あれからもうまもなく4週間になろうとしている。今年で27回目を数える「あいの土山マラソン」を走った。
実は
3年前、2010年の大会にもエントリーしたのだが、台風の影響で中止になった。
当時のブログを読み返して驚いた。このとき台風で中止にならなくても「DNS」を決めていたと書いてあったからだ。練習中転倒し肋骨と手の指を骨折してしまったのだった。その後、骨折をおして「いびがわマラソン」を走った記憶は鮮明だったが、走らなかった「あいの土山」のことは忘れてしまっていた。
そんなわけだから今回は3年越しの恋人との出会いにも似た感慨があるはずだったが、またしても膝痛に悩まされこの1カ月半ほとんど走れないままで突入することになった。3年越しのラブコールもあえなく振られて撃沈寸前だった。
骨折癒えぬ間の「いびがわマラソン」、ぎっくり腰でコルセットして向かった「えちご・くびき野100kmマラソン」。いずれもDNS寸前だったがなんとか完走してきた。
だが
今回はもうだめかと思った。3日前でもたった130m走るのが痛くて難しい状態だったのだから。とにかく前日、前々日は歩くだけにとどめて回復への望みを託した。
■右膝痛対策
少し前から膝痛対策に有効かどうか確認していたことがいくつかある。
結論から言うと、膝痛を大幅に改善するような効果はどれにもなかった。しかし、疲労の軽減や膝の動きの安定に役立つものがいくつかあった。
もっとも効果があると感じたのはテーピングである。走れば膝はやはり痛くなったが、エクササイズウォークなら抜群の安心感があった。膝のブレをきっちり抑えながら装着感はほぼない。
CW-Xのロングタイツも試した。いくつかの理由からここ最近履くことはめったになかったが、久しぶりに履いてみたら、やはり疲れ方が幾分違う気がした。膝痛への効果はゼロだったけれど。
そして
ザムストのJKバンド。これもはっきりした効果を実感したわけではなかったが、つけていて違和感はないし、多くのランナーが効果を実感しているようなので、お守りのような気持で着けることにした。
ロキソニンを飲むことを前日に思い立った。これも少なからぬランナーが実践しているのを見聞きしているので、害は少なそうだし「ひょっとして」ということもあるかもしれない。スタートを待つ列に並んでいるときに2錠飲む。
■出だしの混雑も上り坂もカモン
フル、ハーフ各2000人余りのエントリーということであったが、スタート直後の走路はせまく、また、どうもタイム順ではなく登録順のスタートだったらしく、1㎞以上にわたって思うように走れない。
右膝に違和感はあったが、「痛い」という感覚はなくて、練習不足にもかかわらずスピードが上がりそうだったので、この混雑は好都合だった。

※写真は家人が応援してくれていた4㎞地点・青土ダム付近。快調に走っていたのだが・・・
8㎞あたりで違和感もなくなり、何のストレスもなく普通に走れるようになった。曇りで気温も16~17℃ともっとも走りやすい天候。風も大してなかった。
こんな風に走れるのは本当に久しぶりだった。
とはいえ、いつどうなるかわからない爆弾を抱えているようなものなので、「80%くらいの力で」と常に意識しながら走っていた。
痛みはまったくなくて、
これまでの1カ月半の苦しみは何だったのか?と不思議でならなかった。
スタートからすでにアップダウンはいくつもあって、4㎞から10㎞までは登り基調。高低図によればこの間約60m登ることになっている。序盤ということもあるが、走っている感覚としては、それほどきついとは思わなかった。
10㎞あたりから今度は下り基調。高低図では19㎞から急な登りになっているが実際には
18㎞から19kmの間にこのコース一番の急坂が待ち受けている。フルマラソンを走るのはこれが11回目だが一番きつい坂の1つかもしれない。このアバウトな高低図では1㎞の間に20~30m登る感じだけど、そうすると平均斜度はせいぜい3%。いやもっとずっときついと思う。もちろん速くは昇れない。
この1㎞のラップは前後の1㎞に比べて1分遅い5'48。登り坂は膝の負担が少ないので歓迎という気持ちでコツコツと走った。むしろこの後すぐにある急激な下り--1㎞で60~70m下る--のほうが気になっていた。
■フルは甘くない。練習不足はごまかせない。
中間点は1時間45分。「こりゃいけるかもしれない」と思ったのも束の間、ラップが少しずつ落ちていく。
「そんなに甘いわけがないよな」
27kmの手前。重くなった脚は動いてるか止まってるかわからない。スローモーションのように感じる。脚が攣りそうだ。きつい。
自分に負けて止まった。同時に右太腿裏を思い切りつる。走り続けていれば攣らなかったのか? 立っていられないほどの激痛。
膝のJKバンドを外す。テーピングのうえにCW-X、さらにこのサポーターとコンプレッションだらけのいでたち。以前もCW-Xを履いたとき、ゴール後だが脚じゅうつりまくったことがあった。カーフタイプでもやはりつりやすい。
道端にそれてマッサージを繰り返しどうにか歩けるようになる。マラソンを走るに際して自分がもっとも大事にしている目標は
「最後まで止まらない・歩かない」なのだ。
小出監督の本のタイトルは「マラソンは毎日走っても完走できない」。これは「完走=制限時間内にゴールする」という意味ではない。「完走=最後まで止まらない・歩かない」ことなのだ。
■初体験。暴れる小さな悪魔たち
ここからの15㎞は地獄だった。脚がつってしまうのだ。両脚の、足首の上、ふくらはぎ、膝裏、太腿裏。いちばんきつかったのが、両膝の上(内側)の筋肉。
脚の中を、ボールか何か、あるいは小さな生き物が動き回っている。早ければ数十メートル、長くても100mか200mも走ると脚のあちこちでいたづらものが動き回るようになり、張りを感じたかと思うと筋肉がつってしまう。
こんな体験は初めてだった。
「これが練習できてないってことなんだな」
と深く納得する。
ただ、脚の攣る痛みは膝の痛みとは違って、後をひくような恐怖感はない。ゴールまでの15㎞で100回以上攣った(あるいは攣りかけた)と思うが、「止まってはマッサージ」を繰り返し、なんとかゴールまで戻ることができた。
■ロキソニン・マジック
「ひょっとして自己ベスト?!」と考えた自分の浅はかさが馬鹿らしいが、これはこれで記憶に残るレースになったし、「今回は完走は難しいかもな」と思っていたことを思えば、制限時間5時間のこの大会の完走者として名を刻んだことは誇らしくもある。
それにしてもなぜ膝が痛くなかったのか、いまだによくわからない。ロキソニンてそんなに痛みに効く薬だったかな? それともレースのアドレナリンだろうか。
来年に向けて希望をいくつか記しておきたい。

ぜひ
荷物預かりを設置していただきたい。荷物は着替え場所に放置し、貴重品のみ預ける(こちらもかなり長い列ができていた)という趣旨だとは思うんだけど、かなりの参加人数だし、いささか不用心だと思う。
更衣スペースが男女一緒というのも、シャイなわたし的には少し気になった。「わたしもここで着替えるの?」と仲間に聞いてた若き女性ランナーがいたけど、その後彼女がどうしたのかわたしは知らない。関西の大会これが普通なのか? しかも体育館のとびらはどこもあけっぱなしだった。

※この建物の中が更衣スペース。ご覧の通り開けっ放し。
スタート順は、遅いランナーが後に来るようタイム順が望ましいのではないか。
とはいえ全体的にはさすがに歴史のある大会で、コンパクトにまとまったいい大会だという印象です。
関係者の皆さんと地元住民の方々のサポートと熱い応援に心より感謝申し上げます。
<おしまい>