蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

サムライブルーの料理人

2011年11月26日 | 本の感想
サムライブルーの料理人(西芳照 白水社)

長年サッカー日本代表の遠征に料理専任スタッフとして同行した著者のエッセイ。
料理に限らず、日本代表のサポートスタッフの活動内容が幅広く紹介されていて、その手厚さに少し驚いた。相当にお金がかかっているなあ、という印象。もっともイングランドチームのスタッフは日本の倍くらいいるそうだが。

食事を用意するに当たっては、栄養学的にはもちろん、心理的サポートにも心配りする。例えば食事会場で調理してできたてを食べてもらう「ライブクッキング」を毎食実施したり、夕食に「なごみメニュー」としてラーメンやお好み焼きを出したりする。

いくら恵まれた環境にあるとはいえ、ワールドカップともなると1カ月以上もマッチョな男たちが合宿するわけで、家族と離れて女っ気もなく、同じメンバーと毎日顔をあわせて遊びにいくとこもままならない、という一種監禁状態。

そんな中で、食事は最大ともいえる楽しみになっているようで(刑務所と同じですな)、南アフリカの地で(日本と同じ)ラーメンが出るとそれだけで大喜びする選手がいるというのも十分に理解できる。

巻末には著者によるレシピが掲載されていて、いくつか作ってみたが、鶏肉の照り焼きとペペロンチーノは、作り方が簡単でかつおいしかった。

本書が出版されたのは、震災の直後だったが、著者の本来の勤務先は(東電の寄付によって作られ、今は原発対応の前線基地となっている)Jヴィレッジだそうで、印税は全額同施設がある南相馬市へ寄付されるそうである。

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