札幌市から手紙が届いた。封筒の裏の氏名を見て、面識はないがどういう方かすぐに判った。冒頭に年内に身内の不幸が続いたので返事を出すのが遅れたことを詫びてあるが、去年私が手紙を差し上げた、西安の李真がお世話になった方の奥さんからだった。
去年の7月に李真は勤めている旅行社の出張で来日した。まず東京に着きそれから会議場のある札幌の定山渓温泉に行くために国内線に乗り換えたが、それが遅れて札幌に着いた時にはかなり遅くなっていた。バスターミナルまで走って行ったが、定山渓温泉行きのバスは見当たらない。たまたまそこにいた男性に尋ねると定山渓行きの最終バスは出た後だということだった。途方に暮れた李真に男性は、途中まで行くバスがあるから、そこからタクシーで定山渓温泉まで行けばいいと教えてくれたそうだ。
その後のことは、奥さんからの手紙にはこうあった。
「・・・よくよく話しを伺ってみますと、きょう、中国から来日されたばかりで札幌の地理もよくご存じないとの事。
定山渓温泉は街なかにある温泉街とは違い、市街地からは夜は暗い国道を走らなければなりません。
時間も遅く、若い女性一人きりという事もあり、万が一事故にでも遭ってはいけないと、主人は自分が自家用車で送り届けてさし上げた方がよいと判断したようです」
そうしてこの男性Yさんは奥さんに電話でメールを入れて、家の近くのバス停まで車で来るように指示された。そして奥さんと一緒に李真を定山渓温泉まで送り届けてくださったのだった。何ともご親切なご夫婦と言う他はない。
帰国した後で李真とのチャットでこの話を聞いたが、李真はまさに「地獄で仏の」思いだったようで、奥さんの手紙によると李真はご夫妻に「日本人は親切です。札幌でYさんご夫婦にお会いできて、私はラッキーでした。お二人は日本の誇りです」と言ったそうだ。彼女の安堵と喜び、感謝の念がどんなに大きかったか容易に想像できる。帰国してから彼女は両親や会社の同僚達にこの話をしたそうだが、皆とても感心したようで、両親も「日本人の誇りだ」と言ったそうだ。今日、李真とチャットして奥さんからの手紙のことを話すと、彼女は改めてその時の感動を思い返したようで、「もし、西安の駅でこんなことにあったら、どうなるかなと考えます。」と言っていた。
私も李真から話を聞いて非常に感動し、同じ日本人として誇らしく思ったので、Yさんには李真の友人として礼状を出した。奥さんは手紙の中で「こんな私達がしている当たり前の小さなことを、そんな風に受け止めて下さる李さんの心のほうがよっぽど美しいと私は感じました」と謙虚に書いておられるが、とりわけ嬉しいのは「この様な小さい事が国際交流になるとしたら素晴らしいな・・・と思いました」、さらに「またチャットなどをされる機会がございましたら、李さんに私達の方こそ『ありがとう』と申し上げたい旨、宜しくお伝えくださいませ」とも書かれてあったことだった。改めて日本にこのような人達がおられることに誇りを感じた。
我が国の首相は就任する前からしきりに「美しい国の創造」を言う。何をもって「美しい国」と言うのかもう1つよく分らないのだが、このYさん夫妻のような善意溢れる人達がもっともっと多くなるような国が真に美しいのではないだろうか。
Y夫人のきれいな筆跡で書かれた丁寧な文面を繰り返し読んだ。手紙には家の周りで摘んだというもみじの押し葉が同封されていて奥ゆかしく感じられ、新年らしい爽やかな気持ちになった。
去年の7月に李真は勤めている旅行社の出張で来日した。まず東京に着きそれから会議場のある札幌の定山渓温泉に行くために国内線に乗り換えたが、それが遅れて札幌に着いた時にはかなり遅くなっていた。バスターミナルまで走って行ったが、定山渓温泉行きのバスは見当たらない。たまたまそこにいた男性に尋ねると定山渓行きの最終バスは出た後だということだった。途方に暮れた李真に男性は、途中まで行くバスがあるから、そこからタクシーで定山渓温泉まで行けばいいと教えてくれたそうだ。
その後のことは、奥さんからの手紙にはこうあった。
「・・・よくよく話しを伺ってみますと、きょう、中国から来日されたばかりで札幌の地理もよくご存じないとの事。
定山渓温泉は街なかにある温泉街とは違い、市街地からは夜は暗い国道を走らなければなりません。
時間も遅く、若い女性一人きりという事もあり、万が一事故にでも遭ってはいけないと、主人は自分が自家用車で送り届けてさし上げた方がよいと判断したようです」
そうしてこの男性Yさんは奥さんに電話でメールを入れて、家の近くのバス停まで車で来るように指示された。そして奥さんと一緒に李真を定山渓温泉まで送り届けてくださったのだった。何ともご親切なご夫婦と言う他はない。
帰国した後で李真とのチャットでこの話を聞いたが、李真はまさに「地獄で仏の」思いだったようで、奥さんの手紙によると李真はご夫妻に「日本人は親切です。札幌でYさんご夫婦にお会いできて、私はラッキーでした。お二人は日本の誇りです」と言ったそうだ。彼女の安堵と喜び、感謝の念がどんなに大きかったか容易に想像できる。帰国してから彼女は両親や会社の同僚達にこの話をしたそうだが、皆とても感心したようで、両親も「日本人の誇りだ」と言ったそうだ。今日、李真とチャットして奥さんからの手紙のことを話すと、彼女は改めてその時の感動を思い返したようで、「もし、西安の駅でこんなことにあったら、どうなるかなと考えます。」と言っていた。
私も李真から話を聞いて非常に感動し、同じ日本人として誇らしく思ったので、Yさんには李真の友人として礼状を出した。奥さんは手紙の中で「こんな私達がしている当たり前の小さなことを、そんな風に受け止めて下さる李さんの心のほうがよっぽど美しいと私は感じました」と謙虚に書いておられるが、とりわけ嬉しいのは「この様な小さい事が国際交流になるとしたら素晴らしいな・・・と思いました」、さらに「またチャットなどをされる機会がございましたら、李さんに私達の方こそ『ありがとう』と申し上げたい旨、宜しくお伝えくださいませ」とも書かれてあったことだった。改めて日本にこのような人達がおられることに誇りを感じた。
我が国の首相は就任する前からしきりに「美しい国の創造」を言う。何をもって「美しい国」と言うのかもう1つよく分らないのだが、このYさん夫妻のような善意溢れる人達がもっともっと多くなるような国が真に美しいのではないだろうか。
Y夫人のきれいな筆跡で書かれた丁寧な文面を繰り返し読んだ。手紙には家の周りで摘んだというもみじの押し葉が同封されていて奥ゆかしく感じられ、新年らしい爽やかな気持ちになった。