自民党政権10年の少子化対策はどれも小粒で的外れ(C)日刊ゲンダイ
岸田内閣は、異次元の少子化対策を実施するというが、抜け落ちている視点がある。
結婚したカップルから生まれる子どもの平均は、約50年前は2.2人だったが、2021年は1.9人である。確かに減少しているが激減ではない。結婚後、望めば子どもを持つことができる環境整備は急務であるが、少子化のより大きな原因である、未婚の増加を直視すべきである。
50歳時未婚率を見ると男性で28%、女性で18%(2020年)と、50年前に比べて男性16倍、女性5倍と急増している。
では、独身者はどのような状態にあるのか。日本は先進国の中でも親との同居率がトップクラス。独身者は男女ともに30代も40代も6割以上が親と同居している(2020年の国勢調査)。
日本は独立しようとしても住宅費が非常に高いうえ、非正規雇用が4割を占め、金銭的な不安が常につきまとう。
親と同居していれば、家賃や家事の負担も少なくて済む。結婚して、新たに住まいを探し、生活を始めると確実に生活レベルが下がるケースが多い。結婚を阻む壁のうち、政治の力で取り除けるものは待ったなしで手を打つべきである。
まずは非正規雇用者への対応と住宅支援
まずは自民党と経済界が増加をさせた非正規雇用者への対応だ。同じ仕事であれば正規社員と同じ処遇にする同一価値労働同一賃金を欧州並みに導入する。
さらに、日本に大きく欠けているのが住宅支援政策。どれも小粒で、先進国に比べればないに等しい。例えば、フランスでは国民の2割が住宅給付を受けている(2017年末時点)。いま日本には空き家が約350万戸(2018年)ある。住宅支援を“異次元”のレベルで進めるべきである。
日本の子育て予算は、GDP比1.79%で先進国平均2.34%を大きく下回る。子育て予算が増えないと5年後には防衛費が子育て予算を上回る。現在、防衛費の方が大きな国はG7で米国しかない。
自民党政権が続いたこの10年の少子化対策は小粒で的外れと言わざるを得ない。
民主党政権では、小学生までだった手当を、“所得制限なし”で中学生まで給付する子ども手当を創設したが、自民党はそれを後退させ、“所得制限付き”の児童手当とした。
欧州では当たり前の高校生までの児童手当の延長や、大学までの授業料無償などを導入し、あまりにも子育てに冷たい現状を大転換しなければならない。
■「子どもを社会で育てる」発想がない
かつて、民主党政権の子ども手当に所得制限をかけ、名称を児童手当に戻した当時の石破茂自民党政調会長は、「子ども手当の撤回は、家庭を基礎とする我が国の自助自立の精神に真っ向から反した『子どもは社会で育てる』との民主党政策の誤りを国民に広く示すこととなり、大きな成果」との談話を発表している。
当時、民主党の子ども手当の理念は、「社会全体で子育てをする」「子どもの育ちを社会全体で応援する」というものだった。
いまだに岸田政権や自民党が、この理念を否定しているのであれば本気度が疑われる。
▽長妻昭(ながつま・あきら) 1960年、東京生まれ。慶大法卒。NEC、日経BP社を経て00年6月、衆院議員初当選(東京7区)。09年の政権交代後、鳩山政権、菅政権で厚生労働大臣を務めた。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます