東京大学の本郷キャンパスで、駐輪場に止めていた学生や教職員らの自転車11台のサドルが外され、代わりにブロッコリーやバナナが差し込まれているのを職員が見つけた。サドルは自転車の前かごに入れられていた。職員が調べていると、近くにいた3人の20代の男子学生が悪戯したことを認め、「自転車の所有者の驚いた顔を見るのが楽しみだった」と話したという。警察署は、サドルのほかに壊したり部品を盗んだりした形跡がなかったため、刑事事件としての立件は見送った。大学側がこの学生たちをどのように処置したのかは分からない。
若い学生の稚気から出た行為だと笑って過ごすこともできるだろうが、20代にもなってと、何か情けない気がするし、天下の東大生もこの程度かと嗤いたくもなる。東大に入るくらいだから頭はそれなりに良いのだろうが、やることは幼稚だ。ユーモアのあるジョークだと寛大に考える向きもあるだろうが、もし彼らの1人が私の孫であれば、「馬鹿者!」ときつく叱るだろう。若者のジョークが理解できない頑迷なジジイと思われても構わない。旧制高校の学生も稚気のある言動をしていたが、それでも大学生になれば、それなりのわきまえと分別を持つようになった。
こんな学生もいる。8月下旬のある日の夕刻、滋賀県大津市のJR湖西線近江舞子駅で、ホームにいた男性客が「貨物列車に男3人が飛び乗った」と駅員に通報した。通報を受けて約7キロ離れた所を走行中の貨物列車(21両編成)を停車させ、運転士が13両目の貨車に3人の男がいるのを発見した。近くを走行中の富山発大阪行き特急「サンダーバード34号」を止め、3人を近江舞子駅に連れ戻した。警察の調べの結果、3人は京都大2年、新潟大2年、東京外国語大1年の男子大学生で、愛媛県内にある中学、高校時代の同級生だったという。たまたま貨物列車が信号待ちで近江舞子駅に停車しているのに飛び乗った。「滋賀県高島市にある名水を見たかった。」と話したという。彼らはこの貨物列車を各駅停車だと思ったらしいが、次の停車駅は福井県敦賀市の敦賀駅だった。この騒ぎで湖西線は上下線とも約1時間運転を見合わせ、約3200人に影響した。
貨物列車は、土台車両にコンテナが搭載されているもので、3人が乗った車両のコンテナは1個だったが、コンテナと土台車両のうち人間が入れる空間は幅約60センチ、長さ約2.5メートルしかない。3人はここに並んで手すりにつかまり、しゃがみ込んで乗車していた。列車の時速は95キロくらいで、かなり怖い思いをしたらしい。無謀で浅はかな行為だが、やはりこれが有名大学の学生かと思うとその分別のなさに呆れる。
近頃は何かと言うと偏差値とやらで、大学進学もそれを目安にして競争する。高校時代と言うと10代後半の心身ともに若々しく充実した青春の時期だが、受験競争に明け暮れる生活を送っていると、バランスの取れた人間形成に必要な何かが欠落してしまうのではないか。だから大学生になると単純に開放感を味わって、その年相応の分別が付かないままになり、悪くするとそのまま社会に出ることになる。
「今時の若い者は」というありきたりの老人語を発するつもりはないが、一部にせよこのような大学生たちの行動を知ると何か割り切れない気持ちにとらわれる。