今夜も本をまくらに。

山歩きが好き、落語が好き、おいしい物が好き、中島みゆきが好き、
でもやっぱり活字がなければ生きていけない私。

ひとり酒、ひとり温泉、ひとり山

2023年06月29日 | 「本」のひきだし

ブクログより



ひところ、「おひとりさま」などと言う言葉が出てきて、今でこそ女性でも、あちこちで見かけますし、珍しくはないのですが、まだまだ私の中では場所によってはムリムリ!というところはあります。

この著者は、果敢にもどこでも一人で出かけちゃいます。
温泉宿、居酒屋、ダインニングバー、もちろん山も一人で。
なんならフレンチのフルコースまで一人でなんて。

まあ男性なら行けても女性ならちょっとしり込みしそうです。特にお酒を飲むところは。
でも彼女は、お酒好き、おいしいもの好き、温泉好き、温泉とセットで山にも一人で行っちゃう、と、もう自分の欲望のままに、誰に気兼ねすることなく生きていて、いっそすがすがしいのです。

しかし一人ということは、料金的にも割高になりますし、決断や判断などすべて自分の責任に置いて下さないといけませんし・・・
自分の好きなようにやれるといっても、なんか一時も気が許せないというか、そんな警戒心はいらないの?
おいしいものを食べたときは、おいしいね、とかきれいな景色を見たときには、きれいだねとか、その感動を分かち合える人がいると、二倍楽しいやん?て言っている私は甘えん坊?

最初はいいなぁと思ったけど、私にはやっぱり無理かな。




ひとり酒、ひとり温泉、ひとり山 / 月山もも

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そこに工場があるかぎり

2023年06月26日 | 「本」のひきだし

ブクログより


意外や意外、工場愛にあふれる小川さんなのです。
というか案外ミーハーなのでしょうか。
小さな町工場から、都会の大きな工場まで、その好奇心に突き動かされるまま、西へ東へと工場を訪れる小川さんです。

訪れた工場は、株式会社エストロラボ(大阪)
通称・細穴屋と呼ばれる、金属に細い穴をあける会社。

グリコピア神戸(神戸市)
言わずと知れたグリコのお菓子の工場。

桑野造船株式会社(滋賀県)
競技用のボートを製造している国内唯一の工場。

五十畑工業株式会社(東京都)
ベビーカーなどを製造・特に幼児をたくさん乗せるサンポカーは興味深かったです。

山口硝子製作所(京都市)
ガラス製品の奥深さに感銘。

北星鉛筆株式会社(東京都)
何といってもお馴染みの筆記用具鉛筆。
偶然にも私は今、「大人の鉛筆」にはまっていまして、何種類か持っています。この工場が出てきたときはうれしかった~

以上ですが、ただ工場の説明をするだけでは能がないというか、小川さんは作家ですので、文学的にかつ的確にその説明はいわば一つの短編小説のようでもあります。

ははあ~ん、わかりましたよ。
小川さんの数々の小説の発想は、こういうところから生まれてきているのではないでしょうか。
いつか小説を読んで、あっこれはもしやあのときの・・・という風に発見できればうれしいな。




そこに工場があるかぎり / 小川洋子

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悪の芽

2023年06月20日 | 「本」のひきだし

ブクログより





小学校時代から優等生で、その後もエリートコースを歩み、結婚して2児をもうけ、都市銀行に勤務する安達。
ある日、大勢の人が集まるイベント会場で、大量殺人事件が起こる。

犯人もその後焼身自殺で亡くなってしまうが、その犯人は小学校時代の同級生だった。
当時安達は、あるきっかけでその同級生を疎ましく思うようになり、いじめのきっかけとなる出来事を起こしてしまう。
彼はいじめがきっかけで不登校となり、その後の人生も芳しいものではなかっただろう。
安達は彼の人生のつまづきが小学生時代のいじめが発端であり、さらに今回の事件の動機も突き詰めればいじめが原因なのではないかと悩む。
しかし本人が亡くなってしまい、その動機も原因も究明されないままだが、世間がいつ彼の過去のいじめに行きつくか、自分の名前が浮上するか安達は苦悩のあまり体調を崩してしまう。

しかしやっぱり、彼の動機を知りたい、いじめが事件の発端となったわけでは無かったと究明したい。そんな一心で一人調べることにしたのだ。

まあ、言ってみれば自分の保身のためだけで動くんだけど、わかったことはやっぱりこの世の中は不条理だということ。
人間は動物をやめて、社会を作ってきたのにそこに強者、弱者がいるのはおかしい。
生物の進化には何万年もかかる、人間がすべて優しい人になるためには何万年もかかる・・・・

すべては絶望から始まった。



悪の芽 / 貫井徳郎

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2020年の恋人たち

2023年06月18日 | 「本」のひきだし

ブクログより



新聞の書評を読んであまり期待しないで読んだんだけど、いつの間にかすごいのめりこんでいた。
ページを繰る手が止められない。

旅行からの帰り、タクシーに乗っていて事故に遭い死んでしまった母親は20何、年愛人をやっていた。

その娘主人公の葵は普通の会社員、ずっと会社員であったろうが母親の死によって、母の店を引き継ぎワインバーを開店させる。
その店は母のパトロンから資金が出ていて、そのパトロンの娘と交流が続いていて(葵の父親は別にいるらしい)またその兄とも縁が切れなくて、と最初は登場人物のつながりがむつかしかったが、だんだんなんとなくわかってきて、その葵というのが、母が愛人をしていたというところから想像できる通り(こういう言い方はしてはいけないのかな)小さい頃から普通の家庭というものを知らない、普通の家族というのもなく、そんな風に育ってきたので、自立心が強く、負けん気で(多分)、人を信用できないところがある(多分)自分の母親も含めて。

でも頭が良くて、スタイルも顔もよくて(多分)仕事もできるので、いろんな男が言い寄ってくる。でも彼女はいつも冷めているというか、心を開ききらないというか、客観的に物事を見ていて、打算というのではないが、のめり込んでいかない。いけない。

人間が冷たいとか感情がないとかいうのではなく、読んでいるうちに何となく可哀想になってくる。
でも会社員だけで終わるのではなく、ワインバーに携わるようになったことは、彼女にとってはいいことだったと思う。一つに絞らないで二足の草鞋を履き続けるというのも彼女らしい。

こういう女の人は多分同性にはあまり好かれないタイプだと思うけど、私はいつの間にか応援していた。
仕事も恋もがんばれ!!


2020年の恋人たち / 島本理生

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ぼくもだよ。神楽坂の奇跡の木曜日

2023年06月13日 | 「本」のひきだし

ブクログより



こんな奇跡があったらいいなぁ。
人生捨てたもんじゃないなぁと思わせてくれるような。
盲目の書評家よう子は、出版社の担当者、希子と話しているうちに、エッセーのようなものを書くようになり、やがて短編小説を書くようになる。
一方、神楽坂の路地裏で古書店を営む本間、商売は行き詰まり、私生活もうまくいかず、活路が見いだせないでいた。

担当者希子は本間の書店の常連、やがてよう子と本間の接点に気づき、大イベントを立ち上げる計画を立てる。
どん詰まりの本間に異存があるわけはなく、うらぶれた古書店は、大変貌を遂げ、彼らの青春がよみがえる。

主人公のよう子は盲目だが、そのことについての悲観や、挫折などにはあまり踏み込まず、ただ淡々と幼少期からの様子が描かれているのがいい。

母親との葛藤みたいのがちょっと中途半端な気がしたけど、それもまあこの話においてあまり重要ではないのだろう。

でもまあ、出版社と古書店とのタイアップの成果というか、そもそものアイデア、こんなの現実にありそう。


本が売れない売れないという前に、こういった楽しいイベントや、行ってみたいなと思わせるようなお店作りをしたら人も集められるんじゃないかな。

少し遠くてもこんなお店があったら絶対通いたいです。



ぼくもだよ。神楽坂の木曜日の奇跡 / 平岡陽明

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