東京藝術大学・奏楽堂で開催されているモーニング・コンサートに行ってきました。
東京藝術大学 モーニング・コンサートは、学内各専攻科から選抜された優秀な学生が、ソリストあるいは作曲者として、藝大フィルハーモニア管弦楽団(東京藝術大学に所属するプロのオーケストラ)と共演するコンサートです。2018年・第9回となるこの日は、作曲科4年生の山下真実さん、ピアノ科3年生の尾城杏奈さんが、日々の研鑽を披露されました。
奏楽堂というので、てっきりこちらかと思ったら...
門が閉まっています。どうしたことかともう一度チケットを確認すると、大学構内の奏楽堂でした。^^; こちらの旧奏楽堂は現在保存活用のための工事中で、11月に再開されるということです。
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まずは山下真実さんによる作曲の発表です。タイトルは "Theory of GRAFFITI" 。現代音楽によく用いられる不協和音は苦手ですが、この作品は視覚的イメージが浮かんで、とっつきやすそう...と期待しました。私が習っていたピアノの先生が実は作曲専攻で、月1回作曲のレッスン(楽典・ソルフェージュなど)があったこともあり、作曲に興味がありました。
山下さんは他大学の経済学部を卒業してから東京藝大の作曲科に入学されたというユニークな経歴の方。この作品は1960年代にニューヨークではじまったグラフィティアート、いわゆるスプレーを使った街の落書きアートを音楽で表現しているそうです。
曲の前半では、スプレーやマーカーを使って絵や文字が描かれていく様子が、躍動感のあるリズムと音で表現されていました。何種類もの打楽器の音や、時につんざくような管楽器の音から、夜の街でひと目を忍んで作品を仕上げる、アーティストの敏捷な動きを想像しました。スプレー缶を楽器代わりに、プシューッという音も使われていました。
そして後半では、ニューヨークでゲリラ的にグラフィティアートを展開したアーティスト、バンクシーの活動が音楽で表現されていました。警察や人々をも巻き込んだ大騒動、描いては消されるのイタチごっこが、パワフルな音の洪水によって表現され、ちょっぴり頭がクラクラしつつも、エネルギーに圧倒されました。
(バンクシーのグラフィティアート)
その後は、尾城杏奈さんによるピアノで、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番が演奏されました。この曲は、ラフマニノフが1909年のアメリカ訪問にあわせて完成させ、ラフマニノフのピアノとウォルター・ダムロッシュの指揮、ニューヨーク・フィルによって初演され、大きな成功を収めたそうです。
甘美で華やかな、ラフマニノフらしいドラマティックな作品。すばらしい演奏にうっとりしました。