複合的な建物だということでしたので、
住宅雑誌編集者として、面白さも感じておりました。
で、建物の近くのホテルから朝6時ころに散歩運動を兼ねて、
事前に「下見」に。なんですが、発見までにはあれこれ1時間以上掛かった(笑)。
なかなか首都圏での取材、ここらへんからしてきびしいものがある。

旗竿地でした。
北海道でも東北でも、旗竿地という敷地条件の建物は
そんなに取材することがない。
寒冷地では基本的に、その立地について方位とか、気温の条件、
さらに眺望条件などが基本的な情報になりますが、
やはり首都圏の場合、人為社会的条件が与条件として大きい。
ここでは導入部が否応なく決定されることからスタートする。
このあたり、北海道感覚とのいきなりの違いに戸惑いを感じる。
そういった敷地条件とどのように対話して
建てる人の希望条件を叶えていくのか、計画についての部分が大きくなる。
そんな目で見て、写真のような中庭や導入部分の作られように
人間的な肌ざわりを感じていました。
この建物は2つの要件を満たすために大きくスパンが2分割されている。
入り口手前側に事務所部分が自然に配置され、奥まって社宅部分。
その中間に印象的な植え込みがされている。
わが家でも植えていた樹種で名前を思い出せないけれど、好きな木。
枝振りもセンスのいい表情を見せてくれている。
敷地条件のなかでも可能な限り日射条件に配慮したであろう位置。
そういった配慮が5月はじめ、午前10時前後の条件の中で
たっぷりと陽射しが降り注いでいてさわやかさを与えてくれている。
また旗竿地の導入部分の床面にはわが家の地面と同様なレンガタイルの敷き込み。

残念ながら、設計者の竹原さんとは時間が合わずに話せなかったのですが、
事務所兼用だったわが家の最初の頃の様子と似ている感じ。
「空気感」を大切に考えられている様子が伝わってきました。
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【雨上がりの散歩路の叙景 in さっぽろ】

2017年05月28日 07時55分02秒 | Weblog


きのうは札幌地方は断続的に強い雨が降り続き、
1日中、外出もする気にならない久しぶりの「安息日」。
一昨日は、やや体調が優れなかったこともあって、完全休養日でした。
雨の日って言うのは、こういう効用もありますね。
人間にはいろいろなストレスが絶え間ないけれど、
雨の日であれば、強制的にすべての活動を抑えざるを得なくなる。
身の回りのこととか、家のメンテナンスのこととか、
そういったことに目をむけるというのは、リラックスさせてくれる。
そういえば、カラスの糞が居間のフィックスのガラス窓に付着していたので、
雨の合間を付いて脚立を引っ張り出して、ブラシで洗浄した。
ついでに数カ所の窓も洗浄掃除をしてみた。
家をメンテナンスするのは、精神衛生上もいい効果がある。
気分の整理整頓がついて、前向きになれるのだと思います。

けさは、まだ雲の多い天気ながら、
ようやく雨はあがって、気持ちのいい散歩が楽しめました。
この時期、札幌はライラックが満開の時期を迎える。
本州地区ではアジサイがそろそろという時期なのでしょうが、
ちょうど季節的には対照するような感じがいたします。
雨上がりにはその美しさにさらにきらめきが加わるように思われます。
なにげない日常の光景に、雨が情感をさらに引き立ててくれる。
句読点には大きな意味がある、そんな気がしておりました。
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【Facebookから不思議な励ましのお便り(笑)】

2017年05月27日 09時41分20秒 | Weblog
先日なにげにiPhoneをチェックしたら、
Facebookからご覧のようなメッセージが届いておりました。
わたしはブログはもう十数年書き続けています。
2005年の愛知万博・愛地球博を息子と見に行って、その様子を書き始めた。
ですから今年で12年目になります。
で、その後、確か4年前にFacebookにもそのブログを連携させるようにした。
それ以来の「いいね」がこの数字までなったと言うことなのかも知れません。
知れません、って、この数字が正しいのかどうか,検証のしようもないからです。
でもまぁ、一応ITが専門の企業とされていますから、
こういったデータには根拠があるのだろうと思われます。
丸4年近いのは事実のようなので、年あたりに換算すると、1日あたり平均
50-60くらいの「いいね」をいただいている計算。
この数字がどうであるのかは、わたしにはわかりませんが、
いいね、してくれたみなさんには深く感謝申し上げる次第です。
でもなぜと疑問なのは、どうして84,000という数字が特異点的に
このようにメッセージされてくるのがイマイチ不明なのです(笑)。
ふつうこういったメモリアルといえば、キリのいい50,000とか、
100,000というのが知らせてくるタイミングではないのかと、
ひとりでFacebookに突っ込みたくなったけれど、
どこにしていいのか、わからないので、こうして書いてみている次第。
欧米の企業なので、わたしたちとは数字に対してのメンタリティに違いがあるのか。

っていうことではありますが、
まぁひとつの通過ポイントとしてFacebookからは認証されたと勝手に理解して
ひとつの励みとして今後も情報拡散には務めていきたいと思います。
こういう情報拡散を毎日心がけていると、
確実にコミュニケーションの実像と結びついてくる実感があります。
実際、直接にはそう面識のない方でも、
このブログを読んでいただいているとお話しいただくことが多い。
わたしは住宅のメディア人なので、そういう意味ではこの業界での
情報の往来交差点的な位置にはいるのだと思います。
有為な情報提供を今後とも心がけていきたいと思います。
そういう意味では個人的な歴史ネタなど、迷惑な部分もあるかも知れませんが(笑)
ときどきは力の抜けたテーマもそれなりに有意義ではないかと。
今後とも、ご覧いただければ幸いです。
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【現生人類だけの能力 抽象⇒想像=創造】

2017年05月26日 07時26分46秒 | Weblog

ラスコー展の図録2500円なりの本を見続けています。
まさにいまは「座右の銘」であります(笑)。
生きているうちにこういった知的興奮を経験できて、非常にうれしい。
インスピレーション基底の部分で、非常に強力なものを受け止めているのですね。

で、いちばん感じていることは、
この壁画群は「絵画のはじまり」「芸術の爆発」とされていること。
現生人類の特殊性をそこに見る思いがすることです。
わたしたち現代人に連なってくる祖先には、
この壁画で示されるように「ものごとを抽象する能力」が20,000年前から発現している。
いま現在の文明からすれば、絵画を描くということはごく自然だと受け止められるけれど、
考えてみれば、ほかの動物たちやホモサピエンス以外の他の旧人類からは、
こういった能力についての痕跡は認められないとされる。
自分たちが見て、心を揺さぶられ興奮することがら、
かれらクロマニョン人にとっては、狩猟の対象である動物への深く強いこだわりが、
このような洞窟絵画創造という営為に至らせた。
対象への強い思いはそれらを抽象する思考を生み出した。
その動機はまだ不明だけれど、絵画という手段で内的な想像の世界を、
創造力を働かせて、表現するという営為に大変な労力を注ぎ込んでいった。
わざわざ、普段の生活では使わない洞窟深部まで入り込んでいって、
貴重な動物油分を抽出しそれを移動可能な容器に入れた光源ランプを創造し、
高所作業での安定性を確保するために、ハシゴも創造して、
さらに絵画表現のためだけとしか思われない彩色顔料を鉱物資源から探索し、
それを加工して絵の具として利用している。
生きる基本生活とは無縁と思われる、こうした全プロセスを、
非常な努力・営為で創造し、活用して、想像力の産物である絵画を生み出した。
こういった抽象⇒想像力=創造力の全営為に深く打たれているのです。
すでに20,000年の昔にわたしたちのDNAはこういったことに命をかけていた。

わたしたちホモサピエンスは地球上の全大陸に拡散したのですが、
こういう動物種はきわめて珍しいのだそうです。
そのグレートジャーニーというエリア拡散にあたっては、わたしたち日本人にも直接繋がる
先祖たちが「航海」という、これまた不思議な営為を創造したとされる。
クロマニョンの人々が、絵画表現という創造を見せていた同時代に
海をわたっての未知なる世界への移動を想像し、
そのための方法を創造して航海という人類的知財を実現させた祖先たちがいた。
こういう想像力、未知なることへの強い興味というものに、
クラクラするようなフロンティアパワーを感じています。
まさに奇跡を生み出し続けるのは、人類の抽象⇒想像力=創造力だと。
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【古民家のいごこち、あるがままの素材利用】

2017年05月25日 07時45分29秒 | Weblog


先日のラスコー展、その余韻はしばらくは知的興奮として、
ながくカラダに刻み込まれて沈殿していくのでしょう。
そういうプロセスもまた、「肉体化」のプロセスとして楽しんでいきたいと思います。
クロマニョンの人々のことをインスピレーションのレベルで受け止めることで、
人間の居住環境を考えるということに
大きな気付きが得られ、ひとつの判断基準ができると思うのです。
ラスコー展を見終わった後、展覧会の展示をダイジェストした
図録を買い求め、いまも繰り返し反芻しながら読み続けています。

そんな余韻のなかで、会場の東北歴史博物館に併設されている
「今野家住宅」を久しぶりに再訪しておりました。
この建物は石巻市北上町、多くの子どもたちが東日本大震災の時に
津浪被害で命を失った大川小学校の近くに建っていた。
母屋は1769年の創建ということなので、築210年ほどの古民家。
宮城県の有形文化財に指定され、この地に移築されたもの。
万年単位の考古のクロマニョンと比べたら、
その建てように示される息づかいはわれわれ現代人として理解しやすい。
ムラの「肝煎り」を務めていたということですから、
自治的行政の中心的存在であった家です。
仙台藩は、表高は62万石とされていますが、どう考えても過小認定。
江戸市中で消費された米は、ほぼ仙台潘からの移入に頼っていたとされる。
貞山堀などに見られる活発な荷の移動交通手段確保の様子など、
伊達藩というのは江戸の中央権力と深く結びついて
江戸期を通じてかなり安定的な農業経営を営んでいたと推定されます。
他地域では頻繁にこうした「肝煎り」や庄屋などの階層が
打ち壊しなどの被害に遭っていますが、
伊達藩領では、そう多くはなかったとされている。
そんな住宅ですが、建坪が72坪という大型建築。写真は土間の様子。
目に飛び込んでくるのは曲がりの柱を上手に組み合わせた壁造作。
ユーモラスなお面が装飾されていて、面白い。



調理のスペースの床には、水仕舞いも考えて竹が敷き込まれていて、
曲がりの柱といい、それぞれサイズにムラのある材をあるがままに生かして
自然に添って建築を考えている様子がうかがえて、まことになごむ。
構造から仕上げまで融通無碍に、材のあるがままを活かして使う姿勢。
どうもこういうことが、いごこちというものに大きく関係しているのではないか、
いつも古民家を見ていて、気付かされることです。
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【家を建てたくなる人間心理】

2017年05月24日 07時48分17秒 | Weblog
写真は、昨年神戸の「里山住宅博」を見学していたときの光景です。
わたしがこの住宅のビルダーさんと話していたときに、
入ってきたご家族の小学校低学年くらいの娘さんが、
ごらんのようなパフォーマンスを見せてくれました。
「わー、ステキなお家」っていうような歓声が聞こえてくるようです。
「里山住宅博」というほどですから、
周辺は緑に恵まれた環境のなかにある。
阪神ゾーンの住宅地ではたぶん、望めないような光景がそこに広がっていて、
そのよろこびを率直に表現された娘さんのまっすぐさに、
思わず微笑まさせられた次第。

家を考えるようになるって言うのは、
やっぱり最大の起動力は、家族のシアワセを願ってのことでしょう。
現代生活で家は、家族のシアワセを担保する最大のよりどころ。
子どもたちがそこで安心して暮らしていけることが、
家を建てたいと思う心の核心に存在する。
わたしたち家づくりに関わっているすべての人間は、このことを
いつも顧みる必要があると思います。
考えられる困難を専門者として可能な限りに除去し、
安全を保証し、よろこびの最大化を常に念頭に置いておきたい。

ここのところ、人類史全体を基本に置いて考える思考に近づいてきた。
本を読んだり、クロマニョン人の絵画にふれたり想起することが多いのですが、
現生人類7万年のあいだ、変わらずにこういった子育てがあり、
親として未来を育てて、夢見続けてきたのでしょう。
家ができることをさらに深く考えたいと思わされたパフォーマンスでした。
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【無落雪の日射遮蔽 軒の出&バルコニー】

2017年05月23日 07時34分24秒 | Weblog


「最小限オフグリッド」の住宅についての詳細情報です。
櫻井百子さんは、北海道の女性建築家としてたいへん頑張っています。
たいへんやさしそうな印象とは裏腹に、表現方法はなかなかにダイナミック。
北海道の建築家として、まっとうな寒地住宅技術に取り組んでいる。
今回の住宅でも、素器としての環境的性能で、
だれもがいま、考えるべきテーマとしての課題に回答を探っている。
断熱をより強化していって、次のテーマになってくる日射コントロールに対して
長い軒の出や、2階バルコニーなどの手法で取り組んでいます。
軒の出については、基本木造構造の上に、ちょうど
壁への付加断熱と同様の考えで2×6材で面的に被覆させる考えだとか。
端部には写真のような構造骨組みが現れています。
積雪荷重と軒の長さとの見合いで、正直に骨組みが決まってくる。
一方で玄関から階段室の空間では全開放型の日射取得を行っている。
断熱が強化されていって、パッシブに日射熱を確保していって
一方で、その過剰なまでの日射熱のコントロールも果たすべきという、
きわめてシンプルな北方住宅の解が見えてくる気がします。
そしてきのう紹介したように、設備的な要件、
万が一の災害時での延命装置についても、
過剰ではなく、いなすような考え方で対応しようとしている。



2階のバルコニーの床の幅はやや長め。
確認していませんが、90cmは大きく超えて135cmくらいはある感じ。
これくらいの広さがあると、アウトドアリビングの感覚にも近づく。
正面には最近注目されてきている新川サクラ並木が眺望できる。
そういった眺望を楽しめる装置ではありますが、
主たる用途は夏も冬も問わないオーバーヒート防止の日射遮蔽でしょう。
北海道では通常の屋根形状では屋根端部の軒先に氷柱がつき、
それが「すがもれ」被害の拡大とともに巨大化していった経験から、
いっそ軒の出をやめるという、まことに防御的な考えだったのが無落雪工法。
牧歌的に隣家との距離感が確保されていた時代には、軒先から落雪しても
隣家に被害を及ぼすと言うことは想定しなくても良かったけれど、
札幌などの人口密集地ではそもそもの土地面積もどんどん狭小化していった。
その結果、落雪屋根から無落雪屋根が考案された経緯がある。
なので、軒の出を出すということへの地域としてのためらいもあった。
しかし最近は、このようにまっとうに無落雪屋根で軒を出す家も増えてきた。
そういう意味では一回転してもう一回、
日本的な住宅デザインの要素が復権してきている。
外壁仕上げについても、風致地区という周辺環境も踏まえて、
ほぼ全面的に木質外装仕上げとしている。
住宅地ですが、防火の基準もムリせずにクリアさせている。
この家の日射取得のカーテンウォール部分と、バルコニー・軒の出の
配置バランスを見ていて、モンドリアンの絵のようでもありますが、
こういった機能要件とデザイン仕上げの応答が
今後の北海道住宅の基本的な問題意識として共有されていく、
そんな思いを持った次第です。
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【小さくはじめる「最小限オフグリッド」生活】

2017年05月22日 07時50分50秒 | Weblog


みなさん、オフグリッドってご存知ですか?
系統の電気とは関係なく、電気の自給自足をめざす試みですね。
電気を自分の宅内で発電するのには太陽光発電が考えられるので、
こっちの方は、比較的に一般化してきている。
ただし自然の太陽光に依存するエネルギー創出なので、
天候条件などでどうしても不安定な供給状況になる。
そうするとそのエネルギーを「蓄えておく」装置、蓄電池が必要になる。
同時に太陽光発電からの電力を家庭内で利用する転換装置も必要になる。
これらの設備をフルユニットを導入すれば、
系統の電力に依存することなく、いわば電気の独立自営が可能になる。
考え方はこのような単純なことですが、
大きな壁はそれら設備機器のためのコスト上昇と、性能問題。
解決されていくためには、現状では蓄電池の機能向上・流通問題がある。
現実にそういった志向性を持った動きは札幌でもありますが、
アメリカ製の蓄電池製品の輸入が遅れに遅れたりしている。
そもそもリチウムイオン電池の寿命問題もある。
蓄電のトータル回数で上限がまだまだ発展余地が大きいとされている。
・・・っていうことで、なかなか進展を見せないのですが、
きのう札幌市内で見学会が行われていた建築家・櫻井百子さん関与住宅で
「災害時電力自給」を実現させた、いわば「最小限オフグリッド」住宅を見学。

これは外壁側面に取り付けた0.2kwの太陽光発電で発電させた電気を
床下のコンバーター・蓄電池に貯め、家庭用に転換させて
災害時にもっとも不可欠な暖房装置、この家の場合にはペレットストーブへの
供給電力として利用させるというもの。
もちろん、通常時にも家庭用の電力として照明などには利用する。
200Wということなので、どんどん使える、あるいは家庭中の電力を賄うということは
パワー的にできない相談なのですが、
このように災害時の安全確保という考え方は、現実的で
受け入れやすいし、コストもごく安価に済みそうなのであります。
東日本大震災時にも、ほかの熱源による暖房機器はあっても、
起動には電気が不可欠であって、結局利用開始は電力の供給回復頼みだった。
少なくとも生命維持のためには、災害時に暖房用エネルギー確保が必要。
そういう意味で最小限オフグリッドという、こうした提案は有意義。
もちろん断熱がしっかりしていて、発生させる熱の保持が容易であることとの
合わせ技で実現することではありますが、
北海道での現在の住宅性能レベルであれば、容易に実現させられるでしょう。
ありそうでなかった、面白く有意義な住宅提案だと思いました。
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