私が死んだあとであなたが読む物語

基本的には「過食症患者の闘病記」、と言っていいでしょう。

「アヒルと鴨のコインロッカー」 伊坂幸太郎

2012年03月24日 23時23分13秒 | 読書感想
この本は以前過食によって読むのを途中で放棄した本です。

私は性格的にそういったのを中途半端なままほったらかしにできない部分があります。

ほったらかしにしていると、なんとなく過食をほったらかしにしているような、そんな気分にもなるのです。

だから、打ち克つためにも読んでおきたかったのです。

それに、途中で放置するには勿体ない本だと感じていました。


前にどこまで読んだのか、正確なところは覚えてませんが、とりあえず最初から読むことにしました。

現在と二年前を交互に描いているわけですが、その二つが交差するポイントまでは、どうやら読んでいなかったようです。

「物語に途中参加」ってのがいいです。

当たり前のことですが、そう感じることって普段の生活の中にはあまり無かったりします。

「悪の教典」 貴志祐介

2012年03月21日 21時36分40秒 | 読書感想
注意、多少ネタバレの節ありです。


共感能力に欠けた男性教師を主人公にしたお話です。

この「共感能力に欠けた」という特異性が肝になるわけです。

他人が傷ついているのを見て自分も心痛めるということがない。

故に人を傷つけることに一切臆さない。

となると、まるで感情のないロボット人間で冷徹な殺人鬼ってことになりそうですが、別にそんな感じもしません。

それは、小説内では「感情を模倣しているから」ってことになってます。

そのため感情のない人間には見えず、むしろ自由に感情を装えるため人に好かれる。

そんな特異な人間が次はどんな行動をとるのか、そこに注目しながら、一方でこの男の暴走を誰がどう止めるのか、そんな期待を込めながら読み進めることになります。

後半、「新世界より」のような冒険ものの色が強くなりますが、著者はきっとこういったのを描くことが好きなんだろうと思います。

また、この著者の愛読者たちはきっとそういった描写を楽しみに彼の作品を読んでいるのだろうと思います。

たしかに、後半の皆殺し、おもしろかったです。

でも、そうなってからは蓮実の特異な性質に対する何らかの答えみたいなものはもう蔑ろになってしまいます。

それならまだ、蓮実の過去を挿みながら物語が進んでいるそれまでの部分の方が、なんとなくこの小説の魅力のような気がします。

「白銀ジャック」 東野圭吾

2011年12月14日 09時52分06秒 | 読書感想
図書館で予約していた本です。

長いこと待たされて、忘れた今頃になって順番が回ってきました。

まだバイトをしていたときに借りまして、バイトの休憩室で読んだりしていたのですが、あまり読めませんでした。

バイトを辞めてFF11で遊び始めて、読書がそっちのけになるのではと思いましたが、そんなこともありませんでした。

夜、外で子供たちが遊ばず、飛行機も空を飛ばない静かな時間帯に読みました。

なんだかそういった時間に読書をしないことが勿体ないように思えてきたのです。

やっぱり読書は幸せです。

時間帯を選ばずいつでも自由に読書に没頭できる空間が欲しいです。

本当なら無職の今は読書三昧になるはずなのに、こんなところに住んでるからそれがでいないと思うと、悔しくてなりません。

「天地明察」 沖方丁

2011年08月31日 23時03分09秒 | 読書感想
沖方丁さんの「天地明察」を読みました。

前の非過食状態のときに図書館で予約していた本です。

それが遅ればせながら今になって順番が回って来て借りられる算段となったのです。


五日ほどかけて読みました。

騒音でまともに本も読めないなか読みました。

新しい暦を作るってお話です。

歴史小説です。

最初は完全な作り話の創作歴史小説かと思ってましたが、読み終えて軽く調べると、どうやら主人公の渋川晴海って人は実在の歴史上の人物みたいです。

よくこの人を採りあげたなって思います。

この人を主人公にしたら面白い小説が書けると思って書いたのか、誰でもいいからあんまり小説化されてない人物で小説を書きたかったのか。


私は今、ある意味において"人"というものに興味があります。

その人の"素"の部分といいましょうか、その人を支える本音の部分といいましょうか。

その人が行動を起こす際の原動力となっている部分、その人の一番人間臭い部分。

人としての営みとして生活している感じ。

人と接しない生活環境だからか、そんなことに興味があったりします。

この小説は登場人物が多いです。

主人公に協力的な立場にある登場人物が多いです。

そういった小説の中の人物にすら、僕の中にある「人への興味フィルター」を通して見ている気がしました。

個人的には酒井忠清なる人物が好きです。

「イン・ザ・プール」 奥田英朗

2011年05月26日 23時15分15秒 | 読書感想
一日で読んでしまいました。

読みやすい文章でスラスラと読めてしまえます。

主人公の伊良部って精神科医、いいですね。

四十過ぎの太ったおっさんでひと癖ある性格というか、キャラクター。

とても精神科医とは思えないそんな人物が、こんな患者に対してどう動くのかって、読んでるうちに興味がわいてきます。

私が過食症患者としてこの病院を訪れたら、どう対処してくれるのでしょうか。

「新世界より」 貴志祐介

2011年05月26日 14時15分00秒 | 読書感想
貴志祐介の「新世界より」という小説を読みました。

分厚い上下巻二冊、そのページ数は1000を超えます。

退屈な話なら酷だなと思ったのですが、おもしろかったです。

序盤はさほど面白味もなかったのですが、移動型図書館を子供たちが発見するあたりから面白くなってきました。

冒険ファンタジーとしては楽しめましたが、「このミス」にランクインするような小説ではないですね。

人間が超能力を手に入れるとどうなるか。

それもその能力で人を殺せるとなると、どうか。

さらに、その能力を持つものと持たないものとに人間が分かれたらどうなるか。

そういったところがこの小説の肝になってると思うのですが、そういったことより、単純に冒険ものとしての話の展開が上手だなと思いました。

「蒲生邸事件」 宮部みゆき

2011年01月19日 16時55分12秒 | 読書感想
平成を生きる主人公が二・二六事件の日へとタイムトラベルする物語。

主人公同様、この辺の時代に関して無知でしたが読めないこともありませんでした。

ミステリーを描いた小説ではなく歴史を新たな角度から描く小説といった感じですね。

当時の人々はこれから先の暗い日本の将来を知らずに生きていて、それを知った上でも臆せずに生きていこうと決意する人もいて・・・簡単にいえばそんな感じの内容です。

「赤い指」 東野圭吾

2011年01月16日 22時20分23秒 | 読書感想
一日、というか半日で、あっちゅう間に読んでしまいました。

滞ることなくスラスラ読ませる文章力のある作家です。

そして内容も面白いときてる。

こりゃ人気作家になるわけです。

倒叙ものということなんかもあって、「容疑者xの献身」となんとなく同じ雰囲気を感じました。

しかし「容疑者xの献身」の方が仕組まれているものがしっかりしていて、やはり一枚上手といった感じです。

ただ、「赤い指」でも爽快的な仕組みは隠されており、なおかつミステリとかとは違う枠組みでの感動もあります。

感動と言っても、別に泣いたわけでもないですが。

ただ、正月、実家に帰ってのお婆ちゃんのこともあり、私自身もう若いわけでもないこともあって、「介護問題?そんなの知らねえ」とも言ってられないかったり、そんな状況もあったのでしょう。

「アフターダーク」 村上春樹

2011年01月15日 18時32分31秒 | 読書感想
村上春樹の小説を読んだのはこれが何作品目だろう。

初めて読んだのが「海辺のカフカ」。

次に読んだのが「風の歌を聴け」。

三作品目。

二日弱で読みました。

難しい内容ではないですし、長編ですが文字数は少ないです。

隠喩。

それにどっぷり乗っかかるタイプの人ですね。

姉が連れて行かれた世界は何を意味するのか。

それがこの小説の要。

二つの世界を隔てる壁とその向こう側とこちら側を描く、みたいな。

まあ、おもしろいっちゃおもしろい小説ですね。

「ゴールデンスランバー」 伊坂幸太郎

2011年01月14日 10時03分27秒 | 読書感想
逃走劇。

大統領暗殺の濡れ衣を着せられた男が主人公。

敵は国家か警察か。

その辺の真相は二の次で、とにかく逃げる主人公を描く。

おもしろかったです。

500ページある長編でしたが二日で読み終えました。

第三部までは事件を少し離れた所から描かれており、第四部からが本番といった感じ。

そこから急に面白くなってきますね。

事件冒頭の森田森吾との車の中でのやり取りなんか引き込まれます。

伏線がたくさん張られていて、著者も頑張って書いたんだろうなと思います。

2008年の「このミス」第1位も納得の作品です。