ロケ誘致で街を聖地に 飛騨市や幸田町など自治体
映画「君の名は。」のモデルになったJR飛騨古川駅の写真を撮るファンら=2018年12月、岐阜県飛騨市古川町で
協議会に参加した各自治体の関係者ら=東京都千代田区の経済産業省で
映画やドラマのロケ地を観光資源として生かす「ロケツーリズム」に自治体や企業が注目している。観光客を呼び込みたい自治体とロケを円滑に進めたい映像制作者を結ぶ「ロケツーリズム協議会」が四月から会員を募集したところ、千葉県いすみ市や岐阜県飛騨市など十四自治体と東京タワーなど十一企業の計二十五団体が参加。一過性の盛り上がりに終わらず、地域の活性化につなげる狙いだ「ロケツーリズムは雇用や移住者の増加につながる。波及効果は計り知れない」。五月十七日に東京都内であった協議会の会合で、内閣官房「ふるさとづくり有識者会議」委員などを務める藤崎慎一会長が、自治体関係者や映像制作者ら約二百五十人を前にあいさつした。協議会は二〇〇八年に前身の団体が発足。一六年から観光庁の支援を受け、現在の形となった。自治体や制作者を結び付け、ロケ誘致のノウハウや成功事例を共有してきた。自治体や企業は参加したい時に会合に参加する緩やかな集まりだったが、一九年度から、自治体や企業がより主体的に活動していこうと、会員制にした。これまでに千葉県茂原市、岩手県久慈市などや、ホテルやファミリーレストランといった企業などが正会員となった。各地の自治体がロケを誘致する動きは二〇〇〇年代から活発となったが、地域の盛り上がりが一過性に終わったり、映像の権利関係から地元が作品の利用に関われない事例もあった。協議会では、ロケ以降も地元にメリットがあるよう、「ウィンウィン」の関係を目指す。会合では、隣接三市町と併せて一八年に四十件のロケ誘致に成功したいすみ市から早川卓也副市長が参加し、「市の知名度が上がり、移住者増につながっている」と話した。アニメ映画「君の名は。」の舞台となった岐阜県飛騨市も会員自治体のひとつ。多くのファンが「聖地巡礼」と称して同市を訪れている。「映像作品の力をまざまざと知り、手応えを感じた」と話す都竹淳也市長。「ロケ誘致を本格化したい」と意気込む。愛知県幸田町の成瀬敦町長は、ビデオレターを寄せ「観光資源の乏しい幸田町だが、先進の事例を見習い、ロケ誘致の取り組みを強化して、ロケツーリズムをまちづくりのヒントとして生かしていきたい」と話した。また長野県千曲市の岡田昭雄市長は、自身も地元ロケの映画で校長役で出演した。「外国人観光客を呼び込むほか人口減対策で、映画は地方創生の大きなツールだ」と話した。制作者側からはよしもとクリエイティブ・エージェンシー、NHK、日本テレビのスタッフや映画監督の犬童一利さんらが参加。「町全体がバックアップしてくれると心強い」との声があった。(長竹祐子)