店に行ってもコメが買えない! 日本の食糧危機はすぐそこ 気づいたときには後の祭り 輸入に依存し国内農家潰したツケ到来
過剰、過剰といわれてきたコメが突如、「足りない」と騒ぎになっている。今年の新米がほぼ出そろう10月までまだ2カ月近くあるが、6月末時点の民間在庫量は前年に比べて41万㌧少ない156万㌧と過去最低水準を記録しており、商品棚がほぼ空になったまま「いつ入荷するかわからない」というスーパーも出ている。流通関係者らはコメ確保に奔走しているが、「まったくない」という。品薄にともなって価格も上昇中だ。政府は「昨夏の猛暑による不作」を理由にしているが、根本的な要因は田んぼを潰し続け、農家の赤字を放置してきた結果、高齢化で離農が加速していることにある。さらに各地で毎年起こる災害がそれに拍車をかけている。だが、現状を踏まえてなお政府は、「需要は減少する」として来年度も生産量を増やさない姿勢を示している。「今年がもし不作なら来年はコメ騒動だ」という現場の危機感とは乖離した悠長さだ。
いびつな食料輸入依存体質への警告
西日本のある大手ディスカウントストアでは、コメの商品棚がほぼ空の状態が続いている。「現在、お米の原料不足により新米まで原料が保てない商品がございます」として、ほとんどの商品で「1家族1点まで」と販売制限をかけている。それでも5㌔袋から2㌔袋にいたるまで、ほとんどが売り切れ状態だ。1㌔700円近くする商品や、無洗米など少し高めの2㌔袋がわずかにあるだけ。この店舗では週に2回入荷する予定だが、入荷日に本当に商品が入ってくるかどうかは不明だという。
別の大手ディスカウントストアでは、入荷の見通しがなく、コメの販売はほぼなくなっている。コメのコーナーには、白米の2㌔袋が数袋残っているだけで、もち米や玄米などの売り場になっている。西日本で大手のスーパーの店頭でも並んでいる商品はごくわずか。空いた商品棚にパックご飯をずらりと並べていた。ある消費者は、コメを購入したくて店員に入荷時期を尋ねると、「注文しても入荷しない状態で、いつ回復するかわからない」という返答だったと話していた。このスーパーでは10㌔袋は取扱いが中止になっているという。
日頃の取引状況もあるのか、チェーンによっては西日本産米の5㌔袋が入荷されているところもあり、ばらつきはあるものの多くの店頭で品薄状態になっている。「お米の原料不足のため、供給がひっ迫しております」「欠品・品薄が発生しております」「供給状態が不安定なため、商品が入荷しない場合があります」など、各店舗のコメ売り場にはポップが並び、消費者にコメ不足を訴えている。
小・中学校はまだ夏休みで、家に子どもたちがいる分、いつも以上に食料が必要な時期。「今日はコメを買って帰ろうと思っていたが、2㌔を買ってもすぐになくなるし、どうしようか…」とわずかに残った商品の前で悩む家族連れや、「コメがない!!」と驚いてしばし立ち止まる家族連れの姿も見られる。
価格も上昇している。スーパーでいつも同じ銘柄を購入しているという女性によれば、以前は5㌔で1980円ほどだったものが2080円になり、2800円まで上がっていたという。別の男性も「いつも買う5㌔袋は1500円くらいだったのが、2700円になっている。“政治改革”などといっているが、まずみんなの生活を何とかしてほしい」と怒りを込めた。
新米の価格高騰は必至 流通業界も戦々恐々
コメ不足がニュースになり始めたのは5月以降だが、コメ流通業界では、今年に入ったころから不足が騒がれ始めていたという。
業界関係者は「すべての銘柄でコメがない。コシヒカリの新米が本格的に出始めるのがあと1カ月後くらいで、ヒノヒカリになると11月頃になる。コメがひっ迫しているから売上を上げるチャンスだが、売る物がない。主要なお得意さんの食堂やホテル、施設、病院などに納品する在庫を切らしてしまうと、取引を打ち切られてしまうので、スーパーや米穀店からの注文を半分くらい断り、新米が出そろって品不足が解消されるまでは在庫を温存するようにしている」と話した。
「今、在庫を持っている農家があれば業者は言い値で買いとる」というほど、現場では不足感が増している。しかしコメ不足を報じるニュースの最後には必ず政府の「ひっ迫していない」というコメントがついている。「ひっ迫していないから政府備蓄米は放出しない」という意味だ。あまりにも乖離した感覚に、現場からは「その情報はどこから得たのか?」「ということは、価格引き上げのためにだれかが持っているということなのか?」との声も上がっている。
こうしたなかで農家の元には「コメがないか」という問い合わせがあいついでいる。ある農家は「ここ最近、知人から連絡が入ってくるのは、すべて“コメはないか”という話ばかりだ。合計すると50袋(1袋30㌔)近くになる。直売をしているので保管している量は決まっている。この時期になるとないものはない。これでまた、緊急輸入のような話にならないかと心配だ」と話した。
全国で最初に出回る宮崎県産の新米が盆前に出始めたが、その時点で1俵(60㌔)8000円値上がりしていたという。宮崎県産の新米は1俵2万4000~2万5000円で取引されており、山口県産の新米も1俵2万円をこえると見込まれている。
業界関係者の一人は、「新米がすべて出そろう10月になれば物がない状態は一応解消されるが、新米は10㌔当り1000円以上上がる見込みだ。これからはスーパーの店頭でも10㌔5000円が当たり前の世界になって、特売で2980円などはなくなると見ている」と話した。
米穀店の店主も「銘柄などにこだわっていないので、今のところなんとか注文分は入荷しているが、宮崎の新米は高すぎて仕入れていない。新米は2万円前後の取引になりそうだという。コメ屋としては新米が出てきた後が怖い。値上げするしかないが、お客さんにどれだけ価格転嫁できるだろうかと不安だ」と話した。
米国産米への置換えも 増産せず輸入増やす政府
この状況にあっても政府には生産強化に舵を切る姿勢も、政府備蓄を強化する姿勢もみられない。
それどころか昨年度の補正予算では「田んぼを潰せば手切れ金を出す」(1回限り)という政策を打ち出し、それに750億円を計上している。まだまだ田んぼを潰すつもりだ。そのなかで見逃せない動きとして指摘されているのが、国産米の不足に乗じてカリフォルニア米への置き換えが進んでいることだ。
コメ流通関係者は「大手の総菜企業がカリフォルニア米を使い始めたということだ。円安なので価格はあまり変わらないが、味自体は悪くない。大手が使い始めれば追随してそちらに流れていく企業も出てくるのではないか」と指摘した。米菓(あられ・せんべい)の原料不足で業界団体がMA(ミニマム・アクセス)米を低価格で安定的に供給するよう要望する動きもあり、米国産うるち米の成約状況は、23年4~6月の103㌧から、24年4~6月は2839㌧へと28倍も拡大している。相当量がMA米に切り替わっていることを示している。
それはすでにスーパーの店頭にも流入している。70代の女性は「先日、コメを探して数店舗回ったが、国産は5㌔3000円をこえる物ばかりなので手が出ず、あるスーパーでカリフォルニア米が4㌔1680円で売っているのを見つけて2袋買った」と話した。4㌔1680円ということは、5㌔に換算すると2100円。国産米が5㌔で3000円前後の水準になっているなかで割安だ。近年、米国産米の輸入価格は国産米より高値になっている。それが国産より低価格で販売されているのはなぜか? である。
農業関係者の一人は、「これまで買い叩かれてきた国産米の価格水準が上がることは、赤字で農業を続けてきた農家にとって喜ぶべきことだが、もし輸入米がそれにとってかわれば、ますます国内農業が疲弊していく」と警戒感を語っていた。
そもそも、「日本人のコメ離れ」「過剰在庫」を騒いで国内の作付け面積を減らしながら、MA米77万㌧(玄米換算)を毎年輸入し続けてきたのが日本政府だ。本来は低関税を適用して、輸出機会を保障するというだけの約束であり、他国は全量買い入れなどしていないが、アメリカの要求に従って日本政府だけが「最低輸入義務」だといい張って全量買い続けている。そして、入札にかけてもだれも買わないので飼料用に回し、差損を埋めるために毎年税金を700億円も投入してきた。
1993年の凶作を契機に、国内増産に向かうのではなく輸入が自由化されていった経験を踏まえて、この動きへの警戒感は高まっている。
農業経営体20年で半減 コメ不足の要因とは
今回のコメ不足の原因として、昨夏の猛暑でコメどころの新潟や福島をはじめ東北・北陸地方で高温障害が発生し、小粒になるなど収量・品質が低下したことがあげられている。
業界関係者によると、とくに業務用に回る価格帯の安い「中米」の量が少なかったという。その一方でコロナ禍が明けて訪日外国人が押し寄せており、東京や大阪などの都市部の外食産業でインバウンド需要が増大したこと、すべての食品が値上がりするなかで比較的上昇幅が緩やかだったコメを食べる人が日本国内で増えていることも要因の一つとされている。令和5年産だけを見れば、主食用生産量661万㌧に対して需要量は702万㌧。41万㌧足りなかったことになる。
しかし、一番の原因は減反を続けてきて、もともとの作付けが少ないことであり、加えて農家の高齢化で年々、生産者が減少していること、というのはコメにかかわる人たちの共通認識だ。
今になって「不作だった」と猛暑のせいにしているが、令和5(2023)年産米の作況指数は101で平年並みだった。猛暑の影響があったにせよ、とりたてて不作だったわけではない。ただ、農水省が人口減少などを理由に、主食用米から飼料用米などに作付け転換を進めており、そのせいで23年産の主食用米の収穫量が過去最低レベルだったのは確かだ。生産縮小策に加え高齢化で生産量が急減していくなかで、わずかな需要の増加、というよりコロナ以前の規模に需要が戻ったことで混乱が生じたといえる。
70年代から「コメが過剰だ」「米価を安定させるためだ」といって減反政策を続け、2018年に減反政策を終了した後も、主食用米から他の作物への転作を推進し続けており、水稲の作付け面積は1961年の約313万㌶から、2023年には約153万㌶と、60年前と比べると2分の1まで減少している【グラフ①参照】。
農業従事者の平均年齢はすでに68・7歳(2023年)。農業経営体数は2005年の約200万経営体から、2024年には約88万経営体へと半分以下にまで減少【グラフ②参照】しており、生産基盤崩壊のスピードが加速している。
主食のコメは食料安全保障の要であり、戦後すぐには、食管法の下で政府が農家から生産費に見合う価格で買い上げ、消費者には安い価格で販売するという仕組みをとっていた。その当時を知る農家に聞くと「1俵1万8000円から2万円だった」という。
しかし、93年の「冷夏による凶作」を理由にした韓国やタイからの緊急輸入、同年のガット・ウルグアイラウンドでのコメ輸入自由化をへて、95年に食管法を廃止し、米価に市場原理を導入した結果、米価の下落が続き、ひどいときには1俵8000円程度という年も発生し、そのたびに農家が廃業していった。
「農業は手厚く保護され過ぎている」という言説とともに、長年にわたる農家の苦境が放置され続けてきたところに、コロナ禍やウクライナ戦争という世界的な状況の変化が襲い、農業の実態はいよいよ厳しくなっている。電気代、肥料・農薬、運賃などすべてが値上がりしており、稲作でみると、2020年では稲作農家が1年働いて手元に残る所得は1戸平均で17・9万円、時給は181円だった。それが2021年、22年は所得は1万円、時給10円というところまで来ている。国民の命の根幹を支える主食でありながら、政府による価格保障もないなかで、多くの農家は赤字状態でも代々受け継がれてきた農地を荒らさないために、なんとか踏ん張っている状態だ。
今年、コメの作付けをやめた高齢農家も多く、「地域内で元気な農家が一手に引き受けているが、それも70~80代。1人で請け負うには限界の面積だ。あと1人でもやめたら山に返すほかない」「今、地域内の農家数を考えると、あと五年もすれば数人しか残らないのが目に見えている。コメの自給率を維持し続けることができるとは思えない」といった声が各地で語られている。
それに追い打ちをかけているのが、毎年起こる豪雨や台風、地震による災害だ。農地の災害復旧は、あくまで私有財産ということで、補助は出るが自己負担が発生するため、「今からお金をかけてまで農業を続けられない」と高齢農家が農業をやめていく契機になっている。災害復旧に時間がかかり過ぎ、1年後にようやく本格的な復旧工事が始まるという状態のなかで諦める農家も出ている。
ある農家は、「毎年どこかで災害が起こるが、復旧にお金と時間がかかる問題はどこも同じではないか。もともと農業は赤字で、最近は肥料や農薬が値上がりし、食管法の時代と比べると感覚的に倍近くになっていると思う。それなのにコメ代は1俵1万2000~1万3000円と昔より低い。そんな状態で続けてきた高齢農家が今から資金を投じてまで復旧できない。今年はコメどころの山形県などが被災しているが、こうして全国で農家がやめていくのを放置すれば、いざというとき本当に食べる物がない日本になるのではないか」と語っている。
世界的には食料危機が現実的なものになっている。中国などは有事に備えて政府備蓄を増大すべく世界の穀物を買い占めている。この深刻な状況のなかで、農家への支援策は出さずに潰れるに任せ、有事には罰則付きで強制的に増産させるとしているが、そのころには生産する農家がいないのが現実だ。
今回のコメ不足は、現在の日本がわずかな変化で食料の供給が滞る危うい状態にあることを改めて浮き彫りにするものとなっている。
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宮島に超富裕層向け宿泊施設誘致計画
世界遺産と自然守りたい
大平氏・藤井県議ら住民の声聞く
広島・廿日市
広島県廿日市市が世界遺産・宮島に海外の超富裕層を対象にした「高付加価値旅行者に対応した宿泊施設」の誘致とヘリポート整備を計画している問題で20日、日本共産党の大平よしのぶ衆院中国比例予定候補、藤井敏子県議は宮島を訪れ、調査しました。
地元住民らでつくる「宮島包ケ浦(つつみがうら)自然公園を守る会」共同代表の三次正昭さんが案内。宮島などで野生生物の研究を進める環境NGO広島フィールドミュージアム代表の金井塚務さんら12人が参加しました。
計画は、厳島(いつくしま)神社や商店街とは反対側の宮島東側にある世界遺産のバッファゾーン(緩衝地帯)である包ケ浦自然公園に新たな宿泊施設をつくり、桟橋や樹木などを撤去しヘリポートを設置するもの。
金井塚さんは「自然を再生、回復させることが世界の主流。国や松本太郎市長はその復元こそやるべきだ。目先の銭を追うのではだめだ」と指摘。三次さんは「宮島は全部が自然であり公園は文化。県内外から多くの反対署名が集まった。超富裕層のためでなく、多くの人が訪れ楽しめる公園であるべきだ」と述べました。
「宮島の歴史やみなさんの熱意が伝わった。訪れてよし、住んでよしの宮島であるよう皆さんの声をしっかり国や県に届けたい」との大平氏の言葉を受け、三次さんが「とても力強い」と握手しました。