ハリウッドの映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの長年にわたる性暴力の事実を告発した、ニューヨーク・タイムズ紙の2人の記者の奮闘を描いた社会派ドラマです。
SHE SAID シー・セッド その名を暴け (She Said)
題材が題材だけに見るのを躊躇していましたが、SNSでの評価が高かったのと、大好きなキャリー・マリガンの演技を楽しみに見に行ってまいりました。
ワインスタインの被害者となった俳優やスタッフに丹念に取材を続け、事件を告発するために奮闘するミーガン(キャリー・マリガン) とジョディ (ゾーイ・カザン) の真摯な姿に引き込まれました。
映画の序盤で、当時のトランプ大統領のロッカールーム・トーク問題、そして映画「スキャンダル」(Bombshell) の題材となったFOXテレビのスキャンダルに触れられてます。それに続く本事件がとどめとなって #Me Too問題という一大ムーブメントを巻き起こしたのです。
本作は「スキャンダル」と同じく、映画という華やかな世界で起こった性暴力を題材にしていますが、事件を追うニューヨークタイムズの記者の立場から描かれていて、テイストとしては「スポットライト」に近かったです。
本事件は卑劣極まりないものですが、映画の中で性描写はなく、ワインスタインの姿さえ登場しなかったことに作り手の良識を感じました。監督はドイツの女性監督マリア・シュラーダー。そしてブラッド・ピットが製作総指揮を務めています。
大金によって口封じをされ、報復を恐れて家族にさえ話ができなかった被害者たちが、ついに自分の名を公表して証言することを決意した勇気をに心を動かされました。
彼女たちの勇気が記事をリアリティのあるものにし、世界にインパクトを与え、映画界で絶対的な権力を握っていたワインスタインを失脚へと導いたのです。
ミーガンとジョディが、子育て真っ盛りのワーキング・マザーだったというのも、すごいことだと思いました。ミーガンにいたっては、この大仕事の間に出産もしているのですから。2人の夫もあたりまえのように家事や育児に参加していて、妻を支える姿が印象的でした。
本作、バディ・ムービーとしても楽しめました。2人を支える先輩記者(パトリシア・クラークソン) や上司 (アンドレ・ブラウアー) もとてもよかった。見た後で爽快な余韻の残る作品でした。