ブクログより
新聞の書評を読んであまり期待しないで読んだんだけど、いつの間にかすごいのめりこんでいた。
ページを繰る手が止められない。
旅行からの帰り、タクシーに乗っていて事故に遭い死んでしまった母親は20何、年愛人をやっていた。
その娘主人公の葵は普通の会社員、ずっと会社員であったろうが母親の死によって、母の店を引き継ぎワインバーを開店させる。
その店は母のパトロンから資金が出ていて、そのパトロンの娘と交流が続いていて(葵の父親は別にいるらしい)またその兄とも縁が切れなくて、と最初は登場人物のつながりがむつかしかったが、だんだんなんとなくわかってきて、その葵というのが、母が愛人をしていたというところから想像できる通り(こういう言い方はしてはいけないのかな)小さい頃から普通の家庭というものを知らない、普通の家族というのもなく、そんな風に育ってきたので、自立心が強く、負けん気で(多分)、人を信用できないところがある(多分)自分の母親も含めて。
でも頭が良くて、スタイルも顔もよくて(多分)仕事もできるので、いろんな男が言い寄ってくる。でも彼女はいつも冷めているというか、心を開ききらないというか、客観的に物事を見ていて、打算というのではないが、のめり込んでいかない。いけない。
人間が冷たいとか感情がないとかいうのではなく、読んでいるうちに何となく可哀想になってくる。
でも会社員だけで終わるのではなく、ワインバーに携わるようになったことは、彼女にとってはいいことだったと思う。一つに絞らないで二足の草鞋を履き続けるというのも彼女らしい。
こういう女の人は多分同性にはあまり好かれないタイプだと思うけど、私はいつの間にか応援していた。
仕事も恋もがんばれ!!
2020年の恋人たち / 島本理生