ここでの生活は苦しい。
ストレスがたまる。
もっと静かな場所で暮らしたい。
薄っぺらい壁の向こうが道路で、人も車もよく通る。
ひっきりなしに何かしらの気配を感じる。
落ち着かない。
通り過ぎる車より、停車する車の方がたちが悪い。
ドライバーの乗り降りに車のドアの開閉音。
開くドアより閉まるドアの方がたちが悪い。
何よりも不愉快なのは、エンジンをかけっぱなしで停車する車。
アイドリングが神経に障る。
今日の昼、そんな車が現れた。
すぐにいなくなることを期待したけれど、結局小一時間そこに居座った。
ストレスで自分が壊れそうになる。
抑えが効かない。
何かを壊したい衝動を必死に堪える。
その作業にストレスが摩擦する。
叫ぶ。
喉に痛みを感じる。
御本尊に向かい題目を挙げてみる。
ケータイを手に取る。
母親に電話した。
救ってほしかった。
手始めに祖母の容体を訊いてみた。
詳しく話してくれる母。
要はまだしばらくは大丈夫らしい。
お金に困ってないかと訊かれた。
まだ少しあるから大丈夫と答えた。
ほかに何か困ってることはないかと訊かれた。
「別に大丈夫」と答えた。
言えない。
とてもじゃないけど言えない。
通用しない身勝手な言い分をこの口が許さない。
電話を切って涙が溢れだした。
悔しかった。
もっと強くなりたいと思った。
自分がもっと強ければいいだけの話だと思った。
負けてたまるか。
負けてたまるか。