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ベルファスト

2023年01月03日 | 映画

1969年 北アイルランド・ベルファストを舞台に、イギリスを代表する俳優 ケネス・ブラナーが監督した自伝的作品です。

ベルファスト (Belfast)

公開時に見逃した本作が Amazon Prime に上がっていたので、新年早々に鑑賞しました。昨年のベストに選んでいた方がいらしたのも納得の、監督の家族愛、故郷への愛がノスタルジーたっぷりに描かれた、すてきな作品でした。

監督の子ども時代がモノクロームで描かれているといえば、アルフォンソ・キュアロン監督の「ROMA」を思い出しますが、本作は、カラー映像で始まるので、最初は間違えて再生してしまったのかとあせりました。

静の ROMA に対して、動の BELFAST といった感じで、カトリックとプロテスタントが敵対する北アイルランドを舞台にしながらも、そこで明るく、力強く生きる人たちの姿がポジティブに描かれているのが印象的でした。

そもそもケネス・ブラナーはイングランド出身と勝手に思い込んでいたので、もとは北アイルランド出身ということを本作で初めて知りました。アイルランド独立運動や、独立後のイギリスとの紛争については

ケン・ローチ監督の「麦の穂をゆらす風」等で多少の知識はありましたが、北アイルランドはイギリスといっても文化的にはアイルランドに近く、安全を求めて家族でイングランドに移り住むことは当時どれほど覚悟がいることだったか、両親の胸の内に思いを馳せました。

映画を見ていて、心に残ったシーンをいくつか。

ラスト近くのダンスパーティで、父が「君が必要とする時に、そばにいてあげられなかった」と歌うシーン。生活のためにロンドンに出稼ぎし、家を空けることの多かった父が「これからはいつもいっしょだよ」と歌い、母とダンスするシーンがすてきでした。

少年バディが父に「(カトリック教徒の)キャサリンといつか結婚できる?」と尋ねた時、父が「もちろんできるよ。彼女がカトリックでも、ヒンズー教でも、バプテストでも」と答えるシーン。思いがこみあげてきて、胸がいっぱいになりました。

祖父の算数の教え。「1か7かわからないように書けば、〇がもらえる確率が上がる」のちに祖父が亡くなった時に「おじいちゃんは僕に算数を教えてくれた」といったバディに、父が「おじいちゃんの教えはいつも深かった」と答えたのに、にんまりしました。

それから家族全員で「チキチキバンバン」を見に行ったシーン。映画の中で車が落ちそうになって、家族全員わ~っと首をすくめるところが大好きです。

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