日本人の国民性が外交・国防に及ぼす悪影響について
米国カリフォルニア州弁護士 ケント・ギルバート氏
http://ronbun.apa.co.jp/book_ronbun/vol8/vol8.pdf
私が初めて日本の土を踏んだのは1971年12月なので、約44年が経過したことになる。そ
の後の人生の85パーセント、そして人生全体の60パーセント以上を日本で過ごすことにな
るとは、当時は想像もしなかった。
ときどき、「日本の何が一番好きですか?」と質問される。気候や風土、食べ物や住み
やすさ、清潔な環境など、日本の好きなところを挙げ始めたらキリが無いが、あれこれ考
えた結果、どうやら私は、日本人が一番好きだという結論に達した。言い換えれば、日本
人の国民性こそが、日本という国の最大の魅力だと考えている。
私が考える日本人の素晴らしい国民性について、思い付いたキーワードを列挙してみよ
う。意味の重複はご容赦いただきたい。
真面目、誠実、正直、律儀、努力家、親切、優しさ、思いやり、協調性、義理人情、謙
虚、礼儀、我慢、潔さ、内省的、恥を知る、几帳面、丁寧、こだわり、おもてなし、時間
を守る、約束を守る、嘘を吐かない、裏切らない、争いを好まない、他人に迷惑を掛けな
い、空気を読む、清潔好き、などなど。
個人差が大きいことは理解しているし、これらが一つも当てはまらない有名人や知り合
いの顔を、私は何人も思い浮かべることができる。日本国籍保有者かも知れないが、私は
彼らを日本人として認めたくない。知り合いにはなれるが、友人にはなれない。
日本人の国民性は世界に誇るべきものである。実際、日本人の行動は、海外でもたびた
び称賛される。例えば、2014年6月にブラジルで開催されたサッカーFIFAワールドカッ
プでの出来事は、世界中で驚きと共に報道された。
W杯に限らず、応援するチームが大勝負で負けた場合、世界のサッカーファンは怒り、
嘆き、悲しみ、興奮して何をしでかすか分からない。発煙筒を焚いたり、車を横転させたり、
ショーウインドーの破壊や放火など、暴動まがいのことが起きるケースは珍しくない。
それがサッカー界の常識だが、W杯ブラジル大会で、日本代表が大切な初戦に敗れた直後、
予想外の事件が起きた。
スタジアムの日本人サポーターは、敗戦を悔しがりながらも、日本代表の健闘を称えた後、
応援席に残されたゴミをみんなで拾い始めたのである。
相手チーム側のスタンドまで行ってゴミまで拾う日本人サポーターもいた。テレビを見
ていた世界中の人々は、一瞬、何が起きているのか理解できなかったと思う。そして、そ
の意味が分かったとき、衝撃を受けたはずだ。自分たちが持っていた常識では想像すらで
きない、あり得ない光景が展開されていたからだ。
このニュースを米軍放送(AFN)のラジオで知った私は、世界中の人々と同様、とて
も驚いた。すぐ日本人の友人に電話して、「この話は事実なの? 事実だとしたら凄いよ
ね!」と興奮気味に話した。
友人はすぐに、事実関係をインターネットで調べて「確かに事実でしたよ。でも何が凄
いんですか? 日本人なら普通です」と言い放った。悔しいことに、40年近い日本在住歴
を誇る私も、日本人の「普通」の道徳心にすら、未だに追い付いけない。
東日本大震災の後の日本人の落ち着いた行動も、世界中が驚き、大絶賛した。例えば、
東京都内では全ての電車が止まったが、駅の階段で運転再開を待つ人たちは、他の人が通
れるスペース分を空けて、大人しく座っていた。
公共交通機関が麻痺したために、首都圏では五百万人を超える人々が帰宅困難者となっ
た。徒歩での帰宅を選んだ人も多かったが、怒号が飛び交うこともなく、長蛇の列は粛々
と進んだ。幹線道路沿いの飲食店やコンビニ等の店舗は、休憩所やトイレを無償で提供し
た。誰かの指示や命令を受けたわけではなく、すべてが自発的に行われた。
地震や津波で家族や自宅を失った人たちも、避難所では冷静に振る舞い、お互いに水や
食べ物を分け合い、時には順番を譲り合った。暴動や略奪は起きなかった。また、救助や
捜索、復旧活動を命じられた自衛隊員は、必死でその任務に取り組み、そのひたむきな姿
は住民たちの感謝と尊敬を集めた。これこそが日本人であり、日本だと感じた。
先日、安倍晋三首相が発表した「戦後70年談話」を受けて、米国家安全保障会議(NS
C)が公表した声明の中で、ネッド・プライス報道官は、「戦後70年間の日本は、世界各
国にとってのお手本である」と述べた。全くその通りだと思った。
世界標準やグローバル・スタンダードという言葉を好んで使う人がいる。多くの場合、
日本は世界から遅れていると言いたいようだ。実は私もそのような考えを持っていた時期
があった。しかし日本人は、規律正しさや道徳心、他者への思いやりなどの精神面において、
世界標準を圧倒する高いレベルを昔から保っている。
日本人を上回る精神性を持つ民族を、私は他に知らない。
心優しくて協調性にあふれ、他者を思いやる国民性が、DNAに刻まれているのではな
いかと考えてしまうほど、日本人が持っている国民性は素晴らしい。私が「日本の中で日
本人が一番好きだ」と言う理由はそこにある。いつの頃からか「空気を読む」という言葉
が定着したが、日本人の最大の特長は、相手の気持ちを上手く察して、先回りをした行動
を取れる点にある。
しかしこの世の中には、とても残念で、残酷な現実が存在する。
この日本人の誇るべき、「空気を読む国民性」は、軍事面を含む外交の分野では、
最大の障害になるのだ。
そもそも外交とは、言語や習慣、文化、価値感が全く異なる異民族同士の交渉である。
そこに日本人同士にしか通じない価値観を持ち込むのは危険である。「国際社会」という
と聞こえは良いが、要するに、野蛮で身勝手で自己中心的な連中の集まりである。彼らは
空気を読まないし、自分たちの流儀を貫く。そのため日本人の善良さや謙虚さ、奥ゆかし
さは、見事なまでに仇となる。
例えば、日本人は嘘が大嫌いだが、外交とは、嘘も交えながらギリギリの駆け引きを行
う世界である。また、日本人は卑怯なことが大嫌いだが、スパイ、謀略、賄賂、色仕掛け、
裏切り、脅迫など、卑怯なことが当たり前に行われるのが国際社会である。
また日本人は、他人に受けた恩はいずれ返すべきものだと考えている。ところが、一度
「恩」を受けると、もっと欲しいとねだる人間が世界の多数派である。要するに、恩は仇
で返され、正直者は馬鹿を見るのが、外交のグローバル・スタンダードなのである。
日本人が「正々堂々と議論したい」と願ったとしても、すでに敵対勢力の裏工作が行わ
れているかも知れない。しかも、敵対勢力とは、私が「日本人」とは呼びたくない日本国
籍保有者や、日系人という場合もあるからタチが悪い。
いわゆる「従軍慰安婦問題」が国連人権委員会で取り上げられ、間違いだらけの「クマ
ラスワミ報告」が提出されたのは、日本弁護士連合会が、日本を貶めるロビー活動を国連
で行った結果である。また、米下院も対日非難決議を可決しているが、これは日系米国人
のマイク・ホンダ議員が、「世界抗日戦争史実維護連合会(抗日連合会)」という中国共
産党直結のプロパガンダ機関の支援を受けて、多数派工作をしつこく行ったからである。
日本人は、人権問題や人種差別問題の専門家は「正義の味方」だと信じているかも知れ
ないが幻想である。彼らの正体が「選民思想」を持つ白人と、「逆差別特権」のおねだり
を目的としたマイノリティで占められていたとしても何も不思議では無い。それが国連を
はじめとする国際社会の現実である。
日本の政治家や外交官が、これらの事実認識が足りないまま、日本人の性善説的常識に
基づいて外交を行えば、最終的には必ず国益を損ねることになる。近年の例で言えば、中
華人民共和国と韓国は、日本の歴史認識について文句を言い、何度も謝罪を要求するが、
南京大虐殺や、朝鮮半島での慰安婦強制連行などの主張は全て捏造なのだから、謝罪する
必要は一切ない。
ところが日本人は、「謝罪して相手の気持ちが収まるのであれば」と考え、安易に頭を
下げる。その手法で上手にその場を収める人物を、日本人は「人格者」や「大人」として
評価する。しかしそれは、お互いの気持ちを察し合う文化を持った、日本人だけに通じる
常識である。
儒教思想の中国人や韓国人にとって、謝罪とは「罪」を認める行為であり、謝罪した人
間は「罪人」である。日本人が、その場を丸く収めるつもりで安易に謝罪すれば、無実で
あるにも関わらず、罪人としての地位が確定する。謝罪により中国人・韓国人の未熟な国
民感情は燃え上がり、火に油を注ぐことになる。その積み重ねの結果が、現在の日中・日
韓関係なのである。
ちなみに、日本人は歴史上の真実に絶対性を求めているが、中国人や韓国人は主張が歴
史上の真実かどうかなど、最初から気にしていない。新しい王朝の正当性を訴えるためで
あれば、前の王朝を否定する主張は、全てが嘘であっても構わない。それが中国人の思考
回路である。朝鮮半島は属国だから、大陸の新王朝の嘘に付き従うしかない。
だから中国人と韓国人は、自分たちの都合に合わせて、その場しのぎの嘘を吐くことに
罪悪感がない。嘘がバレても動じないし、嘘を嘘で塗り固めようと努力する。正直者の日
本人には想像すらできないメンタリティだが、彼らが「歴史認識」の言葉を使うとき、日
本にも自分たちと同じ事をやれと求めているのだ。
歴代の内閣総理大臣がこのような歴史的背景や民族性を知らずに、安易な気持ちで中国
や韓国に謝罪してきたのであれば、調査不足による無責任な行為である。万が一、知った
上で謝罪してきたのであれば、日本の国益を意図的に毀損した利敵行為として糾弾される
べきである。いずれにしても、戦後の日本が是としてきた「謝罪外交」「土下座外交」は、
二度と繰り返してはならない、最大級の過ちである。
さて、日本人の国民性が原因で招いた国益毀損の最悪の事例は、大東亜戦争の惨禍だと
思われる。ここからはその件を論じたい。
はじめに、真珠湾攻撃という日本海軍の「卑怯な奇襲攻撃」で、日本と米国の戦争が幕
を開けたと信じている国民が日米両国とも多いが、この通説には複数の間違いがある。順
番に説明しよう。
第一に、真珠湾攻撃は昭和20年12月7日朝(ハワイ時間)に行われたが、米国は同年7月
に日本の在米資産凍結令を出し、8月には石油の対日全面禁輸を行った。一方でルーズベル
ト大統領は、「援蒋ルート」を通じた中華民国への支援を継続している。加えて、「フラ
イング・タイガーズ」と呼ばれた秘密航空部隊を承認し、退役軍人による「義勇軍」に偽
装して、日米開戦以前にアジア地域へと送り込んでいる。
つまり米国は、紛争中立国が守るべき国際法を破った上に、日米開戦の準備を着々と進
めていた。最終的に行われた「石油の全面禁輸措置」という敵対行為は、米国から日本へ
の「武力を伴わない先制攻撃」である。真珠湾攻撃はそれに対する反撃だった。
第二に、日本は律儀にも、米国に対して宣戦布告を行ったが、外務省のミスでその文書
の到着が遅れただけであり、国家として卑怯だったわけではない。「リメンバー・パール
ハーバー」のスローガンは、米国がこのミスに乗じて行った国内向けプロパガンダである。
米国人向けのプロパガンダを日本側が信じて疑わないというのは、滑稽である。
第三に、米国は開戦前から日本側の暗号を全て解読しており、真珠湾攻撃の日時や連合
艦隊の構成を事前に把握していた。
つまり日本は開戦前から情報戦で完敗していたのだが、その教訓は現代の日本に生かされていないようだ。米国は外務省の暗号だけを解読していたという説が従来の通説だったが、近年の研究で、日本海軍の暗号も開戦前から全て解読済みだったことが分かっている。
ところが、真珠湾の米海軍部隊には情報を伝えず(空母だけ訓練名目で避難させた)、
自国の兵士を見殺しにすることで、日本軍の先制攻撃を大成功に導いた。これは「陰謀説」
ではなく、証拠から判断する限り歴史的事実である。つまり日米開戦において卑怯だった
のは、ルーズベルト大統領が率いる米国であって、日本ではない。
日本人は自省的なので、相手に責められると自分の悪い所を自ら積極的に探しはじめ、
少しでもそれが見つかると過剰反応する癖がある。戦後の日本人は、その自省的な国民性
を見事に利用されて、戦争の贖罪意識を植え付けるWGIP(ウォー・ギルト・インフォ
メーション・プログラム)の洗脳状態に陥った。「真珠湾攻撃が卑怯だったから、報復と
して原爆を落とされても仕方が無かった」と信じる人もいるようだが、完全に間違った解
釈である。
ルーズベルト大統領は、日本との和平交渉を行うつもりなど最初から無かった。第二次
世界大戦に参戦するために、日本に先制攻撃させることだけを考えていた。了承できるは
ずのない内容を含む「ハル・ノート」を突きつければ、誇り高き日本人は、和平交渉のテ
ーブルから離れて、先制攻撃をするはずだと作戦を立てた。そして全ては、彼のシナリオ
通りに運んだ。
本来、相手国に最後通牒を示すには、事前の議会承認が必要だが、「ハル・ノート」は
議会承認を経ずにルーズベルトが勝手に提示を決めた。一般の米国民だけでなく、上院と
下院の国会議員までもが、「ハル・ノート」の存在を戦後まで知らなかった。
参戦反対派の代表的人物だった共和党のハミルトン・フィッシュ下院議員は、日米和平
交渉を行っている最中にも関わらず、日本側がいきなり真珠湾攻撃を仕掛けてきたと信じ
ていた。だからこそ彼は議会で、それまでの参戦反対の態度を一転させ、米国の参戦を支
持する、歴史に残る名演説を行ったのだ。
ところが終戦後に、日米開戦当時の交渉経緯が分かってくると、ルーズベルトこそが日
米間の戦争を意図的に引き起こした張本人だったとフィッシュは理解した。ルーズベルト
は終戦の前に死亡していたが、フィッシュは自分が行った議会演説を恥じ、「ルーズベル
トを許せない」と言い続けた。
さらに言えば、「ハル・ノート」の原案を書いたハリー・ホワイト財務次官補は、ソ連
のコミンテルンと通じたスパイだった。戦後、その事実が判明すると、彼は身柄を拘束さ
れる前に自殺した。
マッカーシー上院議員が中心となって1950年から始まった共産主義者排除運動の「赤狩
り(Red Scare)」は、彼の強引な手法が反感を買い、最終的にはマッカーシー議員が上院
のけん責処分を受けて失脚することで終焉している。
冷戦集結後の1995年、「ベノナ」と呼ばれるソ連暗号解読プロジェクトが機密扱いを解
除され、戦時中を含むソ連の暗号通信の内容が明らかになった。その結果、ソ連のスパイ
行為は、マッカーシーが見積もったよりも、さらに大きな規模で行われていたことが判明
した。
米国だけでなく、日本政府や軍隊の中枢にも、ソ連のスパイはたくさん紛れ込んでいた。
近衛文麿内閣の周辺には、たくさんの共産主義者がいたし、近衛首相自身が共産主義者だ
ったとの説もある。結局、日米両国とも、スターリンの大規模な謀略に見事に操られて、
お互いに不必要な戦争を戦った可能性が高い。
日本側で行われたソ連の謀略としては、1928年の「張作霖爆殺事件」が、実は関東軍の
犯行に見せかけたソ連特務機関による犯行だったという新説が非常に興味深い。残念なが
ら私はロシア語の一次資料を読めないので、さらなる研究の発展に期待したい。
日本人はその素直さや正直さゆえに、陰謀や謀略、情報戦に弱い。お陰で大半の日本人
は、未だに自虐史観を持ったままだ。戦後、米国やソ連などで公開された機密文書は、先
の大戦で隠された真実の宝庫である。日本でも詳細に研究して自由に議論すべきだ。
真の近現代史観が周知されれば、日本人は自虐史観から卒業できる。そうなれば日本は
国家として、外交や国防など様々な分野で一つ上のステージに上がれるはずだ。日本を第
二の祖国と考える米国人として、その日が一日でも早く来ることを心待ちにしている。
米国カリフォルニア州弁護士 ケント・ギルバート氏
http://ronbun.apa.co.jp/book_ronbun/vol8/vol8.pdf
私が初めて日本の土を踏んだのは1971年12月なので、約44年が経過したことになる。そ
の後の人生の85パーセント、そして人生全体の60パーセント以上を日本で過ごすことにな
るとは、当時は想像もしなかった。
ときどき、「日本の何が一番好きですか?」と質問される。気候や風土、食べ物や住み
やすさ、清潔な環境など、日本の好きなところを挙げ始めたらキリが無いが、あれこれ考
えた結果、どうやら私は、日本人が一番好きだという結論に達した。言い換えれば、日本
人の国民性こそが、日本という国の最大の魅力だと考えている。
私が考える日本人の素晴らしい国民性について、思い付いたキーワードを列挙してみよ
う。意味の重複はご容赦いただきたい。
真面目、誠実、正直、律儀、努力家、親切、優しさ、思いやり、協調性、義理人情、謙
虚、礼儀、我慢、潔さ、内省的、恥を知る、几帳面、丁寧、こだわり、おもてなし、時間
を守る、約束を守る、嘘を吐かない、裏切らない、争いを好まない、他人に迷惑を掛けな
い、空気を読む、清潔好き、などなど。
個人差が大きいことは理解しているし、これらが一つも当てはまらない有名人や知り合
いの顔を、私は何人も思い浮かべることができる。日本国籍保有者かも知れないが、私は
彼らを日本人として認めたくない。知り合いにはなれるが、友人にはなれない。
日本人の国民性は世界に誇るべきものである。実際、日本人の行動は、海外でもたびた
び称賛される。例えば、2014年6月にブラジルで開催されたサッカーFIFAワールドカッ
プでの出来事は、世界中で驚きと共に報道された。
W杯に限らず、応援するチームが大勝負で負けた場合、世界のサッカーファンは怒り、
嘆き、悲しみ、興奮して何をしでかすか分からない。発煙筒を焚いたり、車を横転させたり、
ショーウインドーの破壊や放火など、暴動まがいのことが起きるケースは珍しくない。
それがサッカー界の常識だが、W杯ブラジル大会で、日本代表が大切な初戦に敗れた直後、
予想外の事件が起きた。
スタジアムの日本人サポーターは、敗戦を悔しがりながらも、日本代表の健闘を称えた後、
応援席に残されたゴミをみんなで拾い始めたのである。
相手チーム側のスタンドまで行ってゴミまで拾う日本人サポーターもいた。テレビを見
ていた世界中の人々は、一瞬、何が起きているのか理解できなかったと思う。そして、そ
の意味が分かったとき、衝撃を受けたはずだ。自分たちが持っていた常識では想像すらで
きない、あり得ない光景が展開されていたからだ。
このニュースを米軍放送(AFN)のラジオで知った私は、世界中の人々と同様、とて
も驚いた。すぐ日本人の友人に電話して、「この話は事実なの? 事実だとしたら凄いよ
ね!」と興奮気味に話した。
友人はすぐに、事実関係をインターネットで調べて「確かに事実でしたよ。でも何が凄
いんですか? 日本人なら普通です」と言い放った。悔しいことに、40年近い日本在住歴
を誇る私も、日本人の「普通」の道徳心にすら、未だに追い付いけない。
東日本大震災の後の日本人の落ち着いた行動も、世界中が驚き、大絶賛した。例えば、
東京都内では全ての電車が止まったが、駅の階段で運転再開を待つ人たちは、他の人が通
れるスペース分を空けて、大人しく座っていた。
公共交通機関が麻痺したために、首都圏では五百万人を超える人々が帰宅困難者となっ
た。徒歩での帰宅を選んだ人も多かったが、怒号が飛び交うこともなく、長蛇の列は粛々
と進んだ。幹線道路沿いの飲食店やコンビニ等の店舗は、休憩所やトイレを無償で提供し
た。誰かの指示や命令を受けたわけではなく、すべてが自発的に行われた。
地震や津波で家族や自宅を失った人たちも、避難所では冷静に振る舞い、お互いに水や
食べ物を分け合い、時には順番を譲り合った。暴動や略奪は起きなかった。また、救助や
捜索、復旧活動を命じられた自衛隊員は、必死でその任務に取り組み、そのひたむきな姿
は住民たちの感謝と尊敬を集めた。これこそが日本人であり、日本だと感じた。
先日、安倍晋三首相が発表した「戦後70年談話」を受けて、米国家安全保障会議(NS
C)が公表した声明の中で、ネッド・プライス報道官は、「戦後70年間の日本は、世界各
国にとってのお手本である」と述べた。全くその通りだと思った。
世界標準やグローバル・スタンダードという言葉を好んで使う人がいる。多くの場合、
日本は世界から遅れていると言いたいようだ。実は私もそのような考えを持っていた時期
があった。しかし日本人は、規律正しさや道徳心、他者への思いやりなどの精神面において、
世界標準を圧倒する高いレベルを昔から保っている。
日本人を上回る精神性を持つ民族を、私は他に知らない。
心優しくて協調性にあふれ、他者を思いやる国民性が、DNAに刻まれているのではな
いかと考えてしまうほど、日本人が持っている国民性は素晴らしい。私が「日本の中で日
本人が一番好きだ」と言う理由はそこにある。いつの頃からか「空気を読む」という言葉
が定着したが、日本人の最大の特長は、相手の気持ちを上手く察して、先回りをした行動
を取れる点にある。
しかしこの世の中には、とても残念で、残酷な現実が存在する。
この日本人の誇るべき、「空気を読む国民性」は、軍事面を含む外交の分野では、
最大の障害になるのだ。
そもそも外交とは、言語や習慣、文化、価値感が全く異なる異民族同士の交渉である。
そこに日本人同士にしか通じない価値観を持ち込むのは危険である。「国際社会」という
と聞こえは良いが、要するに、野蛮で身勝手で自己中心的な連中の集まりである。彼らは
空気を読まないし、自分たちの流儀を貫く。そのため日本人の善良さや謙虚さ、奥ゆかし
さは、見事なまでに仇となる。
例えば、日本人は嘘が大嫌いだが、外交とは、嘘も交えながらギリギリの駆け引きを行
う世界である。また、日本人は卑怯なことが大嫌いだが、スパイ、謀略、賄賂、色仕掛け、
裏切り、脅迫など、卑怯なことが当たり前に行われるのが国際社会である。
また日本人は、他人に受けた恩はいずれ返すべきものだと考えている。ところが、一度
「恩」を受けると、もっと欲しいとねだる人間が世界の多数派である。要するに、恩は仇
で返され、正直者は馬鹿を見るのが、外交のグローバル・スタンダードなのである。
日本人が「正々堂々と議論したい」と願ったとしても、すでに敵対勢力の裏工作が行わ
れているかも知れない。しかも、敵対勢力とは、私が「日本人」とは呼びたくない日本国
籍保有者や、日系人という場合もあるからタチが悪い。
いわゆる「従軍慰安婦問題」が国連人権委員会で取り上げられ、間違いだらけの「クマ
ラスワミ報告」が提出されたのは、日本弁護士連合会が、日本を貶めるロビー活動を国連
で行った結果である。また、米下院も対日非難決議を可決しているが、これは日系米国人
のマイク・ホンダ議員が、「世界抗日戦争史実維護連合会(抗日連合会)」という中国共
産党直結のプロパガンダ機関の支援を受けて、多数派工作をしつこく行ったからである。
日本人は、人権問題や人種差別問題の専門家は「正義の味方」だと信じているかも知れ
ないが幻想である。彼らの正体が「選民思想」を持つ白人と、「逆差別特権」のおねだり
を目的としたマイノリティで占められていたとしても何も不思議では無い。それが国連を
はじめとする国際社会の現実である。
日本の政治家や外交官が、これらの事実認識が足りないまま、日本人の性善説的常識に
基づいて外交を行えば、最終的には必ず国益を損ねることになる。近年の例で言えば、中
華人民共和国と韓国は、日本の歴史認識について文句を言い、何度も謝罪を要求するが、
南京大虐殺や、朝鮮半島での慰安婦強制連行などの主張は全て捏造なのだから、謝罪する
必要は一切ない。
ところが日本人は、「謝罪して相手の気持ちが収まるのであれば」と考え、安易に頭を
下げる。その手法で上手にその場を収める人物を、日本人は「人格者」や「大人」として
評価する。しかしそれは、お互いの気持ちを察し合う文化を持った、日本人だけに通じる
常識である。
儒教思想の中国人や韓国人にとって、謝罪とは「罪」を認める行為であり、謝罪した人
間は「罪人」である。日本人が、その場を丸く収めるつもりで安易に謝罪すれば、無実で
あるにも関わらず、罪人としての地位が確定する。謝罪により中国人・韓国人の未熟な国
民感情は燃え上がり、火に油を注ぐことになる。その積み重ねの結果が、現在の日中・日
韓関係なのである。
ちなみに、日本人は歴史上の真実に絶対性を求めているが、中国人や韓国人は主張が歴
史上の真実かどうかなど、最初から気にしていない。新しい王朝の正当性を訴えるためで
あれば、前の王朝を否定する主張は、全てが嘘であっても構わない。それが中国人の思考
回路である。朝鮮半島は属国だから、大陸の新王朝の嘘に付き従うしかない。
だから中国人と韓国人は、自分たちの都合に合わせて、その場しのぎの嘘を吐くことに
罪悪感がない。嘘がバレても動じないし、嘘を嘘で塗り固めようと努力する。正直者の日
本人には想像すらできないメンタリティだが、彼らが「歴史認識」の言葉を使うとき、日
本にも自分たちと同じ事をやれと求めているのだ。
歴代の内閣総理大臣がこのような歴史的背景や民族性を知らずに、安易な気持ちで中国
や韓国に謝罪してきたのであれば、調査不足による無責任な行為である。万が一、知った
上で謝罪してきたのであれば、日本の国益を意図的に毀損した利敵行為として糾弾される
べきである。いずれにしても、戦後の日本が是としてきた「謝罪外交」「土下座外交」は、
二度と繰り返してはならない、最大級の過ちである。
さて、日本人の国民性が原因で招いた国益毀損の最悪の事例は、大東亜戦争の惨禍だと
思われる。ここからはその件を論じたい。
はじめに、真珠湾攻撃という日本海軍の「卑怯な奇襲攻撃」で、日本と米国の戦争が幕
を開けたと信じている国民が日米両国とも多いが、この通説には複数の間違いがある。順
番に説明しよう。
第一に、真珠湾攻撃は昭和20年12月7日朝(ハワイ時間)に行われたが、米国は同年7月
に日本の在米資産凍結令を出し、8月には石油の対日全面禁輸を行った。一方でルーズベル
ト大統領は、「援蒋ルート」を通じた中華民国への支援を継続している。加えて、「フラ
イング・タイガーズ」と呼ばれた秘密航空部隊を承認し、退役軍人による「義勇軍」に偽
装して、日米開戦以前にアジア地域へと送り込んでいる。
つまり米国は、紛争中立国が守るべき国際法を破った上に、日米開戦の準備を着々と進
めていた。最終的に行われた「石油の全面禁輸措置」という敵対行為は、米国から日本へ
の「武力を伴わない先制攻撃」である。真珠湾攻撃はそれに対する反撃だった。
第二に、日本は律儀にも、米国に対して宣戦布告を行ったが、外務省のミスでその文書
の到着が遅れただけであり、国家として卑怯だったわけではない。「リメンバー・パール
ハーバー」のスローガンは、米国がこのミスに乗じて行った国内向けプロパガンダである。
米国人向けのプロパガンダを日本側が信じて疑わないというのは、滑稽である。
第三に、米国は開戦前から日本側の暗号を全て解読しており、真珠湾攻撃の日時や連合
艦隊の構成を事前に把握していた。
つまり日本は開戦前から情報戦で完敗していたのだが、その教訓は現代の日本に生かされていないようだ。米国は外務省の暗号だけを解読していたという説が従来の通説だったが、近年の研究で、日本海軍の暗号も開戦前から全て解読済みだったことが分かっている。
ところが、真珠湾の米海軍部隊には情報を伝えず(空母だけ訓練名目で避難させた)、
自国の兵士を見殺しにすることで、日本軍の先制攻撃を大成功に導いた。これは「陰謀説」
ではなく、証拠から判断する限り歴史的事実である。つまり日米開戦において卑怯だった
のは、ルーズベルト大統領が率いる米国であって、日本ではない。
日本人は自省的なので、相手に責められると自分の悪い所を自ら積極的に探しはじめ、
少しでもそれが見つかると過剰反応する癖がある。戦後の日本人は、その自省的な国民性
を見事に利用されて、戦争の贖罪意識を植え付けるWGIP(ウォー・ギルト・インフォ
メーション・プログラム)の洗脳状態に陥った。「真珠湾攻撃が卑怯だったから、報復と
して原爆を落とされても仕方が無かった」と信じる人もいるようだが、完全に間違った解
釈である。
ルーズベルト大統領は、日本との和平交渉を行うつもりなど最初から無かった。第二次
世界大戦に参戦するために、日本に先制攻撃させることだけを考えていた。了承できるは
ずのない内容を含む「ハル・ノート」を突きつければ、誇り高き日本人は、和平交渉のテ
ーブルから離れて、先制攻撃をするはずだと作戦を立てた。そして全ては、彼のシナリオ
通りに運んだ。
本来、相手国に最後通牒を示すには、事前の議会承認が必要だが、「ハル・ノート」は
議会承認を経ずにルーズベルトが勝手に提示を決めた。一般の米国民だけでなく、上院と
下院の国会議員までもが、「ハル・ノート」の存在を戦後まで知らなかった。
参戦反対派の代表的人物だった共和党のハミルトン・フィッシュ下院議員は、日米和平
交渉を行っている最中にも関わらず、日本側がいきなり真珠湾攻撃を仕掛けてきたと信じ
ていた。だからこそ彼は議会で、それまでの参戦反対の態度を一転させ、米国の参戦を支
持する、歴史に残る名演説を行ったのだ。
ところが終戦後に、日米開戦当時の交渉経緯が分かってくると、ルーズベルトこそが日
米間の戦争を意図的に引き起こした張本人だったとフィッシュは理解した。ルーズベルト
は終戦の前に死亡していたが、フィッシュは自分が行った議会演説を恥じ、「ルーズベル
トを許せない」と言い続けた。
さらに言えば、「ハル・ノート」の原案を書いたハリー・ホワイト財務次官補は、ソ連
のコミンテルンと通じたスパイだった。戦後、その事実が判明すると、彼は身柄を拘束さ
れる前に自殺した。
マッカーシー上院議員が中心となって1950年から始まった共産主義者排除運動の「赤狩
り(Red Scare)」は、彼の強引な手法が反感を買い、最終的にはマッカーシー議員が上院
のけん責処分を受けて失脚することで終焉している。
冷戦集結後の1995年、「ベノナ」と呼ばれるソ連暗号解読プロジェクトが機密扱いを解
除され、戦時中を含むソ連の暗号通信の内容が明らかになった。その結果、ソ連のスパイ
行為は、マッカーシーが見積もったよりも、さらに大きな規模で行われていたことが判明
した。
米国だけでなく、日本政府や軍隊の中枢にも、ソ連のスパイはたくさん紛れ込んでいた。
近衛文麿内閣の周辺には、たくさんの共産主義者がいたし、近衛首相自身が共産主義者だ
ったとの説もある。結局、日米両国とも、スターリンの大規模な謀略に見事に操られて、
お互いに不必要な戦争を戦った可能性が高い。
日本側で行われたソ連の謀略としては、1928年の「張作霖爆殺事件」が、実は関東軍の
犯行に見せかけたソ連特務機関による犯行だったという新説が非常に興味深い。残念なが
ら私はロシア語の一次資料を読めないので、さらなる研究の発展に期待したい。
日本人はその素直さや正直さゆえに、陰謀や謀略、情報戦に弱い。お陰で大半の日本人
は、未だに自虐史観を持ったままだ。戦後、米国やソ連などで公開された機密文書は、先
の大戦で隠された真実の宝庫である。日本でも詳細に研究して自由に議論すべきだ。
真の近現代史観が周知されれば、日本人は自虐史観から卒業できる。そうなれば日本は
国家として、外交や国防など様々な分野で一つ上のステージに上がれるはずだ。日本を第
二の祖国と考える米国人として、その日が一日でも早く来ることを心待ちにしている。