昨日に引き続き搾り(上槽)の話です。
志太泉の第2の搾りの方法は槽掛け(ふながけ)です。
佐瀬式と呼ばれる槽(ふね)と呼ばれる装置で絞ります。
http://www7.ocn.ne.jp/~syouwakk/html/prod2.htm
これは、乱暴な説明をすると大きなステンレス製の風呂桶のようなものの下部に穴(垂口(たれくち)が開いていて、酒袋と呼ばれる袋にもろみを少量入れ袋の空いているほうを折ってもろみがこぼれないように積み上げて行きます。酒袋のそのものの重みだけで酒袋から酒が流れ出し垂口から酒が自然に搾れていきます。搾れる量は徐々に減少しますので、その後は上方の板を下ろして押し付ける事でさらに搾っていきます。(写真は板が下がっている状態)この方法は、ヤブタが開発されるまで日本酒の搾り方としては最も普通の方法でした。この方法は非常に手間がかかります。まずこの酒袋を折って積み上げる作業はかなりの重労働です。さらに翌日には積み替えといって袋を敷きなおす作業があります。
薮田産業のオフィシャルサイトの会社沿革を参照すると「1963年(昭和38年)大和酒造株式会社専務(当時)薮田昇、「連続もろみ搾り機」の開発に成功。」とあります。昭和38年といえば、まだ日本酒業界が右肩上がりだった時代です。この時代にヤブタ式は大容量もろみへの対応と省力化という一石二鳥の技術革新であり、まさに時代のニーズにあった花形の機械装置としてまたたく間に酒造業界に普及しました。この際、槽を撤去してその場所にヤブタ式を設置する蔵も多く、「夏子の酒」においても、夏子さんが大手酒造会社に行った時、「槽はどこですか」と質問したら「資料館にあります。」と返答されてショックを受けるシーンがあってような記憶があります。
志太泉では、吟醸類はすべてこちらの槽で搾られています。