ウサギが跳ねるようにそこらじゅうにぴょんぴょんと生えてくる。芽生えの双葉が、まるでウサギの耳のようにⅤの字型に長いので、みんなはピョンピョン草と呼んでいた。
春になると、その柔らかなきみどり色のウサギの耳が、郷里の軽井沢の家の庭に、毎年、たくさん出てきた。
花の名はヤブカンゾウ。ノカンゾウの花は一重咲きだが、ヤブカンゾウは八重。朝ひらき夕方にはしぼんでしまう一日花で、夏になると赤褐色のボリュウムのある花を次々と咲かせた。
わすれぐさ(萱草)といわれ、万葉集にも載っている。
忘れ草我が紐に付く香具山の古りにし里を忘れむがため 大伴旅人
この花を身に付ければ憂いを忘れるという。
若い芽は山菜として食べられることを後に知ったが、家の周りでは誰も食べてはいなかった。知っていたなら、飽きるほど天ぷらにでもして、味わえたものを・・・・。
ウサギの耳といえば、あと一つ、その庭には、かわいい芽生えがある。サクラソウだ。プリムラなど西洋種に対して、山野に自生する「日本サクラソウ」のことである。
白い毛の生えた小さな耳のような芽をつんつんと地面に突き出しているさまは、子ウサギたちがかくれんぼうをしているようで、なんとも愛らしい。
そんな芽生えの季節が味わえなくなって数年が経つ。
誰も見る人がいなくても、この年中行事は繰り返され、花を咲かせていることだろう。
限りなくいとしい花たちを、褒めてあげたい。
春になると、その柔らかなきみどり色のウサギの耳が、郷里の軽井沢の家の庭に、毎年、たくさん出てきた。
花の名はヤブカンゾウ。ノカンゾウの花は一重咲きだが、ヤブカンゾウは八重。朝ひらき夕方にはしぼんでしまう一日花で、夏になると赤褐色のボリュウムのある花を次々と咲かせた。
わすれぐさ(萱草)といわれ、万葉集にも載っている。
忘れ草我が紐に付く香具山の古りにし里を忘れむがため 大伴旅人
この花を身に付ければ憂いを忘れるという。
若い芽は山菜として食べられることを後に知ったが、家の周りでは誰も食べてはいなかった。知っていたなら、飽きるほど天ぷらにでもして、味わえたものを・・・・。
ウサギの耳といえば、あと一つ、その庭には、かわいい芽生えがある。サクラソウだ。プリムラなど西洋種に対して、山野に自生する「日本サクラソウ」のことである。
白い毛の生えた小さな耳のような芽をつんつんと地面に突き出しているさまは、子ウサギたちがかくれんぼうをしているようで、なんとも愛らしい。
そんな芽生えの季節が味わえなくなって数年が経つ。
誰も見る人がいなくても、この年中行事は繰り返され、花を咲かせていることだろう。
限りなくいとしい花たちを、褒めてあげたい。