リコの文芸サロン

文化、芸術、手芸など人生を豊かにする情報発信ブログを始めました。より良いブログに育てるためにコメントなどお寄せください。

生まれたての光・・・田巻幸生・エッセイ集

2018-10-28 | お勧めの本

昨日、友人から一冊の本が届きました。田巻幸生(たまき さちお)著『生まれたての光』です。
名前が男性の様ですが感性豊かな京都で生まれ育ちの女性です。

リコの9月はブログのパートナー・松井一恵さん、友人の母親、町内の役員として町民の葬儀と3つも重なり、さらに10月は神社の朱印巡り、東京での短歌の全国大会に出席と大忙しでした。その上風邪をひいていました。そんな所にヘルペスに掛かりました。背中の5つの湿疹(庭の手入れの時に蚊にさされたと思っていましたが)をスマホで写真を取ったら湿疹でした。早速、皮膚科に掛かりましたら、帯状疱疹(ヘルペス)との診断。過労が原因と言われましたが今まで体力を考えて生きて来たことが無かったので、過労とは大ショックです。老化の始まりみたいでしばし落ち込んでいました。そのタイミングで友人からこの本が送られてきました。

驚きや驚き、田巻さんは子供のころから色々な病気にかかり、20歳の時は先天性の心臓病ですぐに手術をしないと10年ぐらいしか生きれないと診断されましたが、お母さんが「私の宝物にメス一本触れさせません」と号泣されたそうです。幸生さんは「30歳でエンドなら、一日24時間を48時間、濃密に生きよう。30歳で逝っても60年を生きたことになると自分を鼓舞した。」と書いて在ります。この発想の雄大さ、楽天的生き方は素晴らしいです。今年、3月9日に古希を迎えた田巻さんは「6回の大きな手術を越えて生きて来られた喜びと感謝を本と言う形にしたかった。」とあとがきに書いてあります。
ヘルペスごときで落ち込んでいたリコは「何だ老化ぐらい」と立ち直りました。それで皆様にこの本をご紹介したいと思い立ちました。

もう一つ田巻さんのユニークな性格を中学生の時の国語のテストの回答に付いてのエピソードです。
短歌界の偉人とも言われる折口信夫(釈迢空)の
 「葛の花踏みしだかれて、色あたらし。この山道を行きし人あり」の短歌の田巻さんの解釈が抱腹絶倒ものです。

「踏んだのは人なのだろうか?熊ならば、こんな歌を作っている場合ではない」で三重丸を貰ったのが今の、彼女の性格につながっていると考えている。色々な発想があって良いのだ。

 

 リコが内容をあまり書いてしまうと楽しみが無くなりますのでこれ位で。後はどうぞこの本を読んで下さいね。
リコも田巻さんも共に短歌を始めて6年になり短歌の同級生になります。彼女は塔短歌会に所属されていますが、さすが有名歌人の多い短歌会です。田巻さんの短歌は日常の事を詠みながら何かセンスが良い歌です。

私の好きな歌を5首選んでみました。

〇夕もやに沈む町家に帰りくる「ただいま」という「しん」とこたえる

〇歳月が葡萄のように熟れてゆくつかめぬ風を追いかけるうち

〇啄木の三倍生きて子も歌も残せず今朝も花ガラを摘む

〇線香の灰落つる音耳に受く父のこの世の息絶えし夜

〇病い多き我を背負いし夫の眼はグレコの描くイエスにも似て


 

 

 

 

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言葉に命の響きを

2018-10-27 | お勧めの本

柳田邦男著の「言葉の力、生きる力」の本を読んで、リコの感じた事を書いてみます。
9月3日のブログにこの本の紹介をしましたが目次だけで内容を詳しくは書かなかったのでまず、第1弾として序文ともいえる柳田氏の文章を紹介します。

 

はじめに言葉があった。それは確かだ。

だが、ケータイ、ネット時代に突入して以来、情報は怒涛のように駆けめぐっているのに、言葉はイマジネーションの膨らみを失って、痩せ細った記号と化し、かけがえのない沈黙の間合いさえ、ミヒャエル・エンデの暗喩を借りるなら、「時間的貯蓄銀行」に収奪されてしまった。一体、終わりまで言葉はあるのか。この危機的な時代状況の中で、この3,4年、どんなエッセーや評論を書いていても、私の頭の中には、「言葉に命の響きを取り戻さなければ」 が働いていた。

言葉の危機は、心の危機であり、文化の危機だ。

 (言葉の力生きる力、序文から転載)

 

順次、この本でリコが感動した頁を紹介しますが、人によって心に響くものが違いますのでどうぞこの本をご自分でお読み下さい。

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秋のひと時・・・①ミステリーツアー

2018-10-23 | 日々彩彩

10月18日にミステリーツアーに主人と参加しました。行き先は不明なので途中の観光地を紹介します。
岡山県美作(みまさか)市の宮本武蔵の生誕の地の横を通りました。その近くで昼食に「松茸尽くし御膳」を頂きました。

 

宮本武蔵誕生の里の記念に武蔵の名を冠すお酒を購入しました。

   

 ツアーのお土産の松茸10本。松茸はすぐに松茸ご飯を炊きました。
揚げと一緒に炊いたご飯はものすごく美味でし
た。
10本もの松茸入りは本当に美味しかったです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼食の後にミステリーツアーの目的の観光地に行きました。後日の②ミステリーツアをお楽しみに。

 

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②ミステリーツア

2018-10-23 | 日々彩彩

10月18日にミステリーツアに主人と参加しました。途中の観光地の事は22日の①ミステリーツアに書きました。そちらもご覧ください。
映画のロケ地を巡るがツアーの目的地でした。村上春樹の「ノルウェイの森」の映画の撮影地である、兵庫県神河町の峰山高原と砥峰高原です。フランス人監督、ビートルズの主題歌と何かと話題の多い映画でした。出演者は松山ケンイチ、菊地凛子、水原希子などです。

峰山高原はリラクシアの森が撮影場所で、ホテルの前から川に沿って滝とせせらぎを眺め、橋を渡り下っていくと15分程で撮影場所に着きます。どんぐりの実を拾いながらのんびりと散策しました。主人は急坂と泥道で滑りやすいので50m程で引き返しました。環境が良いのでまた訪れたいと思いました。グランピングの場所があり宇宙基地の様な白いテントがたくさん並んでいました。                   

 

 

砥峰高原は七曲り八曲がりの坂を上り詰めた900mほどの高地に在りました。まむし注意、熊出没の立て看板の在るほどの山奥でした。ここも素敵な場所でよくこんな所を撮影場所に見つけたなと感心しました。宇宙と交信できるような天に開けた場所です。

 このバスツアーのお土産です。
味噌漬けの漬物、山椒入りキノコの佃煮、柚子みそ、神河町産のはちみつ。

 

 

 

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松井一恵さんの随想②

2018-10-02 | Chambre de K.

10月3日は松井一恵さんの初七日です。まだ彼女が居ないことが実感できません。

このブログの「Chambre de K.」にたっちゃんのネームで投稿をしてくれていた松井一恵さんは病状が重くなっても病室にパソコンを持ち込んで亡くなる2ヵ月まえに書き上げた2編目の随想「匂い」を紹介します。彼女ほど賢く冷静な女性に会ったのは私の人生で初めてでした。一恵さんは平成30年9月26日に亡くなられました。享年55でした。

 

1編目の随想「忘れじと思ふ」は9月27日にアップしてあります。そちらもどうぞお読み下さい。

  匂い       松井 一恵                        

    マルセル・プルースト「失われた時を求めて」より                      

《私は無意識に、紅茶に浸してやわらかくなった一切れのマドレーヌごと、ひと匙のお茶をすくって口に持っていった。紅茶に浸したマドレーヌの香りによって、幼い頃の記憶が突然呼び起こされた――》

二十世紀を代表する名作小説『失われた時を求めて』は、マドレーヌから始まる長い長い物語です。作者のマルセル・プルーストはパリ郊外生まれのフランス人。『失われた時を求めて』の主人公も、マドレーヌの味そのものよりもその芳醇な香りによって古い記憶が蘇ります。味覚と記憶の繋がりの深さです。

私たちのまわりには、様々な匂いが漂っています。自然の匂い、食べ物の匂い、人工的な匂い・・・。その中で、ふと幼少期の思い出に繋がるものもあります。例えば、雨が降る前の匂いです。この匂いは埃の匂いだと言われていますが、私にとって、小さい頃から変わらない匂いです。  

  〇雨を待つ土の匂ひは遠き日の小学校の中庭の匂ひ                                                                     

小学校の中庭には、百葉箱もありました。雨の降る前の匂いから、百葉箱まで思い出され、古い記憶が蘇ります。また、プルーストのマドレーヌではありませんが、母が作ってくれた焼き菓子の匂いを思い出させるものもあります。母は決して洋菓子が得意ではありません。それでもレシピをみて、オーブントースターでバタークッキーを焼いてくれました。焦げてしまったこともあります。失敗作も私にとっては母の味でした。弟と二人、庭でピクニックのまねごとをして食べたものです。

  〇プルースト効果ならむか漂ふ香に母の作りし焼き菓子思ふ           

一年ほど前、安い輸入クッキーではありましたが、スーパーで夫の買ってきてくれたクッキーの蓋を開けた途端に、新婚旅行で行ったパリのカフェーにあったクッキーの匂いを思い出したこともあります。

  〇夫の買ひしクッキー缶の蓋とればパリの カフェーの匂ひ溢るる       

懐かしいパリの新婚旅行の思い出です。セーヌ河沿いのオープンカフェでコーヒーとクッキーを二人して頼み、自由時間を満喫した実に良い思い出です。今でも脳裏に浮かびます。

またこれは、日常の出来事です。

  〇二階より煙草の匂ひの降りてきてやをら始める食事の支度       

  〇夫の吸ふゴールデンバットの匂ひして朝の六時と気づく吾あり                          

  〇マルボロの煙草の香りが玄関に漂ひ息子の帰りを知らす        

「匂い」とは不思議なものです。五感のうちで最も記憶に直結しやすいのではないでしょうか。そして私は今、病室にいます。

  〇消毒のアルコールの香に思ひ出づあの日の点滴この日の採血 

  

 

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