現在の大阪府の吹田市と攝津市にまたがってあった旧国鉄吹田操車場跡地から、昔の駅で温かい茶を入れて販売されていた小型陶器製の「汽車土瓶」が大量に発見されたという記事を見た。大阪府文化財センターの調査で分かったもので、数万点あるとみられるそうだ。
土瓶は摂津市の跡地内にある石炭を捨てた穴で見つかったが、この操車場では昭和初期に、大阪駅終点の客車の清掃作業が行われていたそうだ。その頃の土瓶の捨て場だったのだろう。見つかったのは、1928~33年の製品で高さ約7~10センチ、容量は約220ミリリットルと320ミリリの2種類で、1933年は昭和8年で私の生まれた年だから、80年ほど前のものだ。「五銭」「七銭」と販売価格のほか「空壜はこしかけの下江お置を願います」などと車窓から投げ捨てないよう注意書きがあるものもあり、少なくとも24種類の図柄や形状を確認したそうだ。付属の湯飲みや蓋もともに見つかった。貴重な文化財というほどのものではないが、鉄道マニアには「お宝」物で、欲しいという希望者が殺到するのではないか。
駅内での茶の販売は、明治22年静岡駅の駅弁屋が信楽焼の土瓶に静岡茶を入れて売ったのが始まりと言われているそうで歴史は古いが、この土瓶は昭和32年頃からプラスチック製容器が登場し、約10年程でこれに取って代わられたので姿を消した。現在では山梨県の小淵沢駅で販売されているそうだ。今では駅売りの茶はペットボトル入りや缶入りのものになってしまっているから、プラスチック製容器もなくなっているのか。
http://www.umakato.jp/archive/coll/03_01.html
汽車土瓶は懐かしい。父に連れられて汽車で旅行した時には駅弁と一緒に必ず土瓶入りの茶を買ってもらった。触ると温かい感触や、容器と蓋が擦れ合うカリカリというかすかな音を思い出す。土瓶は窓の側に置いた。年寄りの感傷かも知れないが、駅弁と汽車土瓶を買って、ああいうのんびり、ゆったりした汽車の旅をしてみたい。