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ニッポンのゆる~い日常

「平和ボケ」認識に異議あり

2013-06-29 13:45:57 | 歴史

「平和ボケ」認識に異議あり

元高校校長・一止羊大


http://sankei.jp.msn.com/life/news/130629/edc13062907400001-n1.htm




 国家観喪失や国防意識の希薄さに象徴される戦後日本の「ふぬけ世相」を「平和ボケ」と評する傾向が見られるが、「平和が国民をボケさせた」という認識では、事柄の本質を見失いはしないか。


 わが国には、第二次大戦後の六十余年を凌駕(りょうが)する戦争の無い平和な時代が、歴史上何度かあった。卑近(ひきん)な例を引けば、250年余りも平和が続いた江戸時代がそうだ。


 江戸時代の人々は平和ゆえにボケてしまっていたかと言えば、決してそうではない。その証拠に、ペリー艦隊襲来をはじめとする開国圧力に対して、叡智(えいち)と勇気を結集して明治維新の偉業を成し遂げ、他のアジア諸国に先駆けて近代化への道を切り拓いている。

 それを可能にした背景には、藩校や寺子屋における教育の充実があった。藩校や寺子屋では、教材として用いられた『太平記』『日本外史』などを通して、武士も町人も日本人としての在り方の根本を学んだという。

 『太平記』は南北朝時代を扱った軍記物語であり、『日本外史』は源平以降の武家の興亡を描いた史伝である。どちらも皇統を主柱にしたわが国の成り立ちと深く関わりのある物語であり、幕末の勤皇の志士達が行動規範をそこに求めたのは、至極当然の成り行きだったと言えよう。



天地開闢(てんちかいびゃく)や天孫降臨(てんそんこうりん)、肇国神話(ちょうこくしんわ)に連なる皇統の存在は、『古事記』『日本書紀』が記すように日本の歴史を貫く主柱である。14世紀前半、北畠親房は『神皇正統記(じんのうしょうとうき)』を著したが、冒頭で「大日本者●國也(おおやまとはかみのくになり)」と喝破し、「天★(あまつみおや)はじめて基(もとい)をひらき、日●(ひのかみ)ながく統(とう)を傳給(つたえたま)ふ。我國(わがくに)のみ此事(このこと)あり。異朝(いちょう)には其たぐひなし」と日本の国柄を説き明かしている。


 明治天皇は、日露戦争の開戦時に次のお歌を詠まれた。

 しきしまの大和心のをゝしさは

 ことある時ぞあらはれにける


 国難に遭遇するたびに日本国民は皇統を心の支えとして力を注ぎ歴史を刻んできたが、このことを不気味に思い、強く嫌悪したのがアメリカだったことは否めない。




 現在は日本の大切な同盟国だが、史実を辿(たど)ればアメリカは、日露戦争直後から日本を敵国視し始め、策を弄(ろう)して日本を第二次大戦に引き込み敗退せしめると、日本の歴史・文化・伝統を蔑(ないがし)ろにする占領政策を強行した。日本の国柄を削ぎ落とした憲法を押しつけ、肇国の物語と歴史を踏まえた教育勅語を廃止して、日本色の微塵(みじん)もない教育基本法を制定せしめたのだ。戦後の教育は全てここから始まっている。日本の歴史、文化、伝統は邪悪(じゃあく)なものとして貶(おとし)められ、便乗した自虐教育がそのことに一層拍車を掛けた。その結果、共同体の絆は弱められ、国家観が喪失し、国防の気概も希薄になった。これが戦後日本の「ふぬけ」の正体である。



 平和が国民をボケさせたのではない。戦後の占領政策と自虐教育にこそ、本当の原因があったのだ。

 このことを正視すれば、真の日本を取り戻すための根本課題が必然的に見えてくる。即(すなわち)ち、(1)日本の歴史・文化・伝統を踏まえた自前の憲法を制定すること(2)教育勅語の精神を現代風に甦(よみがえ)らせて教育の基本に盛り込むこと(3)日本肇国の物語と歴史を子供たちに正しく教えること、この3つである。「平和ボケ」などという能天気な認識から、私たちは一日も早く脱却しなければならない。








                

【プロフィル】一止羊大

 いちとめ・よしひろ (ペンネーム)大阪府の公立高校長など歴任。著書に『学校の先生が国を滅ぼす』など。

●=示へんに申

★=示へんに組のつくり




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平成の「富国強兵」路線に専念を

2013-06-03 09:04:36 | 正論より
6月3日付     産経新聞【正論】より



平成の「富国強兵」路線に専念を   東洋学園大学教授・櫻田淳氏


http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130603/stt13060303080000-n1.htm



「歴史認識」に絡む橋下徹大阪市長の一連の発言が投げ掛けた波紋の後、韓国紙、中央日報が「原爆投下は神の懲罰である」と言い放った論評を掲載したことは、日韓両国における「ナショナリズム言説」の応酬の風景を出現させたようである。




 ≪正義語れる官軍になってこそ≫


 古来、「歴史認識」は大概、「戦争で勝った側」のものが世に流布する。「勝てば官軍、敗(ま)ければ賊軍」という言葉は、「敗れた側」にとって、どれほど理不尽にして悔しいものであっても、一つの真理を表している。故に、端的にいえば、「次の戦争」で「戦勝国」になってしまえば、「歴史認識」の案件は決着がつく。

 ここでいう「次の戦争」とは、武力行使を伴う文字通りの「戦争」という意味にとどまらず、経済、産業、技術上の優位の維持、さらには対外広報・文化・芸術・スポーツなどを通じた対外影響力の確保という意味の「競争」を含むものである。こうした「戦争」や「競争」に際して、いかに「勝ち組」に回るか。筆者は、そうしたことにこそ何よりの関心を抱いているし、そのことこそ、真剣な議論に値するものであろう。

 筆者は、突き放した物の言い方をさせてもらえれば、第二次世界大戦という「近代以降、偶々(たまたま)、敗れた一度だけの対外戦争」に係る弁明には大した意義を感じていないし、その弁明に日本の政治家が精力を尽瘁(じんすい)するのは、率直に無益なことであると考えている。


 故に、筆者が安倍晋三首相の再度の執政に期待するのは結局のところは、「次の戦争」で「戦勝国」としての立場を確実に得るために必要な態勢の整備である。

 「アベノミクス」と総称される経済再生施策から、憲法改正を含む安全保障に係る態勢の拡充、さらには安倍首相が就任直後に披露した「アジアの民主主義的な安全保障ダイヤモンド」構想に示された対外政策方針に至るまで、安倍首相が推し進める平成版「富国強兵」路線は、こうした考慮に裏付けられてこそ、意義を持つものであろう。





 ≪橋下発言は「必然性」が薄弱≫


 逆にいえば、こうした平成版「富国強兵」路線の貫徹に具体的に寄与しない政策対応は、「歴史認識」の扱いを含めて、全て棚上げにしても何ら支障はない。国際政治で問題とされるのは、結局は「力」である。安倍首相には、日本の「力」の復活に専念してもらえれば、宰相の仕事としては十分である。


 翻って、橋下市長の一連の発言において批判されるべきは、その発言の中身というよりも、それを語る「必然性」が誠に薄弱だということにある。要するに、「橋下市長は、自らの歴史認識を開陳することで、何をしようとしたのか」が、曖昧なのである。橋下市長は、一連の発言を通じて、第二次世界大戦の「敗戦国」としての日本の立場を弁護しようとしたのであろう。

 目下、特に米国、英国を含む欧州諸国、さらには豪印両国や東南アジア諸国は、日本の「次の戦争」における盟邦であると期待されているし、その故にこそ、安倍首相は、第2次内閣発足以後、これらの国々との「提携」を加速させている。しかし、橋下市長の発言のように、「従軍慰安婦」の解釈を含めて日本が「敗戦国」としての立場の弁明に走ることは、これらの国々との「提携」を進める際の妨げになる。

 というのも、これらの国々の多くは、結局は、「戦勝国」であるからである。「歴史認識」のような「互いに妥協できない」案件を不用意に持ち出し、「敗戦国」と「戦勝国」の立場の違いを結果として際立たせるような言動は、果たして賢明であるのか。橋下市長に問われているのは、その言動の当否ではなく、その言動を披露する際の「賢明さ」なのである。





 ≪中朝韓の対日批判資格を問え≫


 因(ちな)みに、中朝韓3カ国からの対日批判への対応は、そもそも「戦勝国」ですらない韓朝両国、さらには「戦勝国」の地位を継いだだけの中国が何故、あたかも自ら「戦勝国」であるかのように装って、対日批判に走っているかという「資格」を問い質(ただ)し続ければ、それで十分であろう。


 「正義」は、「戦争」や「競争」に勝ってから語るべきものである。しかし、勝ってから語られる「正義」は、大概、白々しいものでしかない。政治における「正義」とは、そうしたものである。当代日本の政界やその周辺には、「正義」、即(すなわ)ち「自らにとっての『正しいこと』」を口にしていれば、必ず受け容(い)れられると信じている「政治活動家」は、政治的スペクトラムの左右を問わず、至るところに盤踞(ばんきょ)している。

 政治家は、国家・社会にとって「必要なこと」よりも自らにとって「正しいこと」を優先させる言動に走れば、瞬時に「政治活動家」に変貌する。橋下市長の一連の発言に因(よ)る騒動の顛末(てんまつ)が示すのは、彼もまた、その「政治活動家」の一例であったという事実であろう。(さくらだ じゅん)














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