最近離婚が増えているらしい。性格の不一致という理由が多いようだが、夫婦のそれぞれの性格などそれほど一致するものではないだろう。それに結婚前に相手の性格というものがどこまで理解できるものか。まして恋愛結婚ともなれば、結婚前や結婚して間もない頃は、どうしても良いところばかり見ているが、時がたつにつれて気が付かなかった地や癖も目に付くようになる。それは自然なことなのだが、それがどうしても我慢ができなくなると別れたくもなるのかも知れない。 私と妻は約40年間の結婚生活中、性格はもちろん違ったが、我慢のできない不一致というほどのものはなく過ごした。いろいろなこともあったが、離婚などは一度も考えてことはなかったが、多くの夫婦はそんなものではないか。もちろん嫌でたまらないのに別れることもできず、ずるずると毎日を引きずっていくということもあるだろうし、それに我慢ができなくなると一時盛んに言われた「熟年離婚」ということにもなるのだろう、根底には今の女性は昔のように一方的な忍従など考えられない自立心があるからだと思う。 結婚生活は喩えてみれば酒造りのようなものではないかと思う。米と麴とが一体になって、時間をかけてまろやかになっていく。そんなものではないか。結婚生活も熟成には時間がかかる。好きな句に「秋灯や夫婦たがいに無きごとく」というのがあるが、そのようになるまではやはり時間がかかる。 近頃は「離婚式」というのがあるようで、希望者は意外に多いらしい。結婚式があるのだから離婚式もとはちょっと思いつかないのだが、これも世相の一端だろうか。離婚式に参加してみたある新聞社の女性記者のレポートを見た。それによると大略、こんなもののようだ。 10月の、とある休日の昼下がり、東京・浅草の浅草寺前に、「旧郎」と「旧婦」が現れて、それぞれ別々に人力車に乗る(なぜ人力車なのか分からないが)。2人は一言も話さない。もちろん笑顔などは無いだろう。参列者は友人ら約10人。人力車は約15分間、住宅街を参列者を従えて行き、会場の古民家に到着。会場ではこの式のプラナーが離婚に至った経緯を説明し、旧郎旧婦それぞれ挨拶する。その後は「最後の共同作業」で2人がハンマーを一緒に握り、結婚指輪を叩き潰す。拍手があったかどうかは分からない。「離婚披露宴」も多分無かったのではないか。この式の基本料金は5万5千円とのこと。 どうにも理解しがたいようなセレモニーで、私などは茶番劇のように思うのだが、ところが、これが案外人気があって、プラナーはこれまで90件以上の離婚式を手がけてきたそうだ。首都圏の30~40歳代の夫婦が中心だが、50代以上の夫婦の挙式もあるとのことだ。それに問い合わせが、震災後は以前の3倍に増え、1日100件近く寄せられることもあるという。月2~3件だった挙式も4~6件と倍増。特に週末は、受け入れ枠がほぼ埋まる状態になっているとのことだから分からないものだ。互いに憎み合い、罵り合って別れるのではなく、少なくともこのようなセレモニーをしようというのだから気持ちは落ち着いているのだろう。それならこのような式に費用をかけるのではなく、2人で友人でも交えて「最後の晩餐」でもして来し方を振り返って話し合ったらよいのにと思うのだが、ハンマーで指輪を叩き潰すなどとはどうも殺伐でいけない。 結婚も近頃は「ジミ婚」が多いようだ。まして離婚などは人前でセレモニーまでしてするものではないだろうと思うのだが、時代とともに考え方も変ってきているのだろう。