イチローはマーリンズに移籍して2シーズン目だけど、その前はもちろんニューヨーク・ヤンキースに在籍してた。そのときの監督は、現在も引き続き名門ヤンキースを率いるジョー・ジラルディ。今シーズンからマイアミ・マーリンズの指揮を執るドン・マッティングリーも、実は選手時代をヤンキース一筋で過ごし、現役引退後は松井の恩師でもある名将ジョー・トーリ監督の元、ヤンキースのヘッドコーチを務めヤンキースの次期監督と目されていたらしい。ところが、トーリ監督がドジャースの監督となったのに伴い、マッティングリーもドジャースに移った。トーリ監督勇退後、マッティングリーはドジャースの監督に就任。2015年に退任するまで3年連続で地区優勝を果たした。
ドン・マッティングリーは選手としてもヤンキースの看板選手で、メジャー在籍14年で2153安打を放っている。しかも、全盛時にはホームランを35本も放つなどスラッガーでもあり、ヤンキース記録の238安打を放った1986年は打率.388で2年連続首位打者。打点王も獲得している。彼の背番号23は永久欠番だそうで、だれもがみとめるヤンキースのレジェンドの一人と言っていいだろう。
ジラルディの実績はマッティングリーには劣るが、正捕手を務めた4年間(1996~1999)で3度の世界一となった。あの伊良部秀輝ともバッテリーを組んでいたそうだ(知らなかったけど)。我々がよく知っているヤンキースの正捕手と言えばホルヘ・ポサーダだが、ポサーダの前に正捕手を務めていたのがジョー・ジラルディということになる。
前置きが長くなったけど、こんなブログを書こうと思ったのは、私が監督としてのジラルディを全く評価していないからだ。人間性がどう、とかではなく、純粋に監督としての手腕にはなはだ疑問なのだ。もっと言うと、ヤンキース・ファンというわけではないので、ヤンキースの勝ち負けにはとくにこだわりはない。ただし、ヤンキースには、今なら田中将大がエースとしているわけだし、おととしまではイチローと黒田も在籍していた。彼らのいるヤンキースはやはり応援してしまう。
で、2009年には監督としてもワールド・チャンピオンになった。ご存じの通り、そのワールドシリーズのMVPは松井秀喜である。一方、今年9シーズン目のヤンキース監督をつとめるジラルディだが、2009年以外では地区優勝が2度あるだけである。
スター軍団をまとめるのは、それ故の難しさもあるに違いないが、それにしても、金にものを言わせてあれだけのスター選手をそろえながらのこの成績にヤンキースファンはよくおとなしくしているものだと思う。
ヤンキースの成績自体はともかく、松井、イチロー、マー君の使い方について個人的には腹立たしいことこの上ない。それでもってヤンキースの成績がよいなら、逆にあきらめもつくのかもしれないが、こんな成績なのに、イチローやマー君の使い方を見てるとなおさら納得がいかないわけだ。
たとえば、イチローについていえば、左ピッチャーが出てくると教科書通りきちんとイチローは交代させられた。しかし、イチローは左ピッチャーなど全く苦にしないバッターの筆頭と言ってもいいくらいなのだ。左ピッチャーが先発だと予想されればスターティングメンバーには入れてもらえないことが多かった。
マー君。故障から復帰して、肘の状態を考慮して中6日で使っているのかと思ったら、突如中5日、中4日だったりする。起用法に一貫性というものがない。あるいは、球数の関係があるのはわかるが、引っ張っておきながら、ヒット一本でイニングの途中で平気で交代させる。シチュエーションとはあまり関係がないように見受けられる。
何が言いたいのかというと、選手の起用法も戦術もきわめて教科書的で、かといって一貫性が感じられない。調子が悪いとみているなら使わないなら、それはそれで要するにつまらない。その癖会見など聞いていると、話は上手だが、どうにも魅力に欠ける気がする。真実みに乏しい。そういっては言い過ぎかもしれないが。
どこまでいっても一メジャーリーグベースボールファンの感想に過ぎないけれど、ときには彼という野球人の哲学なり、経験に基づく閃きといったものがうかがえる采配をしてほしいと思うのだ。選手にとっては納得できる一貫性というものがないとはなはだつらいシーズンを過ごすことになる。
マーリンズに来て2シーズン目のイチロー。ピート・ローズの4256安打を超えた後のインタビューで、イチローはマーリンズの選手、スタッフ、ファンへの感謝を述べたのだった。その中にはドン・マッティングリーも入っていたと思う。
マッティングリーが監督になり、「昨シーズンはイチローを使いすぎていると思う。今シーズンは出番が減ることになるだろう(だいたいそんな話だったはずだ)」と言ったと聞き、「このボンクラ監督め」と日本人の誰もが、いや少なくとも私は思った。
彼の言葉通り、シーズン序盤はなかなかスタメンで出る機会はなかった。しかし、期待の若手たちに薬物疑惑が発覚したり、すっかり調子を落とすものがいたりで、最も元気なイチローに出番が回ってきた。そして、今シーズンのイチローは、見事すぎるくらい見事にそのチャンスに応えた。
打数は少ないながらチームNo.1の打率で、日米通算でメジャーリーグ記録4256安打を越えた後、素人的には、「この調子だし、一気に試合に出るチャンスが増えて、3000安打もまもなく達成となるんじゃない」と思ったりしたのだが、ドン・マッティングリーは違った。
彼はイチローの起用法を変えることはなかった。これまで通り、だ。外野のレギュラーは、若手有望株の三人---イエリッチ、オスーナ、スタントンがあくまでも優先。イチローは彼らの状態を見ながら、これまで通り、代打とスタメンを使い分ける。
マッティングリーという人は優秀な監督なんだと、そのときわかった。
イチローが今シーズン好調とはいえ、それはこれまで代打数試合、スタメン数試合という起用方法で、適度に体を休めることができたせいだったと考えることはきわめて妥当なんじゃないか? そう思った。昨年までの数シーズン、イチローは、かつてからは信じられないようなひどい成績だったのだ。200安打と打率3割が途絶えた2011年以降、それなりに身体のあちこちが(たとえば視力とか反射神経などは、イチローといえども鍛えてどうなるものでもないだろう)衰えてきたに違いない。記録が途切れたことにより、心理的にも様々な影響があることも想像できる、本人の意識だけでコントロールしきれないところもあったに違いない。
今シーズンについて言えば、イチローの飽くなき努力はもちろんなんだけど、ドン・マッティングリーという人が監督になり、起用法やチームマネジメントも変わったことがきわめて大きく、この好調に影響している気がしてならない。かつてMLBを代表するスターでもあったドン・マッティングリー監督に加え、イチロー自身も語ったように、MLBホームラン記録を持つレジェンド、バリー・ボンズが打撃コーチとして加わっていることも大きな意味があるだろう。
一方、今年も全く打てないヤンキース。ベテランが多くけが人続き。ホームランは多少打っているとはいえ、すっかり刀のさび付いたA.ロッドが相変わらずクリーンナップに居座るヤンキースで、孤軍奮闘するマー君は可哀想になってくる。高額な年棒ゆえ、点をとってくれようがくれまいが、モチベーションを維持して、給料に見合った成績を残さない限り、ファンにもメディアにもたたかれかねない。もう少し自由に楽しく野球がしたいと思っているのではないかと推測する。
野球というスポーツの楽しさは、ルールにせよ(ストライクゾーンなんて枠があるわけじゃない)、球場にせよ(球場ごとに形も広さも違う)、細かなことにこだわらない自由さにある。とりわけ日本野球に比べて私が感じるMLBの素晴らしさは、プレーにおいても選手の個性を尊重すること、「来た球を打つ」「どんな体勢だろうと来た球を捕る」、コーチもいるけど「自分で考える(あるいは自ら教えを請う)」、そんなところなのだ。まさに、少年野球の必死さ、楽しさ。それを最高の選手たちが繰り広げる。そこにあると思うのだ。
ドン・マッティングリーは選手としてもヤンキースの看板選手で、メジャー在籍14年で2153安打を放っている。しかも、全盛時にはホームランを35本も放つなどスラッガーでもあり、ヤンキース記録の238安打を放った1986年は打率.388で2年連続首位打者。打点王も獲得している。彼の背番号23は永久欠番だそうで、だれもがみとめるヤンキースのレジェンドの一人と言っていいだろう。
ジラルディの実績はマッティングリーには劣るが、正捕手を務めた4年間(1996~1999)で3度の世界一となった。あの伊良部秀輝ともバッテリーを組んでいたそうだ(知らなかったけど)。我々がよく知っているヤンキースの正捕手と言えばホルヘ・ポサーダだが、ポサーダの前に正捕手を務めていたのがジョー・ジラルディということになる。
前置きが長くなったけど、こんなブログを書こうと思ったのは、私が監督としてのジラルディを全く評価していないからだ。人間性がどう、とかではなく、純粋に監督としての手腕にはなはだ疑問なのだ。もっと言うと、ヤンキース・ファンというわけではないので、ヤンキースの勝ち負けにはとくにこだわりはない。ただし、ヤンキースには、今なら田中将大がエースとしているわけだし、おととしまではイチローと黒田も在籍していた。彼らのいるヤンキースはやはり応援してしまう。
で、2009年には監督としてもワールド・チャンピオンになった。ご存じの通り、そのワールドシリーズのMVPは松井秀喜である。一方、今年9シーズン目のヤンキース監督をつとめるジラルディだが、2009年以外では地区優勝が2度あるだけである。
スター軍団をまとめるのは、それ故の難しさもあるに違いないが、それにしても、金にものを言わせてあれだけのスター選手をそろえながらのこの成績にヤンキースファンはよくおとなしくしているものだと思う。
ヤンキースの成績自体はともかく、松井、イチロー、マー君の使い方について個人的には腹立たしいことこの上ない。それでもってヤンキースの成績がよいなら、逆にあきらめもつくのかもしれないが、こんな成績なのに、イチローやマー君の使い方を見てるとなおさら納得がいかないわけだ。
たとえば、イチローについていえば、左ピッチャーが出てくると教科書通りきちんとイチローは交代させられた。しかし、イチローは左ピッチャーなど全く苦にしないバッターの筆頭と言ってもいいくらいなのだ。左ピッチャーが先発だと予想されればスターティングメンバーには入れてもらえないことが多かった。
マー君。故障から復帰して、肘の状態を考慮して中6日で使っているのかと思ったら、突如中5日、中4日だったりする。起用法に一貫性というものがない。あるいは、球数の関係があるのはわかるが、引っ張っておきながら、ヒット一本でイニングの途中で平気で交代させる。シチュエーションとはあまり関係がないように見受けられる。
何が言いたいのかというと、選手の起用法も戦術もきわめて教科書的で、かといって一貫性が感じられない。調子が悪いとみているなら使わないなら、それはそれで要するにつまらない。その癖会見など聞いていると、話は上手だが、どうにも魅力に欠ける気がする。真実みに乏しい。そういっては言い過ぎかもしれないが。
どこまでいっても一メジャーリーグベースボールファンの感想に過ぎないけれど、ときには彼という野球人の哲学なり、経験に基づく閃きといったものがうかがえる采配をしてほしいと思うのだ。選手にとっては納得できる一貫性というものがないとはなはだつらいシーズンを過ごすことになる。
マーリンズに来て2シーズン目のイチロー。ピート・ローズの4256安打を超えた後のインタビューで、イチローはマーリンズの選手、スタッフ、ファンへの感謝を述べたのだった。その中にはドン・マッティングリーも入っていたと思う。
マッティングリーが監督になり、「昨シーズンはイチローを使いすぎていると思う。今シーズンは出番が減ることになるだろう(だいたいそんな話だったはずだ)」と言ったと聞き、「このボンクラ監督め」と日本人の誰もが、いや少なくとも私は思った。
彼の言葉通り、シーズン序盤はなかなかスタメンで出る機会はなかった。しかし、期待の若手たちに薬物疑惑が発覚したり、すっかり調子を落とすものがいたりで、最も元気なイチローに出番が回ってきた。そして、今シーズンのイチローは、見事すぎるくらい見事にそのチャンスに応えた。
打数は少ないながらチームNo.1の打率で、日米通算でメジャーリーグ記録4256安打を越えた後、素人的には、「この調子だし、一気に試合に出るチャンスが増えて、3000安打もまもなく達成となるんじゃない」と思ったりしたのだが、ドン・マッティングリーは違った。
彼はイチローの起用法を変えることはなかった。これまで通り、だ。外野のレギュラーは、若手有望株の三人---イエリッチ、オスーナ、スタントンがあくまでも優先。イチローは彼らの状態を見ながら、これまで通り、代打とスタメンを使い分ける。
マッティングリーという人は優秀な監督なんだと、そのときわかった。
イチローが今シーズン好調とはいえ、それはこれまで代打数試合、スタメン数試合という起用方法で、適度に体を休めることができたせいだったと考えることはきわめて妥当なんじゃないか? そう思った。昨年までの数シーズン、イチローは、かつてからは信じられないようなひどい成績だったのだ。200安打と打率3割が途絶えた2011年以降、それなりに身体のあちこちが(たとえば視力とか反射神経などは、イチローといえども鍛えてどうなるものでもないだろう)衰えてきたに違いない。記録が途切れたことにより、心理的にも様々な影響があることも想像できる、本人の意識だけでコントロールしきれないところもあったに違いない。
今シーズンについて言えば、イチローの飽くなき努力はもちろんなんだけど、ドン・マッティングリーという人が監督になり、起用法やチームマネジメントも変わったことがきわめて大きく、この好調に影響している気がしてならない。かつてMLBを代表するスターでもあったドン・マッティングリー監督に加え、イチロー自身も語ったように、MLBホームラン記録を持つレジェンド、バリー・ボンズが打撃コーチとして加わっていることも大きな意味があるだろう。
一方、今年も全く打てないヤンキース。ベテランが多くけが人続き。ホームランは多少打っているとはいえ、すっかり刀のさび付いたA.ロッドが相変わらずクリーンナップに居座るヤンキースで、孤軍奮闘するマー君は可哀想になってくる。高額な年棒ゆえ、点をとってくれようがくれまいが、モチベーションを維持して、給料に見合った成績を残さない限り、ファンにもメディアにもたたかれかねない。もう少し自由に楽しく野球がしたいと思っているのではないかと推測する。
野球というスポーツの楽しさは、ルールにせよ(ストライクゾーンなんて枠があるわけじゃない)、球場にせよ(球場ごとに形も広さも違う)、細かなことにこだわらない自由さにある。とりわけ日本野球に比べて私が感じるMLBの素晴らしさは、プレーにおいても選手の個性を尊重すること、「来た球を打つ」「どんな体勢だろうと来た球を捕る」、コーチもいるけど「自分で考える(あるいは自ら教えを請う)」、そんなところなのだ。まさに、少年野球の必死さ、楽しさ。それを最高の選手たちが繰り広げる。そこにあると思うのだ。