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貪欲さで身を滅ぼす『花は桜木』

2019-07-12 08:23:46 | 歴史から学ぶ

@人間は野望が欲になり、更に欲が過ぎると『貪欲』となり、周りが見えなくなり、身を滅ぼすまでになる。この短編小説の中にある「助六一代」と「怪談塁ケ淵」はまさに人間の欲が災いを招き、結局最悪の状態になって初めてその「欲」の罪を知る。(後悔先に立たず)また、「花は桜木」と「片栗献上」は、武士の忠臣・義を重んじる短編である。 忠義な家臣、正直な部下などを育て、信頼するまでにはどうすればいいのか。持って生まれた環境も大きく影響しているだろうが人の正直さ・素直さは誰でも見抜けるはずである。見抜けないのは見る人側の先入観が邪魔をしているのか、見る人が正直素直では無いかもしれない。

『花は桜木』柴田錬三郎

  • 「花は桜木」
  •             無念の切腹を遂げた父の仇を討つため、武者修行に旅たつ藤戸大三郎と付き従う家来の新蔵。やがて敵討ちは成就されないまま時は過ぎていく。修行の前、大三郎は新蔵を家族・弟として母のそばで看病を頼んでいた。修行後大三郎は博打等で遊女から30両もの大金を借り請ける。実はその金は新造が貯めたもので敵討ちのための資金として遊女を通して大三郎に渡していた。その後大三郎と敵討ちの相手も病気になり、大三郎は亡くなった。それを知った新蔵のとった行動は大三郎代わりに弟が敵討ちをやり遂げる。その後遊女から残りの20両が母の元に返ってきて母は新蔵の思いを知ることになる。
  • 「助六一代」
  •             貧乏旗本の息子黒澤治太郎は、父の言いつけで札差の養子になって巨万の富を築く。月日が流れ巨富を湯水のごとく蕩尽し始めた。「儲けるのに大層努力したが、散じるのも思い切りよくやってみた。しかし、とどのつまり、残ったものは、なんとはない寂しさだけだ。所詮金子という奴は人間を幸せにできぬものだと知ったのさ」を残して一人寂しく逝った。千両箱は全て空になっていた。それは晩年貧乏な人々に金を巻いて歩いていたという。
  • 「片栗献上」
  •             将軍家への「片栗粉」献上をめぐり家格を下げを命がけで挽回しようと忠臣だが口不調法な尾崎富右衛門を描く。噓を吐けぬ忠臣が助けを求めた信濃守から一度だけ嘘をついて難を逃れよと言われ、主人を守がために忠臣として義を果たす。「忠臣によって加盟を潰されるのなら、それも主人としては本望と申すものでした」と言った。
  • 「怪談塁ケ淵」
  •             ケチで貪欲、非人情で金しか信じない鍼医の安川宗順。娘二人も父親に似て根性が曲がっている。そこに群がる貪欲な悪人どものが金目当てに襲い、金を手にしたものが狙われ、次々と殺害・窃盗人と繋がっていく。最後にお屋敷に奉公していた宗順の娘の養女が殺されるが、その殺した男の実はその養女・男の妹であった。
  • 「孤独な剣客」
  •             父を、母の浮気相手に殺された少年が敵を討つために剣の修行をして天才剣士なった。その名は上田馬之助。13歳の時に父が切られ、父の遺言は「母を切れ」に従い母を殺害する。無情にも家族を亡くしその浮気相手の敵討ちに対する怨念から自我流で誰にも負けない剣捌きの達人となる。10年後に仇相手を見つけた時には既に下半身不随の病弱、幼い子を持つ惨めな男の姿だった。
  • 「辞世」
  •             大石蔵之介ら四七士が吉良家へ押し入って、打ち取った吉良上野介義央は替え玉だった。それは浅野内匠頭36歳と吉良上野介名門の格式(位)違いすぎること、浅野内匠頭は無類の癇癪持ちで一時的精神錯乱状態になる男だったこと。さらに世に残る浅野宗家の書状にも「替え玉」とあったことなど。大石蔵之介の任務は仇討ちまでの筋道を立て、形式尊重主義に則って指導者として全うすることであった。
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