ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

地下鉄のザジ

2021-08-29 15:22:38 | 読書
 レーモン・クノー『地下鉄のザジ』





 新刊書店で表紙を見かけた時、古本? と一瞬思ってしまった。

 古い雰囲気のイラストは、1966年に出版された本の挿画。手書きの日本語タイトルがその古さに調和して、最近では見かけない独特な空気を醸し出していた。

 ほかの挿画も本文にちりばめられている。

 フランス語の吹き出しとともに、異国感漂うタッチ。

 さらに、現在の言葉とは若干香りの違う翻訳とともに、個性的な本になっている。


 読み始めてしばらくは、登場人物たちの言動に馴染めない。

 猥雑で活発、予測不能の行動をとる。

 物語の向かう先が見えない。

 やがてそれは想像の先を行き、あっという間に天空の彼方に消えてしまった。

 振り回された挙句に捨てられたみたい。

 この小説が書かれた1950年代の感覚、フランス語のニュアンス、それが理解できれば、何倍も楽しめるのだろう。

 破茶滅茶さにただ身を委ねる、そんな楽しみ方で満足するしかない。(2021)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする