華人経済圏のお先棒を担ぐのか
http://sankei.jp.msn.com/world/china/091111/chn0911110734001-n1.htm
世界のドルをかき集めている中国が、相次ぐ対外援助を称して「マーシャル・プラン」と呼号しているそうだ。東南アジア諸国連合(ASEAN)にカネをばらまき、こんどもアフリカ諸国に対して温家宝首相が3年間で100億ドルの低利融資を実施すると明らかにした。
史上、有名な米国のマーシャル・プランといえば、戦後欧州の惨状を救ったことで名をはせた。不人気だったトルーマン大統領は、第二次大戦の参謀総長として尊敬を集めたマーシャル国務長官に栄誉あるその名を譲った。
選挙のない中国は、有権者の人気を気にすることはないから、「温プラン」でも「胡プラン」でも一向に構わない。マーシャル・プランが欧州で米国の影響力拡大に寄与したように、アジアやアフリカで中国の影響力浸透に使われる。
もっとも、中国の対外援助は必ず見返りを求める狡猾(こうかつ)さがあって、援助が中国のトクにならなければ決して実行することがない。中国の援助は過剰な外貨準備をドルだけで持つ危険回避の意味があるし、輸出製品の市場拡大の必要から途上国に種をまく。
とたんに安価な中国製品が流れ込み、鉄鉱石や銅などの天然資源はごっそり持っていかれる。途上国の奥様たちは「安い」と喜ぶが、亭主族の会社は価格競争に敗れて不満が募る。いびつな華人経済圏の形成である。東南アジアで時折、華僑・華人の排斥デモや中華街で焼き打ちが発生するのも故なしとしない。
その一つであるアジア市場に、鳩山政権は「東アジア共同体」構想を呼び戻そうとしている。日本の経済援助は見返りを求めない「お人よし援助」だから、これら経済圏づくりでも中国の敵ではない。
せっかく歴代政権が、口うるさいオーストラリアやインドを巻き込んで東アジア首脳会議を発足させ、米国や台湾の扱いを協議するところまできたのに、また振り出しに戻すようなことを言っている。
まして、岡田克也外相は「米国ぬき」を明言し、鳩山由紀夫首相は言葉を濁すだけではっきりしない。同盟関係にある米国や豪州の神経を逆なでするばかりだ。
豪州のラッド首相は東アジア共同体ではなく、米国にも開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)をベースとした「アジア太平洋共同体」を示唆した(英フィナンシャル・タイムズ紙)。
それなのに鳩山首相は、定義もあいまいなままに東アジア共同体の旗を振る。2004年にASEANプラス日中韓の自由貿易圏を提案したはずの中国は、どの案にも触れずにダンマリを決め込んでいる。
日本が引っ張って米豪印抜きの「ASEANプラス日中韓」共同体ができれば御の字だし、日本を矢面にほくそ笑んでいればそれでよい。米豪印の怒りを買うのは日本だけだ。
これまで、イラク、アフガニスタン問題で忙殺され、アジア太平洋に手が回らなかった米国は、鳩山政権の奇妙な動きに遭遇してようやくアジアに本腰を入れる気配だ。今週末にシンガポールでのAPEC首脳会議に臨み、「アジアの一員」を強調する。アジアの主導権を争うオーシャン・チェス・ゲームがはじまった。(東京特派員)