さすがに直木賞を取るだけの本です。
登場人物と物語の展開がすごいに尽きる。
傷つき悩む人々に寄り添う犬の福岡への旅を書く。犬の描写が素晴らしい。
初めての出会いは3歳の幼子と1歳の子犬でした。
その犬の放浪が始まる。
先ずは仙台:男と犬、
新潟:泥棒(ロシア人のミゲル)と犬
富山市:夫婦と犬
大津市 娼婦と犬
島根県:老人と犬
熊本県:少年と犬
元釜石市在住の一家が益城町の震災に遭遇(2016年4月14日)
東日本大震災で心の傷を負った少年と犬が再び巡り会うまでの五年間の放浪の旅を書く。
全編に哀しみが漂いますが迷い犬の「多聞」の凛としたたたずまいに読む者は救われます。
「多聞」とは仏教の守護神で毘沙門天(多聞天)と言われてます。話をよく聞くので多聞と呼ばれます。
10年くらい前に京都の七福神巡りに行き、額が壁に掛けてあります。
左上の東寺が毘沙門天です。
何事がおはしますかは知らねども かたじけなさに涙こぼるる 西行