昭和29年の、お富さん

2008年03月17日 | お客さん宅で
                   (八代デイサービスセンター)

「カラオケの、電気屋さですよ~」と、職員さんが声を上げると、ニコニコのおばあさんも、ムッツリのおじいさんも、一斉に入り口の私を注目します。
今日は、八代デイサービスセンターに、マイクカラオケの補充チップを届けに行きました。
ここは80~90代のお年寄りを車で迎えに行き、日中預かる福祉のセンター、
道を挟んだ幼稚園から来た子が、おばあちゃんに握手攻めにあっています。
まさに「お年寄りの幼稚園」と云ったところです。
コタツで寝ているおじいさん、ソファーに連れ立ってしゃべるおばあさん、ムッツリ黙ってテレビとにらめっこのおじいさん、
時には、全員テーブルに行儀よく並んで、お遊戯や歌を唄ったり、おやつを食べたり、ほんとに「幼稚園」そのものです。
「電気屋さんに唄ってもらいま~す、皆んなも一緒に唄いましょう」と、職員さんが叫びます。
仕方ない、『何にしましょうか』と聞くと、ムッツリじいさんが「お富さんにしてくれ」です。
職員さん、「無茶苦茶下手に唄って~」と催促です。
とうとう、春日八郎の「お富さん」を唄うことになりました。

1番
粋な黒塀 見越しの松に
仇な姿の 洗い髪
死んだ筈だよ お富さん
生きていたとは お釈迦さまでも
知らぬ仏の お富さん
エーサオー 玄治店(げんやだな)

2番
過ぎた昔を 恨むじゃないが
風も沁みるよ 傷の跡
久しぶりだな お富さん
今じゃ呼び名も 切られの与三(よさ)よ
これで一分じゃ お富さん
エーサオー すまされめえ

3番
かけちゃいけない 他人の花に
情かけたが 身のさだめ
愚痴はよそうぜ お富さん
せめて今夜は さしつさされつ
飲んで明かそよ お富さん
エーサオー 茶わん酒

4番
逢えばなつかし 語るも夢さ
誰が弾くやら 明烏(あけがらす)
ついてくる気か お富さん
命みじかく 渡る浮世は
雨もつらいぜ お富さん
エーサオー 地獄雨

あ~あ、とうとう4番まで唄ってしまいました。
おばあちゃんも、おじいちゃんも大合唱、帰りには、「カラオケの電気屋さん、また来てね」と、見送られてしまいました。