私が死んだあとであなたが読む物語

基本的には「過食症患者の闘病記」、と言っていいでしょう。

ダイナマイト

2008年09月02日 22時07分38秒 | Weblog
子供の無知は時として純粋でかわいいものである。

星田くんは小学校に入学し山本くんという名の友達ができた。

2人は小学1年生、まだ何も知らない子供だ。

ある日、星田くんは山本くんを家に招いて遊ぶことにした。

家に招かれた山本君はおしっこがしたくなった。

 「ねえ星田くん、トイレかして」

 「うん、いいよ」

星田くんは山本くんがトイレから戻ってくるのを部屋で待っていた。

しかしそのとき、トイレから山本くんの悲鳴が聞こえてきた。

星田くんは思わずトイレに駆け込んだ。

 「山本くん、どうしたの?」

 「星田くん、見てこれ、ダイナマイトだよ」

なんと山本くんの手には白色のダイナマイトが握られていた。

 「ここにいっぱいあるよ」

見るとそこには、箱の中にたしかにたくさんのダイナマイトが入っていた。

星田くんは知っている。

以前この箱を持ってお母さんがトイレの中に入っていったのを。

星田くんは震えが止まらぬほどに怖くなってきた。

 「ねえ、山本くん、このことは誰にも言わないで」

星田くんは小さいながらも、このことは公にしてはいけないと考え、口封じを試みた。

 「わかった、誰にも言わない。その代わり、このダイナマイト一個ちょうだい」

箱の中にはたくさんのダイナマイトがある。

一つくらい無くなってもお母さんにばれないだろう。

 「わかった、あげるよ。その代わり絶対に内緒にしてね」

その夜、星田くんは家族で夕食を食べるときも、お母さんが怖くてならなかった。

そして食事のあと、妹をトイレに呼び出してこっそり聞いた。

 「なあお前、この箱の中にダイナマイトが入っているの知ってるか」

まだ幼稚園の妹は、兄よりも幼いが女性という性別上、すでにそのことを知っていた。

実は二人がダイナマイトだと思っていたのは、女性の生理用品のタンポンだった。

 「違うよお兄ちゃん、これはダイナマイトじゃないよ。私もよく知らないけど、大人の女の人には必要な道具なんだよ」

星田くんは妹から漠然と、これがダイナマイトではないという説明を受けて安心した。

それから4年の月日が流れ、小学5年生になった星田くんは家族揃ってとなり町に引っ越した。

それにともない、星田くんはとなりの学校に転校することとなった。

ある日、星田くんは前の学校の友達と町で出会った。

 「やあ、元気かい」

久し振りの再会で話も弾む。

 「ああ、そうだ星田くん、山本くんのあの話はもう聞いたかい?」

 「ん?何の話?」

 「山本くんがね、このあいだ授業中に先生に怒られてさ、それがみんなの前で怒られたもんだから、山本くんも悔しくなったんだろうね、なんか知らないけど、先生に向かって火のついたタンポンを投げつけたんだよ」



これは芸人・ほっしゃん。のすべらない話です。
この話は絶対に短編映画にすべきだと思います。
それくらいに完成度が高く、他の追随を許さないお話だと思います。