中国が近代国家としてはまだまだ問題があるとされているのは、官僚の深刻な腐敗、汚職と貧富の激しい格差だ。 官僚の汚職についてはこれまでにもこのブログで書いたが、その底知れない腐敗と汚職額の巨大さに驚かされる。先日にも浙江省の杭州市と江蘇省の蘇州市の2人の元副市長が、開発に伴いそれぞれ日本円にしておよそ17億円余りと13億円余りの賄賂を受け取った罪などで死刑を執行された。今回の死刑執行の背景には、国民の間に官僚の汚職への不満が広がるなかで、開発に伴う汚職を厳しく取り締まる政府の姿勢を示すねらいがあるようだ。死刑が多いことで国際的に批判されている中国だが、あまりにもひどい腐敗を見聞きしている中国の庶民からすれば当然だという思いもあるだろう。 もう一つの問題である貧富の格差はますます広がっているようで、とりわけ沿岸地区に多い、日本人からすると驚くような富裕層に対して、内陸部、特に農村地区には貧困者が多い。貧困層とはもちろん年収によって言われるものだが、中国政府は今年後半にも、貧困層と認める住民の年間収入基準を、現在の1人当たり1196元(約1万5500円)以下から1500元(約1万9500円)以下に約25%引き上げる方針を固めたそうだ。この措置で現在は約3千万の貧困層が一気に1億人を超えるとされている。 政府が経済支援する貧困層の裾野を広げることは格差を是正する狙いがあると言う。高所得者層に対する個人所得税の税率アップなどとセットで貧困対策を実施する見込みだそうだが、さて狙い通りにいくのか。ちなみに中国では10年末で資産が1千万元(約1億2860万円)以上の富裕層は96万人で、前年より9.7%も増加したそうだ(『月間中国NEWS』7月号)。このような格差拡大に不満を強めている貧困層が、一党独裁体制の終結を求めることに結びつかないよう配慮した可能性もあるとの見方もあるようだ。さらに、世界第2位の経済大国として国連の分担金の引き上げを求める声があるなど、応分の国際責任を問われている中国が、貧困層の数を増やすことで、国内外にいまだ途上国だと印象づけようとする狙いもあるとのことだが、そうだとするなら「大国」らしくない、いじましい考え方で、事実でなくてもそういう見方をされるのは、国際的にはいかに経済第2位の大国であっても、国際社会の中でのその振る舞いから胡散臭い国と見られているからだ。 国際的には「絶対的貧困層」とされる1日あたりの収入が1米ドル以下を最新のレート(1ドル≒6.46元)で計算すると、中国では年間2358元(約2万8700円)となり、今回の措置で1500元に引き上げてもなお基準に達していない。 官僚の底知れない腐敗、貧富のはなはだしい格差、これは中国の不治の病弊で、解決は「百年河清を俟つ」ようなものではないかと思う。一方では空母などを作り軍備拡張に余念がなく、外に向かっては発展途上国と公言する。汚職の撲滅も掛け声は大きいが、いっこうに効果は上がらない。この巨大な「発展途上国」はどうなっていくのだろうか。国際的に高い評価を受ける国に成長できるのか。