ジョー・R・ランズデール『死人街道』
馬に乗った長身痩躯の男は砂埃にまみれていた。
黒ずくめの服装、腰には36口径のコルト。
厳格な面構えの男は牧師だ。
まるで映画のような始まり。
馬具屋の少年との会話にさえ緊張感がみなぎる。
固唾を吞んで、男の先行きを見守る。
牧師が銃を向ける相手は人間ではない。
押し寄せるゾンビ、鋭く長い歯を持つ怪物、ゴブリン、その描写を読むだけで気分が悪くなる怪奇な物。
荒廃した街は、まるで異世界。
西部小説に荒唐無稽な要素を盛り込んで、最高に楽しい娯楽小説を作り出している。
カバーには、巨大な蜘蛛、ゾンビのイラストがおどろおどろしく描かれ、B級感満載だ。
やっと出たジョー・R・ランズデールの新しい翻訳が、こんなチープな本で残念だと思う反面、もっと徹底的にパルプ・フィクションっぽくして欲しかったとも思うのだ。
装画はサイトウユウスケ氏、装丁は坂野公一氏。(2021)
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