DVDで鑑賞。グザヴィエ・ドラン監督、製作、脚本、編集による家族の葛藤を描いたドラマです。ギャスパー・ウリエルが主演しているほか、フランスの名優たちが共演しています。
たかが世界の終わり (Juste la Fin du Monde / It's Only the End of World)
名画座の目黒シネマで「マイ・マザー」と「Mommy/マミー」の2本立てを見て以来、グザヴィエ・ドラン監督の密かなファンで、すべての監督作品とほとんどの出演作を見ています。本作は今年の公開時に気になっていたものの、口論するシーンが苦手なので見るのを躊躇していました。
でも実際に見てみたら、これまでの作品で一番好きかもしれないと思いました。フランスの名優たちが競演していて、作品の世界に入り込みやすかったというのもありますし、荒削りのところがなく、より洗練された作品になっていたように思います。
主人公は若き劇作家ルイ(ギャスパー・ウリエル)。彼は自分の死期が近いことを知り、そのことを家族に伝えるために12年ぶりに故郷の実家を訪れます。しかし彼にとって故郷は懐かしく思い焦がれる場所ではなく、家族は決して安らげる存在ではありませんでした。それをドランは、オープニングの曲で表現しています。
Camille - Home Is Where It Hurts (You Tube)
Home is not a harbourという歌詞が胸にぐさりと響きます。家では、うれしさのあまりおしゃれして舞い上がり、ルイの好物を用意して待つ母(ナタリー・バイ)、幼い頃に別れたのでほとんどルイを覚えていなくて緊張気味の妹(レア・セドゥ)、
なぜか不機嫌な兄(ヴァンサン・カッセル)、初対面で不安そうな兄嫁(マリオン・コティヤール)がルイを出迎え、ぎこちなく会話がはじまりますが、やがていつものように言い争いとなり、ルイはととうとう告白するタイミングを逸してしまうのでした。
ルイは寡黙ででデリケートな青年。一方、家族のキャラクターは(唯一血のつながりのない兄嫁は別として)ものすごく濃い。ルイが12年前に家を出た理由については明らかにされませんが、彼は家族、特に粗野でひがみ根性の兄とは全く理解しあえず、きっとここに居場所はなかったのだろうな、と想像します。
死を前にして、ひょっとしたら関係を修復できるかもしれないという淡い期待が、ルイの中にはあったのかもしれないですが、それは脆くも崩れ去ってしまったのでした。モービーのエンディング曲がそんな彼の孤独を歌います。
Moby - Natural Blues (You Tube)
デビュー作の「マイ・マザー」から一貫して、自らの同性愛者というアイデンティティと、母との愛と確執をテーマにしてきたドラン監督。本作は美しい5人の俳優の丁々発止のやりとりが、スリリングな緊張感を生み出していて見応えがありました。まるで舞台劇みたいと思って見ていたので、戯曲が原作と知って納得しました。
(映像を出演者とチェックしているドラン監督)
ドラン監督といえば、2015年に大ヒットしたアデルのミュージックビデオも印象的。モノクロームの映像はまるで短編映画のようです。そしてこれまで年上の女性たちを魅力的に撮ってきたドラン監督らしく、このビデオのアデルは最高に美しい。
ドラン監督の最新作「The Death and Life of John F. Donovan」は彼が初めて手掛ける英語作品で、ジェシカ・チャステインとナタリー・ポートマンの出演が決まっています。(ciatr) 今からとっても楽しみです。
今年もどうぞよろしくお願いします。
本作、フランスの名優たちが競演し、華やかで見応えがありましたね。
次回作では初めての英語作品...とますますメジャーになるでしょうが
初めてマイ・マザーを見た時の衝撃も忘れがたいです。
とはいえこれからの活躍がますます楽しみな監督さんですね。
こちらでご挨拶を...
明けましておめでとうございます。
いつも見にきてくださってありがとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
さてさて本作はドラン作品では珍しく出演陣がとてもゴージャスで驚きました。
ドラマ気に入られたようですね。
「The Death and Life of John F. Donovan」という新作楽しみです。
トム・アット・ザ・ファームも個性的な作品でしたね。
ラストの衝撃が忘れられません。
私は最初に見たマイマザーからガツンとやられちゃいましたが
母と息子との関係性が一貫したテーマになっていることもあって
よけいに心を揺さぶられるのかもしれません。
これからも楽しみな監督さんですね。
来年もすてきな作品にたくさん出会いたいですね。
またここなつさんた楽しくやりとりできること楽しみにしています。
どうぞよろしくお願いします☆
ドラン監督作品では、やはり最初に観た印象からなのか、「トム・アット・ザ・ファーム」が一番好きなのです。けれど他作品も鑑賞回数を重ねるごとに、彼のキャラクター納会持つ特異性とかそういうものがあまり関係なくなり、1人の映画監督として好きな監督になりました。
本作も、家族の関係性と、それをどこか俯瞰で見ているような主人公の立ち位置とが絶妙だったと思います(俯瞰で、と言えば兄嫁もその立場なのですが)。突拍子もない設定であるはずなのに、どこかあるあるで納得できる不思議さも併せ持った作品でした。
また来年も、沢山の良い作品に出会ってセレンディピティさんとやり取りができることを希望しております。良いお年をお迎えください。
ドラン監督はアーティストだな~と思います。
こういうタイプに弱いです。^^
今までの作品はちょっと取っつきにくいところがありましたが
本作は、メジャーどころの俳優さんを揃えているだけあって
よりわかりやすい、洗練された作品になっていたように思いました。
専門家から見ると、それが逆につまらなくなった
と思ってしまうかもしれませんが...
オゾン監督は「危険なプロット」しか見ていませんが
たしかに同じにおいを感じますね。^^
気になっている監督さんなので、来年は少しずつ見ていきたいです☆
誤解を生むかもと…
オゾン監督作品が嫌いなのではなくて、むしろ逆で
一時期ずいぶん観ました。
あのシニカルなところにやられてはまりました(笑)
先日はありがとうございました。
ドラン監督の密かなファンでいらっしゃるんですね♪
私はこの監督は初めてでしたが
噂は聞いてましたので今作は楽しみにしてました。
才能のある監督さんですね!
書かれていらっしゃるように、
会話が実にスリリングでハラハラしながら観また。
上手い役者さんが揃って、いえ揃えたのでしょうが
本当に見ごたえがあって嬉しかったです。
久々にギャスパーくんも拝見できましたし(笑)
監督ご自身の事や戯曲を映画にしたりと
どことなくフランソワ・オゾン監督と共通点が多いかも…
と想像してましたが、作品は違いますね。
オゾン監督ほど棘も毒も無い感じで、とても好きになりそうです。
次回作も楽しみです。