5日(木)の一般質問の内、木質バイオマスの利活用について要旨をご報告します。
関 木市の「地域エネルギービジョン」(以下「ビジョン」は本市がめざす将来の姿を、「スモール・スマート・サスティナブルエネルギーネットワークシティと謳った。「恵まれた自然環境を生かし、地域の資源を結集して、環境と調和し、地域に豊かさをもたらす、エネルギーの導入と利用が図られるまち」ということ。基本方針として、「地域の産業振興や雇用の創出等、地域の活性化につながる」こと、「小規模なエネルギー生産のネットワーク化」「自産自消・地産地消の仕組みづくり」などを掲げた。
そうした中で今木質バイオマスを使った発電事業が進められている。まず事業の概要はどのようなものか。
次に、この事業では、森林組合、製材所などを通して、木市の貴重資源である木を発電の燃料として売ることで間伐を進め、木材を効率的に活かすことができる仕組みをつくっていくという。
一方、発電事業の中心は県外資本と聞く。これまで木市森林組合等と連携して、森林整備、木材関連産業の振興に貢献してくれた会社である、という関係者のお話しに期待したいところだが、「ビジョン」にもある通り、地域の産業振興と雇用創出等がどのようになるのかは極めて重要な問題。
そこで、事業の採算性、必要な燃料供給量、それらによって地域にもたらされる利益などの見通しについて聞く。
三つ目、木質バイオマスの効率的な活用という側面から見てどうか。
木質バイオマスは、発電のみでは効率としては2割程度、エネルギーの8割をロスする非効率なものだが、熱利用と組み合わせた場合は、40~90%とされる。本市や、山形県のこの分野でのアドバイザーとして理論的な指導をおこなっている、東北芸工大の三浦秀一先生も指摘されている。
そこで、今般の発電事業のその点での評価、それから熱利用について伺う。
農林水産部長 本事業は、間伐材等を燃料とする出力2500キロワットアワーの発電施設と発電に使用する燃料用チップ生産施設を整備するもので、事業費14億2干4百万円、年間4億8千万円を売電する計画の事業。発電事業については、株式会社鶴岡バイオマスが事業主体、燃料用チップ生産事業については、新潟北部木材加工協同組合。いずれの事業主体にも出羽庄内森林組合、温海町森林組合、北庄内森林組合が参画。
市としても、間伐材の有効利用、森林整備の促進につながるものととらえ、県が行う施設整備への補助、無利子の融資に加え、事業費の10%を補助することとし、積極的に支援する。
次に、事業の採算性、燃料の供給と地域にもたらされる利益について。
電力の売電は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度を利用し、20年間安定した収入を見込むことができ、燃料の買入れ費用とバランスを取った経営が可能。
燃料の供給は、2500キロワット級の本発電事業では、年間5万トンの内、間伐材で3万5千トン、製材端材で1万5千トンを供給する計画。
木材の安定供給を目的とした「鶴岡バイオマス協議会」が設立された。
間伐材は、主に出羽庄内森林組合、温海町森林組合、北庄内森林組合等の庄内地区の林業事業体が供給し、不足分については山形県森林組合連合会が供給。製材端材は、温海町森林組合、新潟北部木材加工協同組合が供給し、不足分については山形県木材産業協同組合と地元製材業者等から供給。
次に、ご紹介あったように、これまで林地残材とされてきた根や先端部を含むC、D材が安定した価格で取引され、林業収入の増加、間伐の推進、間伐材の利用につながるとともに、林業従事者、木材の運搬に関わる事業者の増加が見込まれる。また、製材業においては、近隣に製材端材の出荷先ができる。
3点目、ご指摘のとおり、発電による本質バイオマスの利用は、エネルギーの大半を熱として放出してしまうため、利用効率が2~3割と悪く、エネルギーを効率よく利用するためには熱利用との併用することが最善とされる。
本事業では、熱利用施設整備の計画は現在無いが、ボイラーの冷却時に高温の水蒸気と70C程度のお湯が発生することから、この熱の利用を図るため事業体としても熱エネルギーの抽出及び供給方法の検討を進めている。また、市としても熱による利用のほか、熱交換による冷房利用など、様々な視点から活用方法について近隣の事業所や農業者など関係者と一緒に検討していきたいと。
関 私も今般の事業を林業の振興、木材を活用した事業の振興に資するものとして期待しているが、「ビジョン」で想定していたものとは、違う形の利用で、木材の使用量も莫大な量だということで、今後をやや心配している。
例えば、全国に知られた最上町の地域熱供給事業、一定の地域の中で病院や老人保健施設や、健康福祉センター、特養、給食センターに冷暖房熱を供給する事業だが、今度、町営住宅も建設し、チップボイラーで供給するということで、これもまた全国の大きな話題。
この事業が使っている木質チップの量が昨年度で2700t、含水率50%として計算すると、今回鶴岡で考えられている事業が生木の丸太のまま引き取って頂くということで70~80%として比較すると、年間5万トンという量は9倍から13倍ぐらい。 最上町でやっているような地域熱供給事業を9カ所も13カ所位できるだけの量を発電で一気に使うということ。
先程「これから色々検討し、努力したい」ということなので、是非今般の事業についても頑張ってもらいたい。熱供給は、小規模分散で、需要のあるところでやらないと難しいので、中々大変なことだと思うが。
同時に、また別の形で、地域熱供給というようなことを検討していくということ、これも大いに頑張っていただきたい。改めてその点はどうか。
農林水産部長 先程の熱効率からいうと2割から3割しか使わないということで、農業に使うことができれば一番いいことなので、関係団体と一緒になって努力していきたい。
質問と答弁はあらまし以上のようなものです。
発電会社とチップ製造協同組合の両者に、地元の森林組合等が参画するということでしたが、株の大半は、大手製材会社(トーセン)が保有するということでしたので、鶴岡にとって大事な点は、雇用と、チップ製造組合への木材の売り渡し価格ということになります。
現在想定されている価格(事前に聞きましたが、議会で明らかにすることは差し控えました)は、国内他地域での例から見ると、低いものではないように思われました。
ただ、その決定決定権限がどこにあるのかは、よく分かりませんでした。
地元関係者の中には、「間伐の費用が出ればそれでいい」と話される方もいましたが、ここは一つ「欲張り」にやってもらいたいと思いました。
熱利用については重視されていなかったようで、年間5万トンの木材の約8割が浪費となってしまうことは何とも残念なことですが、「山の整備が進められる」「これだけ大規模の需要は当面他に想定できない」という、関係者の切望を考えると、この事業自体に反対することまではできないと思いました。
引き続き、予定される立地場所での熱利用の可能性について、研究していきたいと思います。
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