嬉(うれ)しさは 51年ぶりの 通学路 車窓眺めて 懐かしきとき
高校の通学は汽車でした。
昭和39年3月までの3年間、国府駅から豊岡駅まで一駅の通学でした。
ケンちゃんはどのバスを見ても、
「ぜんたんばす~、ぜんたんばす~」と言います。
とても全但バスに興味があるようです。
今日は晴れ間が広がり、ポカポカ陽気です。
『ケンちゃんよ、バスに乗って豊岡駅まで行こうか、
ケンちゃんバス初めて乗ろか、帰りは電車に乗って帰ろうかね』と誘います。
池上のバス停から豊岡駅までは、20分あまりの時間です。
初体験のケンちゃんは、外の流れる景色に興味津々、
窓のガラスに顔をつけて、円山川河川敷の工事を見て「くれ~んしゃ、くれ~んしゃ。だんぷか~、だんぷか~」、「はし~、はし~。しょうぼうしゃ」と、
市民会館の壁を見て「とり~、とり~。こうのとり~、こうのとり~」と叫びます。
帰りは、
豊岡駅から、国府駅まで一駅の乗車です。
じいちゃんの切符を持って、
ケンちゃんは改札口を通ります。
「かわいいね~、はい、こんにちは」と、
駅員さんは、ニコニコしながら切符を切ります。
プラットホームで普通電車を待ちます。
先に入ってきたのは、城崎から大阪行きの特急こうのとり号です。
『ケンちゃんよ、こうのとり号だよ。
またこれに乗って大阪に行こうね』と話します。
こうのとり号が出発します。
最後尾の車両の窓から、車掌さんのお姉さんが顔を出し、
ケンちゃんに向かって「かわいいわね~、バイバイ~」と言いながら笑顔で敬礼いたします。
普通電車は、
妙楽寺、九日市、上佐野、納屋と51年前と同じ山の景色を、車窓に流して進みます。
卒業以来、
ずっと車ばかりなので、国府・豊岡間の電車には乗ったことがありません。
51年前の蒸気機関車は、
ただ単線のレールに、八条の集落までは広々田圃ばかりの景色でした。
それが、51年後の景色は様変わりです。
何もなかった田圃に道路がついて、きれいな住宅街や、事業所の建物がぎっしりと埋まります。
八条の集落の背中を見ていた風景も、広大な桑畑もありません。
国府駅までの、たった7分ばかりの景色は、
51年ぶりのタイムスリップしたような、ムチャクチャ懐かしいひと時でした。