先日、「網走に行ける」と喜んでいたのです。
なぜかというと、「北方民族博物館」というのが同市の呼人の森の中、
天都山の山中にあるのです。
網走というのは、大変面白いところで、
この呼人の杜の植物の種類の多さはすごいのだそうで、
はるか南の植物もあり、同時に北のきびしい世界に生育するものもあるんだとか。
昔、一度この森の中の家を取材したことがあります。
その建て主さんは画家であり、奥さんも植物細密画で有名な方。
で、その折りに呼人の杜の樹種の豊かさを教えられたのです。
北半球でも有数の樹種なのだそうで、
無数に描かれた植物画を見せていただいたことがあります。
どれも素晴らしくて、人間が植物を描いているのか、
自然が、彼女を通してなにかを語りかけているのか、
そのないまぜなような感覚を覚えているのです。
そういう北半球有数の豊かな自然のなかに
この「北方民族博物館」はあるのですね。
こういう種類の「豊かさ」には、インスピレーション能力の優れた
古代人の方が敏感だっただろうと思います。
この網走を中心とするオホーツク海沿岸地域は、
「オホーツク文化人」という日本史にとって謎の多い人々の痕跡が見られるのです。
ここでの展示も、そういうものかと思っていたのですが、
展示自体は、より広く、地球上北半球の「北方民族」全体の文化紹介でした。
そういう民族の衣食住についての文化を展示していまして、
そのなかに、思わず目が点になったのが、この映像。
イヌイットのひとびとの北極圏での住宅を紹介するビデオのひとこまです。
かれらは、冬になると雪をブロック状に切り取って、
それをレンガのように積み上げて住宅を作っているのだそうです。
アーチの要領で、最後に天井の最後のピースを積むことで完成する住宅。
窓には、想像通り、氷のブロックが充てられていました。
で、そういう住宅で内部でアザラシとかの体脂肪を燃焼させる暖房を行っている。
それが、暖房と同時にほのかな光量とは言え、
照明の機能も果たす。
そうして出来上がるのが、雪のぼんぼり状態。
こういう住宅に住んでいたというのですから、すごい。
どんなデザイン手法もとても敵うわけがない。
異星人がこの住宅を見たら、まちがいなく、この家が地球上で
もっとも美しいというに決まっていますね(笑)。
利用できるものは利用し尽くす、という人間精神のたくましさを見せてくれる。
また、人類の環境適応性の高さも見事に表現している。
しかし、秋田には雪のかまくら文化もある。
洋の東西を、いや、南北を問わず、
人間の考えることは基本的に変わらないと言うことも表しているのでしょうね。