つばた徒然@つれづれ津幡

いつか、失われた風景の標となれば本望。
私的津幡町見聞録と旅の記録。
時々イラスト、度々ボート。

Don‘t Think,Moooooove.

2017年01月22日 10時52分10秒 | これは昭和と言えるだろう。
過去(2016年9月4日)に投稿した通り、僕は「カジワラ・チルドレン」の1人だ。
昭和40年代~50年代、
何十本もの連載を抱え、一騎当千の活躍をしていた売れっ子作家、
「梶原一騎」の息吹きを、胸一杯に吸い込んで思春期を過ごし、大いに感化された。
先回は「あしたのジョー」について、イラストと文章を書いてみたが、
その名作に負けず劣らず貪り読んだのは「空手バカ一代」だった。

【事実を事実のまま 完全に再現することは
 いかにおもしろおかしい 架空の物語を生みだすよりもはるかに困難である】


文豪「アーネスト・ヘミングウェイ」が遺した言葉を引用した最初のページには、
積み重ねた瓦(らしきもの)を、手刀で粉砕する空手家の大写し。
次のページは、当時、悪名高かったニューヨーク・ハーレムの一角。
ナイフとピストルを突き付けられた男が、窮地を一瞬のうちに脱するエピソードや、
シカゴの競技場で、素手で猛牛の角を折り勝利するシーンが続く。
主人公の超人的なエピソードを畳みかけた後、原作者のコメントが掲載。

【これは事実談であり この男は実在する
 この男の一代記を 読者につたえたい一念やみがたいので
 アメリカのノーベル賞作家ヘミングウェイのいう「困難」にあえて挑戦するしかない】


小学生だった僕は思った。
『ムムム…そうか…これはノンフィクションなのだ。』と。
緻密で大胆、練り上げられた冒頭のページに惹きこまれ、盲信してしまったのである。
そして、修行に打ち込んだ。

腕立て伏せや腹筋をはじめ、ロッカーを叩き、木の幹を打ち、
遺棄された瓦やレンガに手刀を振り下ろす日々。
「空手バカ一代」の主人公が山籠もりで得た成果、自然石両断を目指して。
道のりは遠く、なかなか達成できないが満足だった。
皮膚が裂け、血が滲む毎に、自分は強くなっているのだと思った。
モチロン、誤解である。
やみくもに体を痛めつけて、技量がアップするはずもない。
非合理だが、僕は夢中だった。

その後、主人公のモデル「大山倍達(おおやま・ますたつ)」氏や、原作者本人、関係者の著作により、
「空手バカ一代」にはフィクションのスパイスが塗されていたと知る。
少なからずショックを覚えた。
オッサンになった今なら、受け止められる。
エンターテイメントだから、それもアリだと。
脚色・演出なしに、事実を事実のまま完全に再現して、
おもしろい物語を生みだすのは、困難なのだ。

しかし、オッサンになった今でも、散歩中に捨てられた瓦などを見ると、時々血が騒ぐ。

念のためお伝えしておきたい。
コレは、僕が割ったのではない(笑)。
ちぇすとーっ!
コメント
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