ジェニー・ザン『サワー・ハート』
カバーの紙は、半透明のトレーシングペーパー。
イラストの間に、表紙の蛍光イエローの文字が薄く見えていて、印刷が裏写りしたのかと思ってしまう。
こんな薄い紙で破れないだろうかと心配しながら読み続けていたが、実は丈夫な紙なのだ。
紙の軽さと、ポップなイラストとは違って、中の小説はハードだ。
7つの短編は、中国からアメリカへ移住をした家族の話。
どれも子どもの視点で貧乏な生活が断片的に描かれ、似た印象を受ける。
著者自身の子ども時代を投影したように感じられる。
最初の「ウィ・ラブ・ユー・クリスピーナ」は、貧困の度合いが想像を越えていて、本の重量が増したように感じた。
計画性のない両親には、この生活から抜け出す希望が本当にあるのだろうか。
英語がまだ十分話せない子どもには、学校は居心地が悪い。
両親と一緒にいることだけが救いなのに、祖父母が暮らす上海へ送られようとしている。
子どもゆえ、自分では何一つ解決のできない無力。
この子と同じ経験はしていないが、子どもの頃に抱いた絶望感、辛さを思い出してしまう。
装画はAki Ishibashi氏、装丁は森敬太氏。(2022)
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