新国立劇場のオペラ「トリスタンとイゾルデ」を観に行ってきました。
万が一のことを考えて早めに家を出たのですが、JR中央線三鷹駅で列車内に不審物発見で私の乗った特急あずさ号は相模湖駅で緊急停車。30分以上待ったあげく復旧にかなり時間がかかるとのことで高尾駅から京王線での振り替え輸送のアナウンスが。
仕方なく、京王線に乗り換えてなんとか到着、もう少しで間にあわないところでした。
さて、このトリスタンとイゾルデは大野和士指揮、主要キャストはワーグナー歌いとして一流の歌手陣とあってチケットはソールドアウト。
オーケストラと演出以外は十分期待できる公演です。
私の座席はいつもの通りの天井桟敷、オーケストラピットも真上から見える場所です。
登場した大野和士の後頭部を見ると、薄くなっている!年をとったんですねぇ。
リッカルドムーティーが老眼鏡をかけているのを見たときもショックでしたが、これも結構ショックです。
第一幕の前奏曲、出だしの音がちょっと大きめ、ボリュームの調整が今一つな感じ。
指揮者の描く音にオーケストラがついて行けていないようです。
トリイゾの音の微妙な揺れの表現ももう少しといったところか。
この後、オーケストラもだんだん調子を上げてきましたが、ところどころで荒もめだちます。
大野和士の音作りは感情のうねりに任せていく感覚的なものではなく、ち密に練り上げて積み重ねていく表現のようで、前に出すぎず常に歌に寄り添うスタイルでした。
いつも大野和士の曲作りは独特なものがあるので生でそれを感じることができて満足です。
歌手陣も素晴らしい、トリスタンのステファングールド、イゾルデのイレーネテオリンはもちろんのこと、ブランゲーネのエレナツィトコーワがあまりに可愛いのが印象的。こんな可愛いブランゲーネがあっていのか?
合唱も良かった、この新国立劇場の合唱団は聞くたびによくなっている気がします。
舞台美術も良かったけれど演出には???
ところこどころに船の乗組員やマルケ王の家来として台詞の無い数人のキャストがでてくるのですが、まるでアイーダの舞台から間違ってやってきてしまったような上半身裸のスタイル、その人たちが舞台に張られた海を表現した水溜まりをばしゃばしゃ歩くのがめざわりなだけ。(北の海で上半身裸は寒いだろう)
舞台に水を張る演出といえば、唐十郎の紅テントを思い出しますが、唐十郎のエンディングなら舞台の奥がパカッと開いてヒロインが去っていくというスタイルになるのですが、この演出家ディビットマクヴィカーはどうするのか。
やっぱり、イゾルデが舞台の奥に去っていくパターンでした。(笑)
登場人物の描き方もいまいちで動きに説得力がなく、人間関係も希薄な感じ。
新制作とのことですが、もっと掘り下げてほしかったな。
第一幕、第二幕、第三幕ともに、歌手陣はすばらしいのに、オーケストラが負けてしまっているのが残念。せめて、イングリッシュホルンがもう少し歌ってくれればもっとトリイゾらしくなるのに。
しかし、このキャスト、この指揮者を日本でこの価格で観ることができるのですから、文句は言えませんね。出来ればもう少し上演回数を増やしてほしいですが。
もっとたくさんオペラを上演してオーケストラのレベルを上げる、改善策はこれに尽きるかも知れません。
そして、最後のエンディング、年末に観た方のブログなどではフライング拍手で台無しになったという書き込みが多く見られましたが、この日の観客はちょっと早めの人もいましたが、おおむね大丈夫でした。皆、フライングしないように拍手のタイミングを見計らっている気配がひしひしと感じられました。
カーテンコールのブラボーは主役の二人に対してのものよりも、はるかに大野和士に対するものが多かったですね。主役よりも指揮者に対するブラボーの方が多いというのは珍しい。
ともかく良いものを観させてもらいました。ぜひ早い時期での再演を希望します。
それから、しばらくぶりに新国立劇場に行きましたが、場内ロビーの様子がちょっと変わっていたのにびっくり。グッズショップやスイーツの提供もあったりずいぶん商売っ気が出てきた感じです。これはこれで便利だし休憩時間をすごすバリエーションが増えるので歓迎です。運営方針が変わったんでしょうか。



