@「三国志」は人間学の宝庫であるとこの書では述べている。 歴史には必ず善玉、悪玉が登場し、歴史は「勝者の歴史」として「勝者が善玉」として遺るのが一般だが三国志の場合は逆となっているは不思議だ。さて「司馬仲達」、曹操軍を支えた名参謀だが、その果たした功績は大きい。それは「先入観を持たず弁証法的に情勢を分析」とあるが膨大な探索、調査から結論を導き出し、失敗なき完全で完璧な「勝利」を導き出したのである。諸葛孔明以上に知略を持って勝利を導いた行動を現代でも学ぶべきだろう。仲達の人生論で「理想より実践」・「力」=「勝利」(まずは勝利者になれ)は重要な経営者理論だろう。 文末の「経営者たるべき姿」選択 A社、か B社かの比較選択肢は面白い。
『司馬仲達 覇者の人間学』松本一男
- 三国志の時代を制した男の論理
- 「三国志」の魅力は人間学の宝庫
- 善玉の代表・・・劉備
- 悪玉の代表・・・曹操
- 中間派の代表・・孫権
- 戦略の天才・・・諸葛孔明
- 忠勇無双の勇将・関羽と張飛
- 乱世の姦雄・曹操を支えた戦略家・司馬懿・司馬仲達
- 「外ズラは良いが内ズラは悪く、ネクラの寝業師」
- 陰性の嫌いのある陰謀家
- 信念は「勝つこと」(勝てば官軍)
- 「敗者に勝利の訓えなし」
- 「曹操」
- 優秀な人材を率先し採用(才能を重視した人材確保)
- 気宇壮大な指導者(剛毅果断)
- 人心の収攬に巧み(人材の活用・適材適所)
- 非情な指導者・自己中心主義者(筋を通し重んじる)
- 計略に長じ、臨機応変の才がある(知力と気力の謀略家)
- 義兄弟呂伯奢一家を皆殺し(敵味方家族への非情な仕打ち)
- 「司馬仲達」高位高官の官職にあった武人の家系
- 年少の時には学問・武芸に長けた秀才
- 私塾の先生・兵法を教え、読書三昧から会計官となる
- 曹操(宦官の家系)からの招聘を、メンツを重んじて一旦断る
- 命に代えられぬことで就任を承諾(曹操長子の教育就任)
- 曹操の信頼を得て重役出世する(名参謀となる)
- 劉備・関羽の樊城襲撃、関羽父子を捕らえ殺す
- 漢中で劉備と張魯の連合で張魯を撃つ
- 呉軍と戦い孫権が降伏
- 食料問題で屯田政策を提案
- 曹爽一派から干されたが軍が都を離れた時点で王政を奪回
- 曹操・曹丕・帝叡に使え、最後は魏王朝を掌握、晋王朝興す
- 「司馬仲達の人物像」
- 非情でクール、先入観を持たず弁証法的に情勢を分析
- まず疑ってかかる(相手のアキレス腱を見抜く)
- どんな時でも細かく計算し、利益に合致する行動をする
- 理想より実践(力)を重視
- 相手の力を根こそぎ削ぐ(将来の敵対潜在力は全て抹殺)
- マンネリリズム的な戦略は行わず粘り強く「待ち」徹底
- 戦略を決定すると迅速果敢に実行とする兵法を重んじた
- 敵味方に権謀術数を使い「勝利」を掴む(天井天下、唯我独尊)
- 「最後の決断と責任は自分自身にあるのだ」
- 教訓「まず勝利者になれ」
- 道学者「人生は闘争の連続であり、勝つことは大事だ。ただ、同じ勝つにしても倫理にかなったいい勝ち方をするのが望ましい。」とは劉備と曹操の戦略の違い(敗者=善玉、勝者=悪玉 )と不思議が残る。
- 「孫権の人物像」
- チャンスをじっと待つ忍耐強い性格、知略をめぐらし勝利を勝ち取る英邁な資質を持った武将
- 「劉備の人物像」
- 広い見識と強い意志、包容力に富み、相手を思い礼遇する。智謀計略面では魏の曹操より劣り果敢に侵略する武将ではなかった
- 「諸葛孔明の人物像」
- 皆に公正無私に信賞必罰、けじめを付ける政治の本質をわきまえた大政治家。臨機応変の才に乏しく引き際が下手だった。
- 「曹操の死」66歳
- 220年洛陽で病死
- 葬儀は簡便で納棺には簡素な服を着せ、一切金銀財宝は禁止、各地の将兵には部署を離れず、喪服も禁止させ甲冑をつけて敵撃に備えさせた。「宝物を処分し、針仕事でも覚えて静かに余生を送るが良い」と侍女妾等に遺言を残した
- 「司馬仲達の死」
- 251年73歳で死亡、晋王朝の布石を築く
- 「孫子の駆け引き」
- できるのにできないふりをする
- 必要なものを不要と見せかける
- 遠ざかると見せかけて近ずく(その逆もあり)
- 有利と見せて誘い出し、混乱させて撃破する
- 敵が充実している時には、ひいて体制を整える
- 強力な敵とは正面衝突を避ける
- 敵を怒らせてその兵力を勝もさせる
- 敵が慎重な時には、下手に出て油断させる
- 敵が落ち着いていれば、挑発して奔命に疲れさせる
- 敵が団結している時には、離間策を講じる
- 敵陣の弱いところを調べて、そこに不意打ちを加える
- 「数字感覚」
- 相手はどんな戦略をとったか
- 部隊の性格、特技、傭兵ぶり、兵力数、馬数、戦車、運搬車数
- 得意とする戦術、補給方法、ルート、基地数、糧食数量
- 「天下人の条件」(英雄の共通項)
- 1、冷徹で、感情に溺れない(感情より理性)
- 2、極端なワンマン(ワンマンコントロール)
- 3、権謀術数に長じている(温情より寝業)
- 4、先見性を持っている(時代の先取りビジョン・野心)
- 5、人生に対して前向き(常にポジティブ・過去にとらわれず前だけを見て努力する)
- 「経営の世界」(仲達の人生論)
- A社:経営者はおとなしく人格高潔、何事見つけても、人を押しのけてまで儲けようとはしない(善人だが経営手腕は無能)
- B社:トップは個性が強く、ワンマンで利潤を最優先し、そのためには他人を犠牲にしても平気である(経営手腕はあるが悪人)
- 結果:B社が勝利し、A社の社長に対しては同情してくれるわけではない。いわんや、救済の手を差し伸べることは考えられない。
- これからの世の中でも求められる人間像は仲達の人生論「力」=「勝利」に違いない。