中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

民族差別

2007-01-05 09:49:25 | 中国のこと
  中国は多民族国家である。大多数(92%)を占め漢族以外に55の少数民族がいる。たとえば中国の西北端の新疆ウィグル自治区にはウィグル族が最も多く(約48%)、 その他にカザフ、回、キルギス、モンゴル(蒙古)、タジク、シボ、満(満州)、ウズベク、オロス(ロシア)、タタールなど46の少数民族がいて、新疆の約60%を占めていると言う。漢族はこの地では少数だ。このように新疆には多くの民族が居住しているが、やはり民族間には垣根のようなものはあるようだ。異民族間の婚姻はほとんどないと聞くし、微妙な感情もあるようだ。2003年に新疆の東北端のアルタイ地方に行った時にそのような異民族間の微妙な感情というものを感じたことがあった。

  第1日目の夜を過ごしたジムサルという町を翌朝に発ってしばらく行き、何軒かの小さな飲食店が並んでいる所で朝食をとることにした。ガイドの趙戈莉が車を降りて様子を見に行ったが、1軒の店に入るとすぐに出て来て、顔を顰めて首を振り「カザフ!」と言った。その後で回族料理の店に入ったが、なぜカザフではいけないのか、どうしてカザフと判ったのかと趙戈莉に尋ねると、「料理の匂いが臭いし、顔は頬の骨が出ているからすぐ判る。カザフは嫌い」と答え、それにはウィグル族の運転手のムテリプ君も同調していたようだった。この後でも2人は時折「カザフ嫌い」を出していた。目的地のアルタイのカナス湖に近い山道にさしかかった時に急に渋滞し、やがて車は動かなくなった。1週間前に起こった観光バスの谷への転落事故の処理が行われていて2時間近く通行止めとなったが、その間に苛立ったのか、後方から1台の車が走り抜けて行った。もちろんすぐ先で止められるのだが、それを見て趙戈莉とムテリプは顔を見合わせて「カザフ」と言い合って笑った。急に通り過ぎたから運転手の顔は見えなかったはずで、どうしてカザフなのかと聞くと、「あんなことをするのはカザフに決まっている」と言った。

  日本人には民族問題や宗教問題は、日常に身近に経験することではないこともあってなかなか理解できないが、世界にはイスラエルとパレスチナの紛争、かつてのアイルランドでのプロテスタントとカトリックとの激しい戦い、旧ユーゴスラビアのコソボでのアルバニア系住民とセルビア系住民との間の殺戮など枚挙にいとまがないくらい例は多い。イラクのイスラム教のスンニ派とシーア派の殺し合いなど、同じ宗教なのにどうしてあそこまで憎しみ合うのかと、歴史的宗教的な知識の乏しい私などにはどうにも理解できない。新疆での趙戈莉達のカザフ族への嫌悪感も伴った差別意識もかなり理不尽なものだが、案外その根は深くて、これがいわゆる民族問題の芽のようなものなのかとその時には思ったことだった。

  中国では少数民族を重視する政策が進められているようだが、それでもチベット族やウィグル族の一部には根強い独立志向があるとも聞く。中国でも民族問題はのどに刺さった棘なのだろうか。