平成31年1月 平成最後の歌会始の儀(正殿松の間)
平成年間の歌会始の儀の全歌集
『宮中歌会始の全歌集』厚さ2cm(235頁)
東京書籍 2019年4月19日発行
平成31年 歌会始 お題「光」
御製
贈られしひまはりの種は生え揃ひ葉を広げゆく初夏の光に
皇后宮御歌
今しばし生きなむと思ふ寂光に園の薔薇(そうび)のみな美しく
214頁に「平成の歌会始預選歌を読む」・・・三枝昂之
歌会始は1時間15分程の儀式ですが終了後にも行事が続き、最後に選者と預選者10人との懇談会が行われます。その席で十人は自分の歌の背景を説明し、選者は各作品の優れたところを評します。
短歌は暮しにもっとも近い文芸ですから作者の来し方や夢や抱負などを託すに最適な詩型、詠進歌にも平成の世の暮らしぶりや祈りや夢がこめられています。主題ごとに見ていくことにしましょう。
震災の歌、仕事の歌、暮らしの歌、戦争と暮し、社会、季節、風景、と解説が続き、
224頁の「表現の工夫」を抜粋します。
魅力的な歌にはキラリと光る一点がある。そんな特徴を待った歌を紹介しましょう。
草はらに生れしばかり仔馬立ち母より低き世界を見てゐる 高野伊津子
13年「草」
手話交はす少女二人が図書館車に紋白蝶と歩みくるなり 森元英子
17年「歩み」
ぎりぎりに光落とせる会場にボストン帰りの春信を観る 瀬戸口真澄
31年「光」
高野さんは生まれたばかりの仔馬の視野を「母より低き世界」と捉えたところに工夫があり、森元さんは二人が蝶と一緒に歩んでくるとも読めますが、手話の手の動きを「紋白蝶」と見たと読みたいと思います。そこに明るさが生きています。瀬戸口さんはぎりぎりに落とした光が絵画展の現場を生かし、なぜ江戸の浮世絵師の作品がボストン帰りなのか、曰くありげな物語も示唆しています。春信は鈴木春信です。
以下、海外、青春と227頁まで続きます。
★平成24年に入選された大石悦子さんによれば宮中歌会始の儀のスケジュールも宮内庁より送られてくるそうです。
1、9時30分までに到着(各種説明)
2、歌会始の儀
3、天皇皇后両陛下との一問一答
4、記念品の賜与
5、預選者の記念撮影
6、報道関係者との記者会見
7、預選者と宮内庁職員との食事会
8、選者、歌会始委員会委員との懇談
9、賜物、賜饌御礼の記帳
来年・令和4年1月18日に皇居・宮殿で行われる「歌会始の儀」はNHKで生放送されます。
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