ライアン・ゴズリング主演、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、1982年に公開されたSF映画「ブレードランナー」の続編です。前作の監督リドリー・スコットが製作総指揮を務め、前作で主演したハリソン・フォードが共演しています。
ブレードランナー 2049 (Blade Runner 2049)
2049年、環境破壊の進んだカルフォルニア州。新型レプリカントのK(ライアン・ゴズリング)は、かつて反乱を起こした旧型レプリカントを捜して解任(処分)するブレードランナーの職についていました。ある時、郊外で農場を営む旧型レプリカントのモートンを解任した際、木の下に旧型の女性レプリカントの遺体の入った箱を見つけます。
このレプリカントにあり得ないはずの出産した形跡があることがわかり、真相を探るべく調査を命じられたKは、思いがけない自分とのつながりを見出します...。
前作「ブレードランナー」とヴィルヌーヴ監督の「メッセージ」には、実はそれほど思い入れはなかったのですが、フラットな気持ちで見たのがよかったのか、思いのほか楽しめました。長い上映時間も事前にさんざん聞いていたせいか、まったく気にならなかった。むしろ美しくも悲しい映像が余韻を引いて、しばらくこのままでいたい気持ちにもなりました。
架空の未来を描いた作品ですが、環境問題、人種問題、人権問題など、今に通じるテーマがあって、いろいろと考えさせられました。前作では混沌としたアジアの街並みが強烈なインパクトを与えましたが、今回はターナーを思わせる荒涼とした黄色い風景が心に残りました。大気汚染が進行する未来の地球は、生命体には過酷な環境となっているのでしょうか。
ターナー「チチェスター運河」
不安を掻きたてる重厚な音楽も映像にぴったりでした。「ダンケルク」に似ていると思ったら、これもハンス・ジマーだったのですね。無機質的な音楽の中、Kが持っている通信機のコール音「ピーターと狼」が唯一有機的なメロディで目立ってました。イントロが一瞬鳴るだけなので、続きが頭の中で再生されて困りましたが...^^;
それからKが乗っているスピナーのデザインがかっこよくてしびれました。プジョーだと思ったら、デザインはコンセプト・デザイナーの田島光二さんという方が手掛けていらっしゃると知りました。ホログラムのキャラクターや、街並みのデザインも担当されたそうですが、たしかに変な日本語は見当たらなかったように思います。^^ (ビデオSALON)
ところでこの映画のレプリカントは、”妊娠できないように作られている”、”人間に絶対服従するように作られている”ということは、見た目は人間ですが、突然変異させたクローン、またはクローンではないまったく新しい生物ということでしょうか。
前作が公開されたのは、羊のドリー(1996年)より前ですが、再生医学が進んでいるであろう将来においては、倫理的な問題を度外視すれば、クローンを作る方がはるかに現実味があるような気がします。
最初のうちは個体管理が必要でしょうが、いずれは人間もレプリカントも区別されない世界が来るかもしれません。そのうち汚染された空気や水など、過酷な環境にも耐性がある人間が作られたりして...考えただけで恐ろしいです。><
Kの恋人、ホログラフィAIのジョイ(アナ・デ・アルマス)は魅力的でしたが、あのホログラムの広告看板はかえって逆効果ではないかな?と思いました。だって恋人は自分にとって唯一の存在でいて欲しいですものね。
前作に思い入れが無かったと仰っていたので、どうかなー?と思ってました。良かった良かった♪
きっとセレンさんならこの世界観も気に入ってくださると思ってましたよ☆
巨大広告塔を見ていたKのどこか寂しげな様子は、失った寂しさだけでなく、ある意味自分だけのものと感じていたのに…という気持ちもあったのではと思って、このシーンとっても切なく想いました~~
新しいブレードランナー、楽しめました。
見ている間は映像の美しさやストーリーの切なさに惹かれましたが
あとからいろいろと考えさせられる作品でもありましたね。
>失った寂しさだけでなく、ある意味自分だけのものと感じていたのに…という気持ちもあったのでは
私もそう思いました。
あの状況であの広告を見たら、ショックですよね...
「her/世界でひとつの彼女」のラストを思い出しました。
元々原作から映画は、いささかかけ離れたものなのですが、原作が書かれたのが1960年代であり、映画が1980年代ですから致し方ないのです。原作ではアンドロイドであり、映画でレプリカントとなっています。このあたり、技術の急進歩もあり、またサイバーバンク等SFの世界でも変化が激しかったので、原作の世界観から乖離するのも当然です。
それでも原作を書いたディックの先進性はいささかも輝きを失しないと私は考えております。
前作に思い入れのある方は、また違った受け止め方をされるでしょうね。
私はとっても楽しめました。
映画が1980年代、原作が1960年代
その時代にこうした世界を予見したというのがすごいですね。
その後の技術の進歩や社会の考え方によって、方向性が違ってくるのは当然として
決して絵空事ではなくなってきているのが怖ろしい。
ディックの原作も、いずれ読んでみようと思います。
今回のブレードランナーは、暗かったり、長かったりなので、心配していましたが、楽しまれたみたいで良かったです!
Kが主人公になる事で、前作よりもせつない物語になってましたよね。
この映画の撮影監督のR・ディーキンスはターナーが大好きで、ターナーみたいに空気感を映像化する事にこだわってるらしいですよ。ディーキンスの前作が「007スカイフォール」で、ボンドとQがターナーの絵の前で待ち合わせ?したりしてましたよね。かなりのターナーファンらしいです。
ブレランの世界は世界終末戦争の後なんですよ。生物はほとんど絶滅して、全地球が汚染されている世界。人間もどんどん宇宙へ移住しつつある世界です。
ヌマンタさんもおっしゃてますが、レプリカントはアンドロイド(人造人間)です。人間には耐えられない仕事をさせるために開発したロボットみたいなもので、それでも人間の様な知性と感情をそなえる様になったところに悲劇がうまれるんですよね。
それに妊娠機能を持たせる事に成功したタイレル博士ってどれだけ天才なの!?と思いました。
私はどちらかと言えば人間のクローンをつくる事の方が恐ろしいな~。だってまったく同じ人間だもん。それを何のために生まれさせるのか考えただけで怖くなります。人間の場合は臓器や体の部位だけをつくる事になるんじゃないですかね。
でないと「私を離さないで」になっちゃう~。
「ブレラン」はあれこれ語る事がたくさんあってホント楽しいです。長々とスミマセン~。
見る前はちょっぴり不安でしたが、楽しめてよかったです!
ターナーの表現を取り入れたのは、撮影監督の方なんですね。
そうか!スカイフォールの撮影監督も同じR・ディーキンスさんなんですね。
今、フィルモグラフィを見るとSFやアクションのみならず
ドラマ作品も幅広く手掛けていらっしゃいますね。
レプリカントが何者?というのが今ひとつわかっていなくて...
造形は人間で、中身はロボットってこと?
ターミネーターやエクスマキナみたいなイメージでしょうか。
とすると、自然に進化するということはないのですよね?
タイレル博士はすでに人為的に妊娠機能をもたせることに
成功していた、ということでしょうか。
現実とごっちゃになってましたが
ごみつさんの解説で少しずつわかってきました。^^
私はもちろんクローン推進派ではないですが
今後、再生医学が進んでいくと、どこまでを治療とみなすか
という線引きに頭を悩ますことになりそうですね...
いろいろ考えさせられる作品でもありますね。
「カスタム・チャイルド」
という小説を読んでみてください。このへんの問題を取り上げていました。
それから
「反逆の星」
も。あーーーーーぼくが紹介する作品、どれもこれも古い。積極的に新しい作品をとりこまないといけませんな。もちろん、時代を超越した不朽の名作もあるでしょうけれど。
「カスタム・チャイルド」「反逆の星」チェックしてみました。
どちらも遺伝子操作の話なんですね! おもしろそうです。
それにしても作家のイマジネーションには驚かされますね。
いえいえ、そんなに古くないですよ。
どちらも図書館にあったので、マークしておきました。(^_-)-☆
ご紹介ありがとうございます。
http://kurarc.exblog.jp/21570176/
原作の「アンドロイドは電気羊の夢を見るか❔』は、1968年に出版されており、クローン羊のドリー(1996年7月5日 - 2003年2月14日)でしたね。
参考になりました。ありがとうございました。
TB&コメント、ありがとうございます。
チチェスター運河...は似たものをただ画像から探してきただけですが^^;
リンクしてくださったサイトを拝見すると
1815年のインドネシアのタンボラ山巨大噴火による火山灰の影響と
本作で描かれている大気汚染の未来と通じるものがありますね。
それにしても遠いインドネシアの噴火が
イギリスにまで影響を与えていたとは自然の脅威に驚かされます。