華道家 余田紫甫(志穂) 

いけばな嵯峨御流・華道家 余田紫甫の海辺の街での楽しいくらしと花を愛する日々

重陽の節句

2009年10月16日 | Flower
重陽の節句は五節句(上巳、人日、端午、七夕、重陽)の一つで九月九日に行われる行事です。
古来中国では奇数は陽の数(偶数は陰の数)として尊ばれ単一数の中の最大陽数 九が重なることから
重陽と言います。

重陽の節句は別名、菊の節句とも呼ばれます。
中国ではこの日、茱萸(しゅゆ=ぐみの実のこと)を袋に入れて丘や山に登ったり、菊の香りを移した菊酒を飲んだりして邪気を
長命を願うという風習がありました。これが日本に伝わり、平安時代には「重陽の節会(ちょうようのせちえ)」として宮中の行事となります。
宮中行事としては天皇以下が紫宸殿に集まり、詩を詠んだり菊花酒を飲んだりしてけがれを祓い長寿を願いました。また、菊の被綿
(きせわた)といって、重陽の節句の前夜にまだつぼみの菊の花に綿をかぶせて菊の香りと夜露をしみこませたもので、宮中の女官
たちが身体を撫でてたりもしたといい、枕草子や紫式部日記の中でもその風習をうかがうことができます。
中国では、菊の花には不老長寿の薬としての信仰があり、鑑賞用としてより先に薬用として栽培されていたようです。
漢方でも薬効を認められている菊の花の種類は少なくありません。

いけばなでは 用に黄菊・体に白菊・留に紅菊(小菊)・葉は青色・水は黒色に見立て五色で活ける。
水は十一分に入れる。
茎を切る時は鋏を用いず、手でもぎます。(水揚げがよい)

菊を折らない様に上手く揉めるのがポイント。(両脇をしっかり締め、両手は開けない。)
(菊を揉める”菊やっこ”というやっとこがあるのを初めて知りました。)


先生の作品




=紫甫感想=

若い頃はお稽古の花に菊が出てくると古臭い、仏さんの花とがっくりした記憶があります。
菊人形を強制的に観せられてもなんの魅力も感じませんでした。
いつからか、菊の高貴な姿を美しいと感じ、葉の一枚一枚に表情を感じる様になったのでしょうか?
菊花酒とは行きませんが、教室一杯に溢れる菊の香を一日中嗅いでいました。
少しは不老長寿に効いたかもしれません。
失われつつある古来からの風習、伝統、いけばなを通して守り伝承していきたいです。